個人的には、SF・ファンタジー・時代小説以外は挿絵は無い方がいい。文章から何らかのイマジネーションが喚起されるわけで、挿絵はそれの邪魔になることが多い。
SF・ファンタジー・時代小説も同様だけど、作品の世界観がわたしの実生活から大きくかけ離れている場合は、挿絵がイマジネーションの助けになる。
この作品では、各章に下村富美という漫画家の扉絵がついていて、いかにも女性漫画家らしい絵柄になっていて、要するに人物たちがマネキン人形じみていて、ちょっと邪魔。
が、この挿絵は出版社お仕着せではなくて、三浦しをんが望んだらしくて、つまり作者の中のもともとのイメージとわたしの中で喚起されたイメージにはかなり落差がありそう。
この扉絵をひっくるめて、女性読者の多くはボーイズラブ小説を連想しながらこの作品を読むらしい。キャラクター設定やストーリー展開がボーイズラブ小説の定石通りらしい。
ちなみに、ボーイズラブとは「男同士の同性愛を題材とした女性向けジャンル」のことで、『まほろ駅前多田便利軒』には中年男の一組が登場するけれど、彼らの間に同性愛は無い。だから、ボーイズラブ小説そのものではない。
わたしはボーイズラブ小説を読まないし(ただし愛読するグイン・サーガ・シリーズにはそれっぽい要素がある)、男同士の同性愛には関心がないから、『まほろ駅前多田便利軒』からボーイズラブ小説を連想することは無くて、せいぜい扉絵に興醒めした程度。
前述したように二人の主人公の間に同性愛的な触れ合いはないけれども、友情と片付けるには微妙な感じの馴れ合いがある。この二人の関係には独特の浮世離れした空気感があって、リアリティを求めると嘘っぽいけれど、受け容れることが出来ればなかなか心地良い。
この雰囲気とか空気感が『まほろ駅前多田便利軒』の主たる魅力だと思う。6つのエピソードはそれぞれ要領よくまとめられていて、可笑し味に加えてシリアスなドラマとしての側面も持っているけれど、本を閉じた後まで印象が残るような彫の深さは無い。
ボーイズラブのテイストを狙った小説だからかもしれないけれど、主役の二人にからむヒロインが出てこないのはちと寂しい。
《直木賞についての補足》これは第135回直木賞受賞作品で、振り返るとわたしは直木賞受賞作品をほとんど読んでいないから、受賞の是非を云々することは出来ない。
ただ、『まほろ駅前多田便利軒』が合格ならば、第133回でノミネートされながら落選した2つの既読作品、絲山秋子『逃亡くそたわけ』(中央公論新社)や森絵都『いつかパラソルの下で』(角川書店)も受賞に値したのではないか?第131回(2004年)以降受賞作品はすべて文芸春秋社の本が受賞しているから、賞の性格が変わりつつあるのかもしれない。
まあ、賞というのは、主催者の思惑が入り込むものだし、各回でレベルに差が出るものだし、ノミネート作品中ベストのものが選ばれるとは限らなくて、ただ、受賞作品が常に一定の水準を超えていることが大切だと思う。
Amazon.co.jpオンライン書店ビーケーワン
- 2006-09-09 21:05:34
- 三浦しをん
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Comment(4)
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『逃亡くそたわけ』も『いつかパラソルの下で』もお勧めです。機会があったらぜひお読みください!
- ひねもじら 乃太朗
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- 2007-08-13 15:47:06
- #mQop/nM.
- [ 編集]
こんにちは♪
TBどうもありがとうございました。
賞の選考には、いろいろありそうですね^^;;
私は『逃亡くそたわけ』も『いつかパラソルの下で』も未読なので比較はできませんが、この『まほろ駅前〜』は好きな作品でした。
- miyukichi
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- 2007-07-28 17:16:45
- #ubwH2qN2
- [ 編集]
引越しなどをしていたので、レスが遅くなってしまいました。
ここまで露骨に主催者のエゴを剥き出しにするということは、それだけ小説が売れなくなっているということなのでしょうか・・・
- ひねもじら 乃太朗
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- 2006-09-14 01:54:37
- #mQop/nM.
- [ 編集]
はじめまして。コメントさせていただきます。
女性は、男の熱い友情をボーイズラブにするのが好きみたいですね。
今、流行してるようですし、それで受賞したのかなと思うくらいです。。
ちなみにグイン・サーガシリーズの栗本 薫さんはもとは耽美小説の人なので、彼女の作品にはよく同性愛が扱われています。美人や美少年が非常に多いのです。伊集院大介シリーズなどのミステリにもよく同性愛のキャラクタが登場します。
最近の賞レースは主催者側の色が濃く出来すぎていて辟易してます。
ハナシは悪くないけど、ライトのベルが受賞したという気がしてならないのですよね。。
- 生
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- 2006-09-11 11:06:42
- #hUUDWB.w
- [ 編集]
「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」
「不幸だけど満足ってことはあっても、公開しながら幸福だということはないと思う」
...
- ::ゆうりの煌めき日記::
- 2008-08-19 21:29:54
三浦しをん:著 『まほろ駅前多田便利軒』 まほろ駅前多田便利軒三浦 しをん文藝春秋このアイテムの詳細を見る 2006年上半期の直木賞受賞作です。 この後書かれた受賞第1作 「風が強く吹いている」を このあいだ先に読んでしまい、 これがまた文句ナシにおもしろか
- miyukichin’mu*me*mo*
- 2007-07-21 01:49:48
(添付写真は三浦しをんさん) 以前にもエントリーしましたが、今夏発表された第135回の直木賞は、伊坂幸太郎が受賞して欲しいと思っていました。候補に挙がるのも5回目だし、もうそろそろあげても良い頃でしょう、と。伊坂氏は当方と同世代の若手作家ですが、それゆえ
- 香港旅行と映画鑑賞とラーメン二郎
- 2006-10-22 00:45:50
タイトル:まほろ駅前多田便利軒著者 :三浦しをん出版社 :文藝春秋読書期間:2006/09/12 - 2006/09/14お勧め度:★★★[ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ]東京のはずれに位置する“まほろ市”。この街の駅前でひっそり営まれる便利屋稼業。今日の依頼人は何をもちこんで
- AOCHAN-Blog
- 2006-10-02 22:41:44
まほろ駅前多田便利軒発売元: 文藝春秋価格: ¥ 1,680発売日: 2006/03売上ランキング: 675おすすめ度 posted with Socialtunes at 2006/08/21東京と神奈川の間にあるまほろ市のまほろ駅前で、便利屋稼業をしてる多田。いつもどおり年末の仕事を終えたら、預かっていたチワ
- 本を読む女。改訂版
- 2006-09-13 01:28:47
まほろ駅前多田便利軒三浦 しをん 文藝春秋 2006-03東京のはずれ、まほろ市の駅前にある便利屋「多田便利軒」。なんでも屋として働く多田が、ある日バス停で出会った男は高校時代の同級生・行天。居候としてすっかり居座ってしまった行天と多田のコンビが繰り広げる物語。
- + ChiekoaLibrary +
- 2006-09-11 13:05:29
これはもう妄想読書人ぱんどらのためにあるような小説。脳内DVDぐるんぐるん。なんでも請け負う「便利屋さん」の話。「便利軒」だからといってラーメン屋ではない。探偵とは違うので、ものすごい大事件は起こらない。
- ぱんどら日記
- 2006-09-10 12:49:16
まほろ駅前多田便利軒三浦 しをん文藝春秋 2006-03だいぶ前(とはいえ、直木賞受賞決定後ですが)に読んで、感想も書いたのに、UPするのを忘れていました。古い文章になりましたがそのままあげちゃいます。季節ものは、季節ものである時の感想と、ブームが去った後、1人
- 本を読んだら・・・by ゆうき
- 2006-09-10 09:50:01