ぶっき Library... 八月の路上に捨てる (伊藤 たかみ)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

八月の路上に捨てる (伊藤 たかみ)

第135回芥川賞受賞作。

ずいぶん前に芥川賞全集をまとめ読みしたことがあって、ネットで確認したところ60年代後半から70年代の受賞作だったみたい。ぱっと思い出せるところでは庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』、村上龍『限りなく透明に近いブルー』、古井由吉『杳子』、丸谷才一『年の残り』(作品は嫌い)、青野聰『愚者の夜』(ちなみに、この作品が受賞した第81回には村上春樹『風の歌を聴け』がノミネートされていたけれど、両者の優劣はともかくとして、『愚者の夜』は受賞にふさわしい作品と思います)といったあたり。タイプは異なれど共通するのは、見知らぬ内面を疑似体験したような、圧倒的な印象を受けたこと。
このときのインパクトがわたしの芥川賞の基準点になっていて、わたしごときがとやかく言うような筋合いではないけれど、最近読んだ芥川賞受賞作品は総じて小粒に感じられる。巧拙とは別に圧倒的な感じを受けない。60~70年代にあったある種の暑苦しさが時代とともに風化しているだけなのかもしれないけれど。

そういう意味で、この『八月の路上に捨てる』は良くも悪くも期待を裏切らなかった。
主人公と同僚の日常的な仕事風景が、前景として臨場感を以って描かれる。二人のやり取りに交えて、主人公とその妻との出会い~破綻が回想される。回想の方は、地の文主体にあっさりと描かれる。ただし、最後のデートの場面には臨場感が与えられていて、作者の演出意図なのだろう。

前景である現在と回想のからめ方に工夫があるのかもしれないけれど、とにかく淡々と進んでいく。締めくくりの捨て台詞で一気に作品に陰影を与える作戦のようだけど、こちらにまで響いてこない。もともとの弾力が乏しいから、逆方向に弾いても、はかばかしい反発力が発生しないような感じ。

各場面で人物の心理の陰影は伝わってこない。作家のスタイル(淡々として素っ気ない筆致)がそのように感じさせるだけで、その奥には深い色合いがあるのかも、などと思わないでもないけれど、結局のところさほどの奥行きは無いような気がする。


  1. 2008-01-30 01:29:01
  2.  伊藤たかみ
  3.  |
  4.  Trackback(1)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/351-f3c9e5a6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「半落ち」横山秀夫
半落ち (講談社文庫)(2005/09)横山 秀夫商品詳細を見る 妻を扼殺しました。現職警察官・梶聡一郎警部が、白血病で息子を亡くし、今度は自らの手...
  1. しんちゃんの買い物帳    
  2. 2008-01-30 23:23:14  

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。