恋愛&セックスを抒情美たっぷりに描ける、というのはこの作家のセールスポイントの1つですが、『ノルウェイの森』ではこの能力が前面に出ています。そのぶんファンタジー性とか技巧性は控え目。シンプルというかベタな作品ではありますが、作者の表現意欲は強烈で、そのパワーは、読む者を圧倒するよりも、深く強く浸透し感染して来ます。
このベタで濃厚な味わいをどう受け止めるかで好き嫌いが決まりそう。
俗っぽいテイストにもかかわらず安っぽくならないのは流石。
まず文章の素晴らしさ。抒情美たっぷりな文体ですが、雰囲気に流れていなくて、言葉の選択は意味的にも語感としても吟味されているし、想像力が力強く息づいています。
恋愛に死とか孤独が絡められるのはありがちで、『ノルウェイの森』も例外ではありませんが、単なる味付けにとどまっていなくて、ときには死が、ときには孤独が作品のテーマかと感じられるほどに濃やかに描かれていて、恋愛小説の枠にとどまらない奥行きを生み出している、と思います。
いくつかある印象的な場面の中でも、あまりにも効果的なラストシーンを忘れることが出来ません。「僕」のドンヨリとした情緒に思いっきり読者を引き付けた上で、そのまま終わると見せかけてスコーンと突き放してしまう荒業。しばし呆然としてしまいました。
個人的には、「僕」が初めて「緑」の家を訪れるシーンも印象的。このシーンに限らず、「緑」はこの作家が創造した人物の中でも、もっとも活き活きとして魅力的な一人。『ノルウェイの森』のリアリズム小説としての成功は、彼女に拠るところ大。
自己愛が強い「僕」に感情移入しにくかったり、「直子」の人物造形が中途半端に感じられたりと、作品トータルでは抵抗感が無きにしも非ずですが、村上作品中でも際立って濃厚なテイストと見事なラストシーンのゆえに、『ノルウェイの森』侮り難し、なわたしです。
《セックス観について》村上作品においてセックスはどう位置づけられているのか?ということですが、はっきりとは分かりませんが、複数の作品を読んだ結果、おおよそ次のようなイメージを持っています。
村上作品(主に長編)の主人公には、友達といえる存在は無いに等しいし、男女の関係においても、お互いの思いが生々しくにぶつかることはほとんどありません。そんな中で、セックスが唯一リアルに他人と関わる行為。場面ごとにニュアンスは異なりますが、男女の関係を超えて、外の世界とのつながりの象徴とセックスが位置づけられているように感じられます。
『ダンス・ダンス・ダンス』のラストシーンなんか典型的かも・・・
この作家が大の女好きで、セックス大好き人間だとしても、村上作品での女性やセックスは、単なる刹那的な快楽ではなくて、主人公と世界とつなげる重要かつ決定的なものとして扱われている、と思います。

- 2006-05-03 00:38:56
- 村上春樹
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コメント&TBありがとうございます。
早いということは無いと思いますよ。登場人物たちと同じ年代の頃に読んでおきたい作家だと思います。そして、気が向いたらさらに大人になってから読み返す。というのがいいと思います。
- ひねもじら 乃太朗
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- 2008-06-21 01:07:34
- #mQop/nM.
- [ 編集]
私もノルウェイの森でレビューを書いたのですが、私はどうも読み方が浅かったようです><
http://girlstalk-liina.seesaa.net/article/100879512.html
私には春樹は早いのかもしれません・・・
- りぃな
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- 2008-06-18 00:56:50
- #-
- [ 編集]
ノルウェイの森 上 (村上春樹著)を読む。秋の夜中には文学である。といっても文学作品らしいものは人生ではじめてかも知れない。だから書評はムリなので書き抜き。
- blog50-1
- 2008-10-02 00:07:01
村上春樹を読むのはアフターダークに続き、2作目烈 でも私には春樹は少し難しいかもしれません。。。嶺 主人公が厭世的な大学生っていうのと相まって、明治・大正・昭和初期の文豪の小説を読んでるみたいな感覚になりました。 夏目漱石とか、太宰治..
- 女子大生りぃなのホンネ
- 2008-06-18 00:57:31