ぶっき Library... 万延元年のフットボール (大江健三郎)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



万延元年のフットボール (大江健三郎)

谷崎賞作品を読んでいた流れで手に取ってみました。あとがきによると代表作の1つであり、初期のスタイルに決別を告げることになる重要な作品だそうです。

江戸時代に南蛮渡来の球技フットボールに取り組んだ人々の笑いと涙の物語、というのは大嘘で、一昔前の現代を舞台とした陰気で晦渋な純文学作品でした。

読み始めて即「うわ、読みにく~」
とりあえず文章が全然フレンドリーじゃない!読者の想像力を刺激するような言葉が選ばれてるんだけど、言葉もイメージも陰鬱だし言い回しが執拗。こねくり回した文章。こだわり抜いて言葉を選んでいるのは伝わってくるし、相当練りこまれているのは分かりますけどね。読んでて疲れますわ。

でも、物語が動き始める第二章以降ははるかにとっつきやすくなります。とりあえず第一章を乗り切れれば何とかなります。主要人物たちの相克や葛藤が表面化する中盤以降は一気呵成に読めました。

読みにくいけど話としては分かりやすい。主人公夫婦の心の再生が、主人公の弟が故郷で巻き起こす騒動を交えて描かれてるんですけど、今流行の投げっぱなしメタファーとかじゃなくて、現実の出来事と喩えの関連付けとかは明解です。普通に丁寧に読んでいけば作者の敷いたレールから脱輪する心配はありませんでした。

ハッピーエンドなんですけど(解決ではなくて、次のステージに進みました的ハッピーエンド)、結局神経症的な陰鬱さが消えることはありませんでした。物語の仕立てとしては心の再生なのだけれど、開放感とかカタルシスは無し。情味を欠いた文体がこれを後押ししています。この神経症的な陰鬱さは作家生来のもの?
maneigannenxfootball.jpg
  1. 2006-04-30 11:58:41
  2.  大江健三郎
  3.  |
  4.  Trackback(0)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/56-1be1d00d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ