ぶっき Library... 地下鉄に乗って (浅田次郎)

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地下鉄に乗って (浅田次郎)

流儀としては古典的な人情路線なんですけど、愛情とか友情とか優しさといったような人間の心の美しさに寄せる作者の信頼感が半端じゃないので、完全に独自の世界になっています。人間の心に美しい部分があること、それを描き出せば読者を幸せに出来ることに関して迷いや躊躇は微塵も感じられません。「じんわり」とか「何気なく」とかではなく、大手を振って怒涛のようにのしかかってきます。個々の作品の出来不出来以前に、浅田節に共鳴できるかどうかで読者の選択は決まりそう。

ベースになっているのは主人公と家族の確執。地下鉄とその施設がタイムトンネル的な役割を果たして(でもSFとは到底言えません)、主人公は過去に遡り家族をめぐるさまざまな場面に立ち会います。その体験を通して凍りついた家族への感情は次第にほぐれていきます。このあたりのプロセスは予定調和的で先読み可能でしたが、過不足の無い文章と堅実だけど飽きさせない展開で、読者の気を逸らしません。それに活き活きと描かれる過去の東京の街や人々がやけに魅力的。

何気なく進行させているようですが、重要人物である父親の現在を直接には描かないで、他の人物のセリフと主人公が出会った過去の父親の姿のみで人間像を構成していくなど、演出にいろいろな工夫が凝らされています。

後半には小さい「えっ!?」と大きな「えっ!?」が用意されています。大きな「えっ!?」の方は、しょっぱなは唐突な展開に感情がついていけませんでしたが、ドラマティックで心に残る場面でした。

滅茶苦茶情緒的な物語ですが、表現方法は全然ウェットではありません。引き締まった力のある文体だし、場面ごとの処理も簡潔で締まっています。この取り合わせが凄くマッチしていて、安っぽい感傷に流れることがありません。

読後に余韻を残してくれる佳品でした。
metroxnotte.jpg
  1. 2006-04-29 17:28:37
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