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カラマーゾフの兄弟 (ドストエフスキー)

《作品について》
ドストエフスキー最後の作品です。2部作で構想され、『カラマーゾフの兄弟』はその第1部に当たりますが、作者は本作品完成後まもなく他界しています。
おそらく、作家として、思想家としての集大成とすべく構想された作品であり、未完ゆえにどこまで集大成になっているかはともかく、数あるドストエフスキーの著作の中でも特別な位置を占める作品でしょう。

《完璧な作品?》
難解でなる大作だけに、わたしのレビューを読んで「この本を手にとってみようか」と思う人はほとんどいないだろうから(?)、既読者向けに毒を吐いて終わりにします。

本書のあとがきによると、かの小林秀雄が『カラマーゾフの兄弟』を「およそ続編というものがまったく考えられぬほど完璧な作品」と賞賛したそうで、訳者は賛同の意を以ってこのくだりを引用しています。小林秀雄本人の文章を読んでいないので、前後の脈略は分かりませんが、本当にそうなのでしょうか?わたしには、続編を前提としていることが自明と感じられましたし、それを別にしても、到底「完璧な作品」とは言えそうもありません。

真摯に深められた思想を、切れば鮮血が迸りそうな人間のドラマとして具現するのが、ドストエフスキー作品の真骨頂。前半の第5編~第6編(『反逆』~『大審問官』~長老の辞世の長広舌)で提示されている壮大な命題に対して、『カラマーゾフの兄弟』の終わり方では何ら回答できていなくて(具体的には、神と社会制度のあり方について)、これが中間点であることは疑問の余地が無いと思いますけどねぇ。
さらに、少年たちや小悪魔少女にしたって、彼らが続編への布石として登場していることは間違いないと思います(そう看做さないと、尻切れトンボに過ぎます)。
作者が作中で何度も触れている通り、書かれなかった続編を受け入れる、つまり未完と看做すのが正解でしょう。

続編云々以前に、「完璧な作品」どころか、後半に入って失速気味で、わたしは死を目前にした作者の体力・精神力の衰えを疑ってしまいました。

完璧と言うなら、それは第3部まで(全体構成は、序+第1部~第4部+エピローグ)。第5編~第7編(第2部の途中から第3部の序盤)での、『反逆』&『大審問官』の章→長老の辞世の長広舌(ここで『反逆』&『大審問官』と対極的な立場が示される)→『腐臭』の章(ここで『大審問官』が部分的に現実化される)の一連の悪魔的展開といい、第8編~第9編(いずれも第3部)でのミーチャ(長男)が連行されるまでの畳み掛ける迫力といい(ドストエフスキー・クレッシェンド全開)、ゾクゾクしました。このあたりを読んでいるときは、空前絶後の大傑作か!?とテンション上がりましたが、既に述べたとおり第4部で失速。

思いつくところを挙げてみます。たくさんあります。
第10編『少年たち』は、前述のように続編への布石の意味合いゆえと推察するけど、『カラマーゾフの兄弟』単体の中では浮いているし長すぎる。そして、最大の問題は、長老の死を潜り抜けた新生アリョーシャ(三男)初登場の重要なパートであるにもかかわらず、全然キャラが立っていない。
第11編『兄イワン』は、もはやドストエフスキーの作とは思えないほどに段取り的で、イワンの発病・帰郷や彼とカテリーナの関係の深化など、第3部までの筆致であれば大いに盛り上がったであろう重要な場面が、ことごとく取って付けたような説明でやり過ごされているし、イワンとの信頼関係を一方的に妄想してのスメルジャコフの犯行は、いかにもお粗末。他の作家ならともかく、ドストエフスキーとしては密度が薄すぎるんです。
第12編『誤審』は、全編のクライマックスとしてそれなりに盛り上がりはするけれど、基本的には第11編までに提示された情報に沿って成り行くだけなので、想定範囲内の展開。というか、テーマそっちのけの法廷サスペンスとしての盛り上がりであって、この作品のクライマックスとして十全ではありません。続編ありきの中押しと考えても、ちょっと物足りません。

ドストエフスキーは、過剰なことはあっても、うっぺらさ、段取り臭さとは無縁な作家なので、これが本来の実力とは考えにくいから、病気(結核が死因らしい)による衰えか、あるいはそのために完成を急いだせいなのか・・・

《結び》
いろいろネガティブなことを書き連ねたけれど、繰り返すと、第3部までは凄いと思うし、それをもって『カラマーゾフの兄弟』をドストエフスキーの最高傑作と看做すことはアリだと思うけど(物語の完成度とは別のものを期待する読者は少なからずいると思うので)、無批判に持ち上げる姿勢に白けて、軽く毒を吐いてみました♡
karamazofu-kyodai.jpg
  1. 2006-05-03 11:12:11
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