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バースト・ゾーン 爆裂地区 (吉村萬壱)

奥泉光氏のところでも書きましたが、純文学並に人間描写にこだわった娯楽作品、というのがわたしのツボ。意外と出会えないものですが、『バースト・ゾーン 爆裂地区』はうれしい該当作品でした。

この作家はデビュー作品集『クチュクチュバーン』(文学界新人賞)ではシュールなカタストロフを、芥川賞受賞作『ハリガネムシ』ではバリバリの純文学路線で人間の暴力的衝動を描破してきました。『バースト・ゾーン 爆裂地区』は近未来SFっぽい大作。なかなかに多彩(=多才)です。

『クチュクチュバーン』収録の2編と『ハリガネムシ』はいずれも短い作品だったので、この長大さが気がかりでしたが、揺るぎなく世界が構築されていて感服。堂々としてパワフルな筆致に圧倒されました。

ただし好き嫌いはかなり分かれそう。
エログロ・バイオレンスな作品世界は相変わらずだし、『クチュクチュバーン』なんかと比べると設定に具体性があってSFっぽさ=ジャンル色が濃厚。純文学路線の『ハリガネムシ』を気に入った読者がこの作品をどう受けとめるか?
また、純文学然とした渋すぎるキャラ設定や生臭い人間描写を純粋なSFファンはどう受けとめるか?

作者の創意は、純文学とかSFといったジャンルを超えて、エログロ・バイオレンスな表現や極限状態での人間心理を描き出すことに一途に向かっています。つまり心地良くない世界を構築しようとしています。このスタンスのままだと愛される作家になりにくいかもしれないけど(?)、自分がやりたいこととそれを実現する方法を心得た力強い存在です。
berstzone.jpg
  1. 2006-05-03 11:07:41
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