ぶっき Library... 魔術師 (ジョン・ファウルズ)

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魔術師 (ジョン・ファウルズ)

世界的にはそこそこ知られていそうな作家&作品だけど、日本では現在絶版中。

《作者》
ファウルズはイギリスの作家で、今年(2005年)というかほんの2ヶ月ほど前に79歳で亡くなりました。代表作とされるのは『コレクター』『フランス軍中尉の女』『魔術師』で、いずれも映画化されています(が、必ずしもエンタメ系の作品ではない)。ファウルズの作品を読むのは『コレクター』に次いで2作目。

《作品の概要》
一言で言うと、知的というか哲学的なエンターテイメント。恋愛あり、サスペンスあり、ミステリーもどき(犯罪は起こらないけど、謎解きの演出はミステリー的)ありのエンタメ路線で、かなりのドライブ感で作品世界に引きずり込まれて、ふと我に返ったらファウルズ独自(?)の哲学にどっぷり浸っている、という趣向。

登場人物たちの駆け引きを通して作者と読者が駆け引きをする、という多重構造になっていて、知的にも感情的にも絶叫マシーン並みに翻弄されます。
エンタメ部分での卓抜な演出力と、知的で真摯な思想が、計算し尽くされたあざとさでもって効果的に融合されていて、知の企みの奥深さ、したたかさに舌を巻きました。
タイトルの『魔術師』は直接的にはとある登場人物のことを指しているようだけど、ファウルズ自ら小説の魔術師たらんと根性入れて書き上げた一作と感じました。

以下ネタバレです。

主人公はイギリス人青年で、恋人をほったらかしにして、ギリシャの孤島の学校に教師として就職します。その島にはさる富豪の別荘があって、主人公は富豪が仕掛けてきた謎めいたゲーム(ヴァーチャルではなくリアルなゲーム)に引き込まれます。何気なく始まったゲームは、駆け引きとどんでん返しを繰り返しながら迷宮化し(何が真実で何が虚構なのか?このゲームの目的は?)、そこに恋人や謎の美女が・・・。なにしろ臨場感溢れる演出と女性の描写が素晴らしい。
テンションが最高潮に達したところで、営々と積み上げられてきた虚構が音をたてて崩れ去り、作品がその本性を現します。

《テーマ》
この作品のテーマは“自由”で、それも政治的あるいは社会的自由ではなくて(それにもつながるのだろうけど)、人として自由であるとはどういうことなのか?みたいなことで、哲学的なニュアンスが濃厚です。ファウルズは率直に自分の考えを表明しているけど、ただしかなりダイジェストになっているみたいで、この作品だけでその全貌を理解するのは困難。わたしの場合、訳者の解説を助けとしつつ、銃殺刑シーン、裁判シーン、ラストシーンをつき合わせることで、イメージを得ました。
ファウルズの主張を理解しなくても(理屈の面で作者に付き合わなくても)ある程度は楽しめそうだけど、それだと奇奇怪怪な恋愛小説として読み終えてしまう危険があるし、どこかスッキリしないと思います。
ただし、主張が率直であるがゆえに、違和感が生じる可能性はあるかも...

《読みやすさ、とか》
40年ほど前の海外文学作品ですが、翻訳を含めて読みにくさは感じませんでした。
執筆当時(60年代)のイギリス社会に対する風刺がかなりあって、想像力で補いつつ読む必要がありますが、さしたる障害にはならないと思います。
訳文を通じても感じられるもったいぶった表現とか、シェイクスピアやギリシャ神話が一般教養といわんばかりに(日本人の庶民から見たら)無造作に引用されているとか、このあたりはいかにもイギリスの小説っぽいかも。好い悪いは別にして。

《余談》
余談ですが、これを読みながら村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を何度か想起しました。トータルで似ていると言うつもりはないし、村上春樹の文体とか雰囲気を重視する読者の好みには合わないかもしれないけど、直接的には戦争ネタの効果的な使い方、間接的にはエンタメ的要素を駆使しながら抽象的なテーマを表現する手法。村上春樹の知的な部分が好きな人にはお薦めできるかも。
majutusi.jpg
  1. 2006-05-03 11:13:12
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