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蹴りたい背中 (綿矢りさ)

言わずと知れた芥川賞受賞作。

前作『インストール』から一気に飛躍して、立派な日本的純文学作品に仕上がっています。定番のウジウジとした世界(笑)。

『蹴りたい背中』のどんなところに純文学作品としての進歩を感じたかと言うと、前作『インストール』と同じくらいこじんまりとした世界ながら、人間の微妙な心理に対する洞察と表現が格段に鋭く深くなっている点です。

主人公のハツはにな川というオタク系男子に好意を感じているのだけれど、好きという気持ちが背中を蹴りたいという衝動となって表れます。SMに目覚めつつあると言うことではなくて(ハツが攻撃的なキャラであるのは間違いないけど)、孤独で息苦しい高校生活の中で唯一心を許せる存在であるからこそ、にな川に鬱屈した感情や近親憎悪めいた感情をぶつけたくなってしまうというところでしょうか。そんな、自分の内側で湧き起こる思いがけない感情やら衝動やらに翻弄される不器用な女子高校生の心理が活写されています。言動に表れているけど気がついていない、気がついているけど理解していない、理解しているけど言動に結びつかない、というような微妙な状態がしっかりと捉えられています。
これは、ハツとにな川の交流の描写だけでなく、高校でのハツの鬱屈した日常の描写にもあてはまります。

ただし、主人公のストレスフルな日常描写が大半を占める楽しくない作品なので(笑)、個人的には読み手の気を逸らさない程度にきわどい演出(エロという意味じゃないよ)が欲しかったです。淡々とし過ぎているように感じました。

文章とか演出の巧拙はともかくとして、作者のクールで理知的でかつ対象から逸れることの無い目線を感じました。とかく目を背けたくなる心の闇の部分とか看過しがちな微妙な揺らぎを直視し、じっくりと描き上げる強さと集中力があります。わたしはそれらを息苦しく感じますが、この息苦しさは純文学として“ホンモノ”の証であると思います。
それが芥川賞という大きな看板に見合うのかは、わたしには判断できませんけど。
keritaisenaka.jpg
  1. 2006-05-03 11:09:04
  2.  綿矢りさ
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コメント

蹴りたいについて
悔しいけど、綿矢さんは天才です。

読書嫌いの私の心を奪った人ですから。
  1. 好奇心  
  2.  
  3. 2008-05-11 20:23:04 
  4. #- 
  5. [ 編集]

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「蹴りたい背中」綿矢りさ
「蹴りたい背中」綿矢 りさ河出書房新社2003-08-26勝手に評価:★★★☆☆ 高校に入ったばかりの“にな川”と“ハツ”はクラスの余り者同士。臆病ゆえに孤独な二人の関係のゆくえは……。世代を超えて多くの読者の共感をよんだ第130回芥川賞受賞作。(河出書房新社HPより)凄
  1. Chiro-address    
  2. 2007-09-18 10:54:04  

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