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アフターダーク (村上春樹)

既に『東京奇譚集』が刊行されましたが、今さらながら『アフターダーク』を読みました。

《作品について》
二十歳前後の一組の姉妹エリとマリが主役で、とある一夜(夜更け~明け方までの7時間)の出来事が描かれています。と言っても、姉の方は眠っているだけなんですけど・・・

小説をどう味わうかは読者の自由ですけど、この作品で作者の文学的創意を堪能するならば、姉エリの描き方というか、正確に言うならば彼女が抱える心の闇(=閉塞感)の描き方に尽きると思います。

村上氏は、姉エリ本人を終始眠らせておきながら、お得意の悪夢を思わせる幻想的な一幕 (テレビに取り込まれる場面)、中国人娼婦暴行事件(テレビに取り込まれる場面を通じてこの事件はエリに関連付けられており、中国人娼婦は追い詰められたエリの、暴行犯人はエリを追い詰めたもののありようを比喩的に示している)、妹マリが他の登場人物たちと交わすもろもろの会話(特に姉の友人高橋によるエリについての考察とラブホ職員コオロギの身の上話)を通して、姉エリが内に抱える闇を描出するというアクロバットに挑戦しています。
技術的にチャレンジングな作品ですが、とんがった印象は一切ありません。

村上春樹と言えば一人称自分語りのイメージが強烈ですが、この作品では珍しく三人称語りで一貫しています。一言で三人称語りといっても登場人物との距離感はさまざまですが、ここでは観察者という位置取りが選択されています。一人称自分語りに未練を感じないわけではありませんが、姉エリの内面描写の鮮度を高めるためには語り手の存在感を限りなく薄めることが得策なわけで(エリ自身を語り手にするのがベストだけど、ずーっと寝ているわけで・・・)、作品コンセプトに鑑みれば納得の選択。

《感想》
個人的にはこの作家の衰えない創意に感心し技術的なチャレンジを楽しみましたが、作品単体としての出来栄えとなると、挑戦することに意義があるというわけにはいかなくて、駆使されている技巧の効果が問われることになります。
これがいささか心もとなくて、さりげなく技巧が駆使された姉エリの内面描写は、これは十分に予想されたことですが(本人は眠っていますし・・・)、描かれ方が観念的・抽象的に過ぎて、感性に訴えてくる力が微弱。ここが肝なわけで、作品全体が散漫になっています。

三人称語りとしてのレベルは十分に高いと思いますが、では一人称自分語りに比肩できるほどに魅力的かというと、これまた十分に予想されたことながら、一歩も二歩も及びません。ことに二巡目でそれを痛感しました(ちなみに精読1回と確認がてらの流し読みを1回しました)。

この作家はデビュー作以来一貫して表現方法に意識的に取り組んでおり、技巧派作家としての横顔を持っています。近年技巧性への傾斜は強まる傾向にあり、個人的には過剰という印象を抱いていますが、いずれにしても読者に考えて読み解くことを要求してきます。それをどう受けとめるかが評価の分かれ道だと思われます。
afterdark.jpg
  1. 2006-05-03 00:43:35
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コメント

bookbathさん、こんにちは
姉の心理面をそれぞれの登場人物が受け持っている構造、というのがわたしの読みですが、もちろん真偽はわかりません。どうなんでしょう?
  1. ひねもじら 乃太朗  
  2.  
  3. 2007-04-08 20:23:03 
  4. #mQop/nM. 
  5. [ 編集]
その2
うーんそうでしたか。
姉の心理面をそれぞれの登場人物が受け持っている構造なんですね。
気付きませんでした。
しかし技術的には高度でも、内容としてはどうだったのかな、というのが私の印象です。
今までにない、若い男が普通の人として出てくる部分、ここに新しさを感じましたが、うまく昇華しきれていないようにも感じました。
いずれにせよ、イマイチ、という評価でしょうか。
  1. bookbath  
  2.  
  3. 2007-04-07 00:10:58 
  4. #- 
  5. [ 編集]

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『アフターダーク』 村上春樹著 講談社 2006
凹んでいる僕に友達が貸してくれて村上春樹小説をはじめて読んだ、まろまろです。 さ...
  1. まろまろ記    
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※6.アフターダーク
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  1. レザボアCATs    
  2. 2007-04-07 00:53:57  
アフターダークのあとからやってくるもの
アフターダークひさしぶりに緊張感を持ってこの本を読んだ。なんていっても、村上春樹の新刊だ。どちらかというと今まで、村上春樹が書いてきた話が続いている。見た目は問題のない、有能な社会人の、性と暴力の底知れぬ闇周りからの期待にこたえた結果、からっ
  1. できれば本に埋もれて眠りたい    
  2. 2007-04-07 00:05:29  
村上春樹【アフターダーク】
村上春樹がノーベル文学賞の候補に挙がっているらしい――と、しばらく前から言われている。最近は「ノーベル文学賞の有力候補らしい」という話も聞こえてきて、とりあえず村上春樹作品は意識的に読んでおいたほうがいい
  1. ぱんどら日記    
  2. 2006-10-05 16:10:55  
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