ぶっき Library... 砂の女 (安部公房)

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砂の女 (安部公房)

「恋愛は素晴らしい」とか「友情はかけがえが無い」みたいなシンプルなテーマなら、物語に落とし込むのは相対的に容易なはず。
これが、「恋愛は素晴らしい」→「しかし度を越えると〇〇になる」→「なぜなら恋愛とは〇〇だから」→「よって、われわれは〇〇な恋愛をすべきではないか?」みたいに、複数ステップを擁するテーマになってくると、それなりに工夫が必要になるはずで、作家の腕の見せ所だし、どんな種類の知性と感性の持ち主なのか、なんてことが作品に表れる。


ミステリーとかファンタジーとかSFのようなジャンル色の強い範疇では、地の文やセリフの中でベタに語られてしまいがち。個人的には芸が無いと感じることもしばしばだけど、それぞれのジャンル固有のミッション(謎解きの楽しみとか、空想の楽しみとか)があって、それが最優先だから仕方が無い。


純文学系の作家たちにとってこの分野は主戦場のひとつで、物語のプロセスにおいて地の文なりセリフでテーマを説明する、みたいなベタなことはしないで、工夫を凝らし技を尽くす(例外はあるだろうけど)。
このブログで採り上げた中では、村上春樹のメタファーとか、保坂和志の思索主導の展開なんかは典型的で、彼らの域にまでくると、技巧への意識がテーマ性を凌駕していると思えるほど。

技巧の複雑さが一定レベルを超えるとパズルっぽくなって、繰り返して読まないと、またはメモをとりながら読まないとテーマにたどり着けない、なんてことになって、ちょっとウザくなる。物語の楽しみとは別種の、知的なパズルを解く楽しみに近づく。たとえば、村上春樹の『海辺のカフカ』『アフターダーク』あたりは、この種のゲーム性に大きく傾斜している。良し悪しは別にして。

個人的には、知的パズルとしての側面を持ちつつも、それは巧妙に物語の流れに織り込まれていて、物語の展開につれて自然にテーマに誘導されていくようなタイプが、一番気持ちよく読める。
一通り読んだところでテーマの大半が汲み取れて、ポイントを確認がてらの再読でほぼ斟酌できる、くらいが、インパクトが直接的で、脳ミソがいい感じに刺激される。

丁度いいころあい、というのは人それぞれなのだろうけれど、わたしがすんなりとはまれるのは、遠藤周作の『沈黙』とか安部公房の『砂の女』あたり。


砂丘に穴を掘って生活する貧村に囚われた男の物語。

非現実的かつ異様な状況が、徹底してリアルに描かれている。臨場感タップリで、難なく主人公の立場に身をおくことが出来る。
序盤から中盤は主人公の言動に身を任せていたけれど、終盤に至って考えさせられた。
安部公房が突きつけてくるのは、われわれ現代の日本人が心の拠り所と看做しているものに対する疑い、問い。それはいささかシニカルな口調で発問されているから、こちらは不安を覚えるけれど、純粋な問いかけであり、答えは読者一人一人に委ねられている、と思う。


わたしにとって『砂の女』は“シュールな状況設定+リアルな描写”型小説の一大基準です。
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  1. 2006-07-26 22:36:49
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安部公房『砂の女』
作品評価:4非現実的な状況の人間を描くことにより現実世界を浮き上がらせようとする、不条理小説を見事に書ききった作品だと思います。物語世界が砂漠という風景の無いところだというところもあってか、無駄な描写が無く、主人公を取り巻く環境とその心情だけにスポットラ
  1. 猿と猫と本と    
  2. 2006-10-08 16:54:20  

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