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ねじまき鳥クロニクル (村上春樹)

3部全体を俯瞰すると完成度の低さは否めませんが、非凡で強烈な力作であり、ことに創意とチャレンジ精神に溢れた第3部には並々ならぬものを感じます。

《チグハグな部分》
完成度の低さを感じさせる最たるものは第1部+第2部と第3部のチグハグさ。内容的に齟齬があるし、スタイルの面でも大きな隔たりがあります。

たとえば第1部+第2部で活躍した加納姉妹は第3部では顔を出しませんが、加納姉妹を前提とした伏線も何気に葬り去られています。
あるいは、主人公の妻のキャラが双方では大きく異なります。第1部+第2部では生身の人間として描かれていましたが、第3部では主人公の戦いの中で象徴化されてしまっています。それによる不完全燃焼な後味は拭い切れません。

第3部から本格的に登場する赤坂親子や終盤の間宮中尉の手紙はいかにも唐突で、伏線なんかあったもんではありません。

《第1部+第2部はイマイチ?》
第1部+第2部のスタイルは基本的に過去の長編作品の延長線上にあります。ストーリーやキャラの整合性を保ちつつメタフォリックな手法を織り込むアプローチです。知性と感性がバランスしたアプローチで、読者はストーリーやキャラに感情移入しながら暗喩的な意味を自然に汲み取っていくことができます(あくまで原則・・・)。
個人的な好みを言わせていただくと、第1部+第2部は過去の作品に比べて精彩を欠くようです。自在で瞬発力に富んだ想像力は影を潜めて、かと言ってそれに替わる新手の魅力は見当たりません。ぶっちゃけ年齢による感性&想像力の衰えを疑ってしまいました。

《大きな一歩を踏み出した第3部》
第3部は、第1部+第2部の鈍さや淀みを完全に払拭しています。昔に戻ったのではなく、大きな一歩が踏み出すことで。現在の作風につながる巧緻な技巧性が花開いていますし、80年代の傑作群に匹敵するほどにパワフル。

ストーリーやキャラの整合性・一貫性は後退し、メタフォリックな手法が大胆に駆使されています。

第1部+第2部では、妻や宿敵(綿谷ノボル)はキャラクターとして完結性を保っていましたし、妻への愛と宿敵(綿谷ノボル)との対決は不離なものとして描かれていました。流れとしては、主人公が自分の大切なモノを守るために立ち上がる、的な方向に向かっていました。

第3部はもちろんその流れに乗っていますが、妻も宿敵(綿谷ノボル)もそれ以外の登場人物たちも対決の構図を形作るパーツに昇華されて、一種の観念劇と化しています。
戦いや救出の現実的な描写は後方に退き、妻、綿谷ノボル、笠原メイ、間宮中尉、赤坂親子らが作者の依り代となって、合唱曲の声楽パートさながらに、人間を侵食する社会的な悪(?)の成り立ちについて、運命の支配力と人間の弱さについて、戦うことの必要性と危険性についてなどなどをかわるがわるになって謳い上げていきます。
構成は無秩序風ですが、大切なことは隣接した複数の章で重複して語られており、分かりやすくするための工夫はあります。

ただし、しつこい部分(特に戦争の描写)があると思えば手薄に感じられる部分(たとえば主人公の中の変化とか)があったりと、洗練度はイマイチ、というかかなり力ずくかも。読み進むうちに作者の狙いとするところが自ずと像を結んでくる、みたいなかっこよさには到達できていないと感じました。

《蛇足的むすび》
『ねじまき鳥クロニクル』は当初第1部+第2部のみで構想され、その後になって第3部が追加されたそうですが、個人的には第1部+第2部で完結させなかったことは納得できるし、それを契機に新たな地平に踏み出した旺盛な創作力には敬意を覚えます。
nejimakidori-chronicle.jpg
  1. 2006-05-03 00:39:53
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ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編』(新潮社 1997)評価:★★★☆☆ねじまき鳥ラスト!長かった…。しかも1部2部とはがらりと書き方をかえてきて、時間も行き来するから慣れるまでに時間がかかり、読むのにも時間がかかり苦労しました。....
  1. のほほんの本    
  2. 2006-12-07 23:00:27  

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