ぶっき Library... 国境の南、太陽の西 (村上春樹)

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国境の南、太陽の西 (村上春樹)

村上氏の長編というと隠喩的なエピソードとか現実とファンタジーの交錯を予感させられますが、この作品はひねり無しのストレートな恋愛小説でした。実も蓋も無く言ってしまったら「僕」の女性遍歴を描いた小説。
シンプルな作品だけに、これまで培ってきた手法をアレコレ駆使するのではなく、独特の雰囲気のある会話と、敢えて内面に立ち入らない距離感のある人物描写とで、もっぱら抒情的に描かれています。そうした気分を味わう作品だと思います。それに感応できる読者は触発されるかもしれません。

わたし自身は、島本さんと「僕」の妻の人物描写をもっと突っ込んで欲しかったと思います。特に妻。妻の人物像や「僕」との関係性が掘り下げられないので小説の世界が広がらず、「僕」のうじうじとした一人語りに終わっています。掘り下げることによって抒情性や透明感は弱まるかもしれないけど、その先にある村上氏の人間観とか恋愛観みたいなものを形にして欲しかったです。ほのめかしの美学にはちょっと飽きてきたし、物足りなくもあります。確かに、直接的に言葉に置き換えられないこと、あるいは置き換えた途端に陳腐化してしまうことがあるのは事実ですが、村上氏の場合そのはるか手前で足踏みしているようなもどかしさがあります。

一味違う雰囲気の作品ですが、因数分解していくと従来作品の焼直しという印象。ただし、焼直しが常に悪いとは思いませんし、それなりには楽しめました。
kokkyoxminamitaiyoxnisi.jpg
  1. 2006-05-03 00:40:25
  2.  村上春樹
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コメント

bookbathさんへ
わたしは村上春樹のウェットな部分が好きではないのです。『スプートニク・・・』やこの作品はその度合いが強く感じられて、苦手なのです。そこがこのブログの(わたしの)文章の、偏りであり、限界でしょう。
  1. ひねもじら 乃太朗  
  2.  
  3. 2007-04-08 20:39:03 
  4. #KhfqmKt. 
  5. [ 編集]
その5
私は気に入っている作品です。
ひねりやほのめかしなどがない分率直で分かりやすく、村上春樹のよく書いている「ズレ」について、くっきりと見えてきます。
文学的要素は少ないものの、その真摯さにうたれます。
焼き直しといえば焼き直しなのですが、作品全部を焼き直しと考えれば、比較的オリジナルフィルムに近い作品ではないのでしょうか。
まぁ、私にとってわかりやすかったのが一番だったのかもしれませんが。
  1. bookbath  
  2.  
  3. 2007-04-07 00:31:30 
  4. #- 
  5. [ 編集]

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