ぶっき Library... パーク・ライフ (吉田修一)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

パーク・ライフ (吉田修一)

『パーク・ライフ』『flowers』の2編が収録されています。

どちらの主人公も、他人との乖離やズレを不可避なものとして受け入れて、それを常態としながら流され気味に日常を送っていますが、そうした中でのちょっとしたドラマが描かれています。

【パーク・ライフ】
序盤から中盤にかけて、流され気味な日常の中での内面の空虚さや自我(他者や外界から区別して意識される自分)の薄弱さが、臓器提供や人体模型の喩えを通して描かれます。突っ込んだ分析ではなくて、そこにあるものとして(あるいは無いものとして・・・)漠然と語られています。

そしてラストは、薄曇の雲が途切れてスッと陽光がさしかけてくるように、微妙に肯定的。
エンディングでスタバ女が「・・・私ね、決めた」と呟いた後ちょっと吹っ切れたような態度になって、それが何についての決心か分からないままに、主人公は「まるで自分まで、今、何かを決めたような」気持ちにとらわれます。何かを決心した他人を間近に見て、ちょっとだけ元気をもらいました、てことですよね、これ!?
スタバ女が何に対してどのように吹っ切れたのかは描かれていません。吹っ切れた瞬間と、その瞬間に立ち会うことで主人公の中に起こった微妙な感覚がさりげなく描かれています。

人から元気をもらう瞬間ってこんなものかもしれない、と思わせる周到かつ巧みな演出。このさりげなさがミソなのでしょうね。一生に一度あるかないかの大事件を描くのではなく、日常の中に転がっている契機を捉えることがこの作品の目指したリアリティなのでしょう。なかなかの意欲作ではないでしょうか。
もっとも、この作品を読んで元気になれるとは限りません(笑)。

それにしても、ちょっとさりげなさ過ぎるかもしれません。現実にこういう場面に立ち会ったら、表情や声のトーンや動作なんかからいろいろ読み取れるけど、言葉だけで表現する小説ではそのあたりのニュアンスが伝わりにくいわけで、できればそこを補って余りある演出が欲しいところ。

主人公とスタバ女の関係は今後恋愛に発展するかもしれないけど、この作品を恋愛小説の脈絡で読むとおかしなことになると思います。

【flowers】
生活のいろんなことに起因する主人公の抑圧みたいなものが職場での虐めもどきによって爆発、みたいな展開です。爆発といってもそんなに派手じゃありませんけど、徹底的にさりげない『パーク・ライフ』に比して物語は動的に展開します。そのぶん分かりやすくなっています。

ただし感銘は今一歩。
キーとしてどしゃぶりの墓地のシーンが使い回されていますが、このシーン自体が全然鮮やかではないし、暴行場面とのかぶせ方も垢抜けません。故郷を捨てることを決心した出来事と堪忍袋の緒を切らす出来事をオーバーラップさせる演出意図は分からないでもないですが、小説なんで感じさせてナンボのもんだと思います。
メインの流れが締まらないので、主人公と妻や従兄との関わり方の描写も宙に浮いている印象でした。
parklife.jpg
  1. 2006-05-03 11:06:02
  2.  吉田修一
  3.  |
  4.  Trackback(1)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/219-e87fb075
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

パーク・ライフ / 吉田 修一
「パーク・ライフ 」 ★★★★★ 吉田 修一 第127回芥川賞受賞作 書籍の詳
  1. 飴色色彩日記    
  2. 2007-10-11 02:10:52  

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。