ぶっき Library... AMEBIC (金原ひとみ)

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AMEBIC (金原ひとみ)

笑わせてもらいました!
この主人公=語り手は、作者本人に近いと思われる、若くして物書きとして成功した女の子ですが、摂食障害で、情緒が安定していなくて、まあウザいキャラなわけですが、作者は、シリアスなだけじゃなくて、ときにはこのキャラを突き放してコミカルに笑わせてくれます。自虐系の笑いなんですが、湿った笑いじゃありません。

もっとも、この作品はコメディではなくて、情緒不安定のキリモミ感を直情的なパワーで表現しようとした、れっきとした純文学作品。本筋の方は、相変わらずのハイテンションとか、自分の表現を追及する姿勢とか、この人らしい力強さはあるものの、荒削りだし、不完全燃焼というか効果不十分という感じ。目くるめくような感覚は味わえませんでした。

主人公の歪んだキャラ(自己中で高慢)を含めて、癖が強いし、粗はたくさんあります。嫌う理由、けなす理由はふんだんにあります。たぶん、それにひっかかって笑えない読者は少なからずいるのでしょうね、というか、そっちが多数派かも。まあ、笑えるとしても、それは後半に入ってからで、短い長編とはいえ、多少の我慢が必要。
せめてもの救いは、前2作にあった猟奇やエログロが影を潜めていること。チ〇コ、マ〇コじゃくて、“陰部”と穏やかに表現しているし(笑)。

個人的には、作家としての覚醒が一段進んだことを喜ばしく感じました。
いやね、作家としての金原ひとみには、人間的な深み、みたいなものは無いと思います。まあでも、それは全然問題じゃないわけです。二十歳過ぎの作家にそんなものは求めていないし、実体験に裏付けられない、頭でっかちな深みなんか面白くないし。
深みがないから端的に語れなくて、なりふりかまわずヒステリックに自分の言葉を撒き散らす。なりふりかまっていないから、攻撃的であったり、愚かさや嫌な部分がむき出しだったり。でも、汚物にまみれながらも輝く部分があって、たとえば『AMEBIC』の可笑しさは、作者の奥底から湧き出してきたような、チャーミングで味のある笑い。

本人が制御できていない部分にこそ魅力が感じられて、そういう意味では、芥川賞受賞作家でありながら、未だ原石の状態にあるのかも。

なお、タイトルの“AMEBIC”は、アメーバーのことです。
amebic.jpg
  1. 2006-04-30 23:14:15
  2.  金原ひとみ
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