ぶっき Library... 神の子どもたちはみな踊る (村上春樹)

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神の子どもたちはみな踊る (村上春樹)

《作品のプロフィール》
連作短編集。6編が収録されています。この作家としては珍しく三人称の語りになっています。

1995年の阪神・淡路大震災(ちなみに村上氏は兵庫県育ち)に強い影響を受けた作品群だそうで、全作品にこの震災が登場します。しかし震災が直接的に描かれているわけではないし、この出来事を知らなくとも鑑賞には差し支えないと思います。当時の惨状の映像が脳裏にある方が多少は同調しやすいかもしれません。その程度です。

各話は内容的に独立していますが、震災以外にもいくつかのキーワードやキーとなるイメージ(かえるくん、箱、くま、石・・・)で関連付けられています。そのすべてが意味的に関連しているわけでは無さそうですが・・・

《暗喩が重用された観念的な作品群》
暗喩が重用された極めて観念的な作品集です。『蜂蜜パイ』を除く5編は、観念のパズルを意識的に読み解かなければ作品の趣旨に辿り着くのは難しいと思います。技巧的かつ難解、と言っても差し支えないでしょう。
感覚本位の読み方では太刀打ちできそうもありません。テーマに到達できなくてもそれなりに楽しんだ気持ちにはさせてくれますが・・・

初期の頃から繰り返し採り上げられてきたお馴染みのテーマが扱われていますが、この作品集では村上氏の思索は一層掘り下げられ、かつ読者へのメッセージとして凝縮されています。つまりテーマ自体が著しく観念的になっています。
にもかかわらず村上氏は観念的な言葉で観念を語ろうとはしません。観念を具象的な存在に見立てること、すなわち暗喩を用いることで観念的な言葉を徹底して排除しています。村上氏のこだわりないしは美学が感じられます。

村上氏は大変巧妙にこれらのことを成し遂げていますが、手放しで賞賛する気持ちにはなれません。
たとえば表題作『神の子どもたちはみな踊る』は、30ページほどのボリュームの中に『海辺のカフカ』上下巻に匹敵する内容が凝縮されていますが(と思いますが)、読み解くための献身的な努力を読者に要求します。テーマに行き着くことは、標準的な難易度の大学受験の現代文問題を解くことより厄介と思われます。と言っても、〇十年前の入試レベルとの比較ですけど・・・
スタイルの洗練が臨界点を超えてマニアックな偏狭さに向かっているように思えてなりません。これも一つの行き方ではあるのでしょうが。

こんな言い方をするとわたしがすべてを看破しているかのようですが、そんなつもりはありません。正解できなくても問題の難しさは見当つきますよね?

《簡単な個別的印象》
村上氏は作品に年齢をにじませることの少ない作家だと思いますし(ちなみに1949年生まれ)、この作品集も基本的には然りですが、『アイロンのある風景』『神の子どもたちはみな踊る』『タイランド』あたりには人生経験を積んだ人間にしかできないような洞察(=考えただけではなく、実感に支えられた洞察)を感じました。内容的に深いものがある、と思います。だから文学的価値が高いとは限りませんけど・・・

また、『蜂蜜パイ』は自伝的な香りが興味深いし、希望と決意が込められたエンディングで、この作家には珍しく爽やかな感動が残りました。
kamixkodomotatixminaodoru.jpg
  1. 2006-05-03 00:43:05
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神の子どもたちはみな踊る
神の子どもたちはみな踊る 村上春樹著 『UFOが釧路に降りる/アイロンのある風景/神の子どもたちはみな踊る/タイランド/かえるくん、東京を救...
  1. slow match    
  2. 2008-03-04 22:55:33  
神の子どもたちはみな踊る
村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮社 2002)評価:★★★☆☆阪神淡路大震災をテーマに?書かれた短編集。どの短編にもあの震災のことがスパイスのように使われています。短編を評価するのって結構骨がおれます。というのは、短編ひとつひとつ顔...
  1. のほほんの本    
  2. 2006-10-21 02:03:45  

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