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白夜行 (東野圭吾)

作者と読者の駆け引きは小説の面白さの基本的な要素。そして、東野圭吾は、この駆け引きの面白さを追求し、巧みに使いこなす名手。
『白夜行』は、そんな名手東野圭吾が、腕によりをかけた逸品。

この作品は、一組の男女の生き様を描いたミステリー小説風大河ドラマで、主役二人の直接的な心理描写が無いし、二人が接触するシーンに限らず決定的な場面が意図的にスルーされているし、出来事の因果関係はしばしば明示されません。作者は、第三者的な視点からの断片的なエピソードを累々と積み重ねることで、一組の男女の生き様や心理や触れ合いを感じ取らせる、という究極的な駆け引きの妙に果敢に挑戦しています。
いつ二人が接触し、どんな真情を吐露し合うのか、という期待がページをめくらせる原動力にもなっていて、技巧的な挑戦がドライブ感につながる、という巧妙な仕掛け。

エピソードが連なる中で、表面的な出来事の奥に別のドラマが次第に浮かび上がってきますし、終盤には二人の主役の存在感が強く感じられますから、このアクロバティックな挑戦は成功と言えそう。これを実現させた構成力と安定した筆致には目を見晴ります。
それでいて、東野作品のセールスポイントである読みやすさは損なわれておらず、分厚いにもかかわらず、一気に読めます。

しかし、ミステリー小説的な駆け引きは諸刃の剣。なぜなら、真相をカモフラージュするために、容疑者である主役二人を克明に描写できなくて、読者の感情移入を妨げてしまいます。
『白夜行』では、多くのエピソードを丹念に積み重ね、時代的背景を織り込み、刑事役を使い回すことで、目覚しくリカバーされていますが、やはり限界はあって、最後まで主役二人との距離感は縮まってきません。この作品を人間ドラマとして読もうとすると、ミステリー的な駆け引きのゲーム性が、感動を薄めていると感じられます。

容疑者を直接的に描かないミステリーとして有名な宮部みゆきの『火車』では、追跡者=調査者が語り手に据えられて、語り手の思い入れを介在させることで容疑者に確固とした存在感が与えられています。
情感を排した三人称語りの『白夜行』の方がある意味果敢で潔いのですが、感情移入の足がかりの乏しさは否めません。
これだけで両作品の優劣を決めることは出来ませんが。

というわけで、作者の強烈な意欲と(作家としての)美学を感じるし、読み応えはあるし、何だったら傑作と呼んでもいいくらいですが、個人的には不完全燃焼。
byakuyako.jpg
  1. 2006-05-24 12:31:49
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東野圭吾【白夜行】
800ページ以上の厚い本だが、読み出したらあっという間にエンディング。正直なところ、「あ、これで終わり?」という呆気なさはある。主人公の「雪穂」と「亮司」の感情や、いわく言いがたい二人の関係を、もう少し濃
  1. ぱんどら日記    
  2. 2006-12-07 11:22:07  
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偽りの昼に太陽はない。さすらう魂の大叙事詩。
  1. ミステリーマニア    
  2. 2006-11-21 20:19:00  

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