銀行強盗団を描いたコミカルなサスペンス。
『オーデュボンの祈り』と『ラッシュライフ』は方向性は違うけれどそれぞれに意欲的な作品で、どこかしらに不満はあってもこの作家の個性の輝きを感じました。前2作品に対し、『陽気なギャングが地球を回す』はわりとありがちな小説で新鮮味はありませんでした。堅実でまとまりがいいかわりに、この作家ならではという特別な印象は受けませんでした。
しかし、設定やストーリー展開を手堅くまとめたぶん、この作家の上手さが伝わってきます。ベテラン作家のような余裕と手堅い上手さを感じました。
キャラクターメーカーとしての非凡な力量を堪能できます。あまりにも自然なので意識に上りにくいですが、複数の主要キャラの個性を描き分けつつ、そのいずれもを活き活きと魅力的に描く手腕は見事で、安心して読むことが出来ました。
登場人物同士の軽口や他愛の無い会話が多用されていて、こういうのはキャラが弱いと読むのがわずらわしくなりがちですが、この作品でその種のストレスは感じませんでした。むしろ、人物や彼らの関係を浮き彫りにするという狙いがバッチリ決まっていて感心しました。
上手さに加えて作者自身がキャラの扱いを楽しんでいるふしがあって、物語全体を楽しく活気あるものにしています。
ストーリー展開は手堅いとしかいいようがありません。先が読める展開だし盛り上がりはほどほど。それでも飽きさせない語り口だし、いじめ、自閉症などを織り込むことで奥行きを出しています(正面から捉えているわけではないけど)。展開のテンポがいいので最後まで気持ちよく読めました。
- 2006-04-30 00:46:06
- 伊坂幸太郎
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陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎著いや~もう、ほんとに面白いんですけど、伊坂幸太郎。ストーリーしかり、キャラ立ちしかり。素直に話を追っていくだけで楽しめるっていう、娯楽的なものって、かなり大事です
- slow match
- 2007-05-29 03:52:00