ぶっき Library... 屍鬼 (小野不由美)

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屍鬼 (小野不由美)

これは大作です。かなり長いです。描かれているのは、特定の場所で限られた期間に起こった出来事。なぜこんなに長いかというと、たとえば「村人たちの間で、伝染病の疑いがささやかれ始めた」の一文で済ますことができる局面で、実際に村人たちがささやきあっている複数の場面を1つ1つ丁寧に描写する、というようなことを作者がやっているからです。また、物語に深みを加えるべく登場人物の僧侶兼作家の心理描写や執筆中の小説の引用にかなりの紙数が割かれています。
やりすぎというか長すぎると思います。とくに事件が展開し始めるまでの前置き。しかし、これはこの作家の果敢なチャレンジの結果であるし、そのチャレンジはそれなりに実を結んでいます。だから、好意的に評価したいと思います。繰り返し巻き返し使われた古典的な題材をどう料理するか。小野氏は、作者による誘導の気配を可能な限り排除し、人物や出来事の描写を積み重ねることによって、最大限に臨場感を演出しようとしたのでしょう。このアプローチは、手間がかかるしリスクも非常に大きい。その敢闘精神に敬意を感じますし、狙い通りの効果が上がっているのはおみごと。臨場感たっぷりです。

リスクが大きいアプローチであると前述しましたが、やはり多少足をとられているように感じます。たとえば、村への汚染が進む過程で、果断であるはずの医師が、真相に気づいていたにもかかわらず無策に過ぎた点。また、僧侶の言動には全般的に違和感がありましたが(作中小説は退屈でした)、とくにあの結末では(彼自身の抱える)問題を先送りしただけなので、小説の幕引きとしては中途半端。登場人物も作者も感傷に流れているような感じで、この大作にはそぐわない気がしました。さらに、あれだけ綿密な侵略計画を立て、非情さで組織を引き締めていた敵の親玉の終盤の体たらくも説得力を感じませんでした。エンディングを意識してのことでしょうが、不自然に感じました。

長大かつチャレンジングな作品だけに傷はいくつかありますが、冒頭の百数十ページ(単行本)をのぞけば、読者の気を逸らさず最後まで読ませる筆力は素晴らしいと思います。ことに後半四分の一の怒涛の展開は読み応えがあります。
sikki.jpg
  1. 2006-04-30 12:10:50
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