ぶっき Library... 魔王 (伊坂幸太郎)

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魔王 (伊坂幸太郎)

伊坂幸太郎はどこに行きたいのか?

このサイトではこれ以前に伊坂作品を7つ採り上げていて、これはかなり多い数。人気者だから、といのもあるけれど、採り上げる作品数は作家への期待度にある程度リンクしている(はず)。
ただし、自分の感想を読み返すと、あまり好意的ではないというか、(わたしから見た)長所と短所がハッキリしている。人懐っこくてスーパースムーズな語り口や演出の面白さは傑出しているけれど、人間とか社会の描き方が幼稚というかズレているというか、説得力が乏しい。文章についても同様で、とても読みやすくて雰囲気のある文体だけど、言葉の選び方が雑で(たぶんノリでやっていそう)、ときどき奇妙な比喩を使う。

この本には『魔王』『呼吸』の中篇2作品が収録されていて、『呼吸』が『魔王』の後日譚という関係になっている。
プチ・サイキック・ウォーズみたいな遊び心は“らしい”けど、いずれも抑えた作風になっていて、つまり過去の作品に見られた華やかなエンターテイメント性は影を潜めて、かつストーリーの起伏も控え目で、渋くテーマが追いかけられている。
テーマはなんだろう?ファシズムが前面に出ているけど、大衆心理の危うさ・怖さみたいなものがメインになっているような。その危うさ・怖さが日常の出来事を通して伝わってくる仕掛け。
前述の長所短所はここでも感じたけれど、コンパクトな長さと渋い持ち味のせいか双方とも控え目になっていて、ひっかかりが少ないかわりに、一気に読まされるようなドライブ感も乏しい。ただし、つまらないということではなくて、最後まで間延びすることなくスムーズに読めたし、『魔王』の終盤には緊迫感があった。

冒頭で、伊坂幸太郎はどこに行きたいのか?という疑問を掲げたのは、従来作品から若干路線変更されていて、(わたしがいうところの)短所を伸ばし(わたしがいうところの)長所を抑える方向を向いているように感じられたから。
政治とか社会が扱われているのだけれど、30代半ばの成人男性(ちなみに1971年生まれ)としては社会認識が低過ぎ。中高生レベル。犬養という政治家はチャチな作り物だし、この政治家が出演するテレビ番組はかなり酷い。また、反米気運の高め方も安易に感じられる。『魔王』の主人公=語り手の思慮も心もとない。
いわゆる政治小説とか社会派小説という造りではないから、これらが即作品の欠陥になっているわけではないけれど、もしこの路線を推し進めていくならば、つまらないことになりそうな気がする。


《文章についてのいちゃもん》

世間では洒脱とされることの多いこの作家の文章ですが、他の作品の感想でも書いたとおり、わたしは洒脱とは感じないし、むしろルーズと感じています。

『魔王』の序盤に、以下のような電車の走行音の比喩があります。

「興奮した男の血圧がぐんぐん上がり、血流が悲鳴を発するような、そんな甲高い音だ。」


甲高い走行音の不快感を上手く表現したかったのでしょうが、比喩として混乱があります。というのは、ほとんどの読者は電車の走行音を知っているはずだけど、血流の音を聞いたことがある人はいないはずで、仮にいたとしても既に死んでいるはず。つまり逆なんです。血圧の急激な上昇を電車の走行音で喩えるのはアリだけど(比喩として上手いかどうかは別として)、逆は無理があります。
重箱の隅をつついているように感じられるかもしれませんが、わたし自身は、自然体で読んでいて、ゴツンとひっかかってしまいました。

この人は凝った表現を好みますが、こういう用法的にルーズな例が多くて、危なっかしいです。些事のようですが、他の作家は概ねちゃんとしているわけで、わたしとしては「そこはプロなんやから、ちゃんとやろうぜ」とダウンタウンの浜ちゃん風に言いたいところです。

過去の作品に比べると、『魔王』はこの種の危なっかしさが少なくなっているので、ここで触れるのには若干の抵抗がありますが・・・
maou.jpg
  1. 2006-04-30 00:48:36
  2.  伊坂幸太郎
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コメント

さんいちさん、はじめまして!
さんいちさんは高校生なのですね。自分の感想が高校生の方の目にどう映るのか見当がつきませんが・・・読んでいる作家がかなり重複していますね。
今後ともよろしくお願いします!
  1. ひねもじら 乃太朗  
  2.  
  3. 2006-09-09 06:03:58 
  4. #mQop/nM. 
  5. [ 編集]
はじめまして

はじめまして、さんいちです。
好きな作家さんの傾向が似ているので最近覗かせてもらっていたのですけど、伊坂さんの文章に対する評価が「そうなんですよね!」という感じでコメントさせてもらいました。

阿部公房先生など、まだ読んでいない人もたくさんいたので、本を買う参考にさせてもらおうと思っています。
  1. さんいち  
  2.  
  3. 2006-09-07 20:56:02 
  4. #- 
  5. [ 編集]

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