ぶっき Library... 海の仙人 (絲山秋子)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

海の仙人 (絲山秋子)

重いテーマ(ざっくり言って“孤独”)を軽やかに描いていて、すんなり読ませるところは魅力です。さっぱりした語り口とファンタジックでユーモラスな薬味が効いているようです。

でも、テーマの重さとスタイルとしての軽さが上手く噛み合っていないように感じました。
“孤独”、それも一時的な感情としてではなくて人として生きるからには不可避な“孤独”、というシリアスなテーマを扱っているのですが、この作品のどこにも痛切な孤独感がありません。せいぜいほのかに寂しさ、切なさが漂う程度なんです。ほんの一瞬でもいいから孤独の痛切さを垣間見せて欲しい、というか、こういうテーマを選んだ以上その一瞬を作れるかどうかが勝負だと思うんですよ。
“絵に描いた孤独”に終わっているようで残念でした。

踏み込みの甘さは登場人物の描き方に顕著だと思います。

たぶん、主人公に惚れている元同僚の女性(片桐)の視点で読めると面白いんだろうと思います。活き活きとして感じられたのは彼女くらい。極論すれば面白いのは彼女が出てくる場面のみ。

それ以外の登場人物は・・・・・・(以下ネタバレ)
主人公に関しては、作者は彼の言動をなぞっているだけで、気持ちが伝わってきませんでした。特に中盤、ファンタジー(神様的な登場人物の名前)を失うことに恐れを感じる場面や、姉との再会を巡る一連の場面はあまりの薄さに退いてしまいました。
説明するだけじゃなくてセリフや行動や態度から読者に感じさせなきゃダメだと思う。

後半、恋人(かりん)が癌に倒れてから亡くなるまでのくだりでは、主人公こそまともになったけど、ここでは前半から登場している彼女を表面的にしか描けていなかったことのツケが回ってきてて、結局は盛り上がり切れません。
四十歳前後の独身キャリアウーマンで、家族と疎遠で、恋人がいなくて、手を触れようとしない自己中な主人公に会うために遠路はるばる通ってくる。そんなかりんの心のうちが、内に秘められた苦しさとか切なさとか寂しさとかがまったく胸に迫ってきません。

ファンタジーという名の神様的な登場人物がいて、こういうアイディアは個人的に好きだし、とっても愉快なキャラなんだけど、演出上は活きてなかった。単なるマスコットでした。それでもいいのかもしれないけど・・・

たぶん、重いテーマを軽やかに描いて、スイスイ読めるんだけど手応えがある、みたいなことをやろうとしているんじゃないでしょうか。うまくいけばカッコイイのだけれど、相反することを両立させようということだから難易度は高くなるはず。かりんの発病~病死あたりは作者の頑張りが伝わってきたけど、全体的には軽さと重さがすれ違っているように感じました。
uminosennin.jpg
  1. 2006-04-30 06:23:21
  2.  絲山秋子
  3.  |
  4.  Trackback(1)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/43-331cabda
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

絲山秋子【海の仙人】
よくも悪くも、「絵画的」という印象。ラストまで読んでみて頭に浮かんだのは、一枚の絵である。海の色は鈍い青。雷をつれてくる黒い雲。砂浜でチェロを弾く男がひとり。この絵からイマジネーションをふ
  1. ぱんどら日記    
  2. 2006-08-13 10:01:08  

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。