第1巻がロードス島全土を巻き込む大掛かりな戦いを描いていたのに対し、この『炎の魔神』はこじんまりと島内の一国の内戦に焦点が絞られています。戦い模様がこじんまりとまとめられているかわりに、主役の二人の成長にウェイトが置かれています。
大風呂敷を広げたために後半駆け足になった第1巻『灰色の魔女』に対し、こちらは隙の無い仕上がり。揚げ足を取りたくなるような粗は見当たりません。
第1巻との比較では、世界観の構築がより緻密になり、臨場感が安定的に保たれています。勧善懲悪の単純な構図になっていないところもなかなか。そして主人公の成長振りが頼もしい。
おそらくシリーズ全体の流れの中では地味なポジションにあると思われますが、個人的にはなかなか楽しめました。
(この段落、微妙にネタバレです)
欲を言えば、盛り上げにもう一工夫欲しいです。エピソードがA→B→C→Dと時系列に整然と展開していくので、伏線の面白さとかドキドキ・ハラハラが控え目になっています。
後半、炎の精霊を使う敵軍に苦戦した主人公たちは、対抗策として風の精霊の元に向かいますが、主人公たちが目的を果たして帰還するまで戦争が一時停止しています。どうせなら、戦争を同時進行させて、あわや敗戦というギリギリのところで主人公たちを登場させる、くらいのことはやって欲しいです。
もしかしたら、この小説のルーツはロール・プレイング・ゲームなので、ゲーム・プレイヤーの分身としての主人公に作者が釘付けになっているのかも。
ところで、このブログは可能な限り(?)キャラクターとかストーリーに触れないスタイルなので、単一シリーズ内で複数冊読んでも、感想は“以下同文”になりがち。この本もどうしようかと迷ったけれど、第1巻とは少し違うことが書けそうなので、記事にしてみました。第3巻以降については、今のところ何とも言えません。
そもそも、今さらこのシリーズの感想を面白がって読んでくれる方がどの程度いるのか分かりませんが・・・

- 2006-05-23 16:02:26
- 水野良
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