ぶっき Library... 生ける屍の死 (山口雅也)

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生ける屍の死 (山口雅也)

素性はガチガチの本格ミステリーですが、米国の片田舎が舞台であること、死者が甦るという条件が付加されたことから、独特な味わいに仕上がっています。

主人公をはじめとして主要な登場人物は米国人だし、文章は軽快でユーモラス。翻訳物のような雰囲気です。モデルとなっている作家がいるのかもしれません。翻訳物を読みなれていないと取っ付きにくいかもしれませんが、幸いにして主人公が米国のミステリーにありがちなタフ野郎ではなく日本人に通じるメンタルの持ち主なので、舞台設定に慣れてしまうと案外違和感は無いと思います。
伊達に米国が舞台になっているのではありません。舞台設定が謎解きそのものに深く関わっていますし、宗教観とか埋葬の慣習などが掘り下げられていています。社会的文化的背景を異にする日本人読者の大半にとっては、架空の異世界が舞台に設定されているようなものです。謎解き部分の説得力を高めるためには、異世界やその住人たちをリアルに表現する必要があります。この作品は必要十分と感じました。

死者が甦るという条件が付加されています。こういうことをやると、物語のリアリティが殺がれて裏目に出ることが多々あります。その点、この作品では謎解きに巧みに取り込まれています。これによって謎解きの選択肢が格段に増えるし、非日常的な設定により直感が通用しにくくなります。読者の思考力と柔軟性が試されます。わたしのような直感に頼りがちなミステリー読者は手痛い一撃を食らうかも。

死者が甦るという一見奇抜な設定を奇抜に終わらせないのが、何度となく出てくる死に対する考察。こういうのは後付の説明っぽくなるとウザイだけなのですが、物語の進行を阻害しない程度に要領よくまとまっています。また、探偵役の主人公を早い段階で生ける屍状態にしてしまい、生ける屍の視点を読者に提示したことも成功していると思います。

ただし、グイグイと引き込まれるような吸引力は感じられず、何度も中断しながら読みました。淡白な印象です。特に残念だったのは、主人公を生ける屍にしたことのストーリー上の効果が不十分であること。生ける屍は、甦っても肉体は時間とともに朽ちていくという設定。主人公にはタイムリミットが課されているのに、その設定を活かしたスリリングな盛り上げがありませんでした。また、恋人未満だった彼女との心の触れ合いも、もっともっと劇的に描けたはず。拍子抜けするくらい淡白な扱いでした。ラストだけ叙情的に演出されても、そこに至るまでの伏線が無ければ、感動は薄くなります。せっかくのおいしい設定がストーリー展開でほとんど活かされていないのはもったいないです。
ikerusikabanexsi.jpg
  1. 2006-05-03 11:03:50
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