ぶっき Library... 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド (村上春樹)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド (村上春樹)

ファンタジックな物語性はすでに前作『羊をめぐる冒険』で相当程度発現していますが、一気に行くところまで行ってしまったのがこの作品です。この路線はその後も複数の作品で踏襲されますが、イマジネーションの豊かさ・強靭さの点でこの作品は依然として抜きん出ているように感じます。
たとえば、エレベーターの中に突っ立っているだけとか延々と廊下や洞窟の中を歩き続けるだけというような単調な場面であっても、村上氏は間断なくそして変幻自在に読み手の想像力を刺激してきます。この旺盛で自在なイマジネーションには眼を見張ります。

現実感とファンタジックな味わいが渾然とした作風が多い村上作品の中で、この作品は基本的に空想世界の物語として構築されています(『ハードボイルド・ワンダーランド』の方には多少現実感がありますが)。それだけ写実的ないしは叙事的な描写の割合が増えるので、村上作品としてはかなり文章が引き締まっています。個性的な文体の魅力を武器とする作家だけに、他の作品とは異質の味わいがあります。
そして『世界の終り』と『ハードボイルド・ワンダーランド』とで、それぞれの舞台やストーリーに合わせて文体が鮮やかに使い分けられています。『ハードボイルド・ワンダーランド』の文体が三部作(『風の歌を聴け』~『羊をめぐる冒険』)などの従来作品に相対的に近い調子であるのに対し、『世界の終り』の文体は写実性・叙事性が高いうえにどこか静けさが漂っています。

この作品は、村上氏が気分とか雰囲気だけの作家ではなく、物語を構築する並外れた力量の持ち主であることを証明しています。その後の20年でいくつもの大作が発表されましたが、この点では未だに『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が最右翼に位置していると確信します。
個人的にはこの作品と『ダンス・ダンス・ダンス』が村上氏の創作力の頂点と考えます。

暗喩的な設定が散りばめられており、解読的な読み方をされることが多いようです。作者本人が自伝的作品と言っていますから、村上氏の作家としてのあり方(作家として想像力の世界に生きるということ)が示されているものと考えます。しかし、そのような“解釈”よりも、表現者としての圧倒的なまでのイマジネーションを堪能したいと思います。
sekaixowarixhardboiledwonderland.jpg
  1. 2006-05-03 00:38:28
  2.  村上春樹
  3.  |
  4.  Trackback(0)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/192-be506b94
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。