全文ネタバレです。
シリーズ最終作です。
人気シリーズの最後を飾る力作ですが、構想に筆力か追いつかない感じで、パッとしません。
この作品のクライマックスはトリックの解明ではなく、真賀田四季との対決です。どういうわけか、展開される事件と真賀田四季との対決が密接に関連付けられていません。本作の事件のクライマックスとシリーズ全体のクライマックスをシンクロさせて最高潮に盛り上げて欲しいところですが、効果が拡散して盛り上がりが中途半端。事件の方が宙に浮いている印象です。事件自体も影が薄いし。
そもそも犀川と真賀田四季の対決もクライマックスになり切れていないと感じました。理屈だけでなく感情の面でも納得させて欲しい。前述の事件とのリンクの弱さも理由の1つだけど、ああいう〆かたをするなら、シリーズ全体としての伏線を周到かつ効果的に張り巡らせておかないと。
真賀田四季との対決の場面での犀川の心理描写は作者の思い入れを感じさせますが、とってつけたような感じがしました。過去のシリーズ作品の中でところどころ犀川の考え方をにじませてはいましたが、こういうエンディングへの伏線と呼べる水準には到底達していなかったと思います。
萌絵の許婚が登場しますがこの設定が活きていません。彼は真賀田四季登場までの場つなぎで登場したのでしょうか・・・
学生たちによる軽妙な会話があちこちに見られます。学生らしさの演出というには冗漫に感じられました。前作『数奇にして模型』にもその萌芽は見られましたが、本作ではいっそう顕著。おそらく作者は自分の作品の魅力と看做しているのでしょうが、退屈でした。
思いつくままにあげてみましたが、要するに突っ込みどころ満載。シリーズ随一の力作ですが、あまり楽しめませんでした。
- 2006-05-03 00:51:05
- 森博嗣
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