ぶっき Library... ダンス・ダンス・ダンス (村上春樹)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

ダンス・ダンス・ダンス (村上春樹)

『羊をめぐる冒険』の続編にあたります。出版の順序としては、この2つの作品の間に『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』『ノルウェイの森』の2つの大作が入ります。

個性的な人物が多数登場したり、舞台があちこち移ったり、サスペンスの要素があったりと、なかなかにぎやかに彩られていますが、本質的にはかなり陰鬱な作品です。
『羊をめぐる冒険』での喪失感や戸惑いはまだ緩やかでした。自覚されていたけれど、「僕」に深刻にのしかかってはいなかった。
しかし、『ダンス・ダンス・ダンス』においては、それらが「僕」を追い詰めつつあります。「僕」は世の中との“つながり”を見失い、完全に途方にくれています。しかしそれが見出せるかどうかはともかく、「僕」は消耗しながら踊り続ける(=自分として生きる)しかない。そうした閉塞感が提示され、解決は与えられません。
村上作品の底流にある最重要の動機が端的に示されているという点で、非常に重要な作品であると考えます。

羊男との再会を果たした序盤まででこの作品のテーマは語りつくされていますし、ここまでがもっとも読み応えがあります。個人的には、主人公の危機的な精神状況の踏み込んだ描写として、村上氏の全作品中でも特に印象深いくだりです。『羊をめぐる冒険』までの透明で軽やかな空気感はかなりの程度失われてしまいましたが、はるかに密度が濃くなっています。

その後は「僕」の踊りを具現化したさまざまなエピソードがサスペンス仕立てで展開されます。ここからはサービス精神たっぷりなので、ストーリーテリングの面白さを味わうもよし、ユキにキャラ萌えするもよし。村上氏の俗な部分での達者さが堪能できます。

最終的なカタルシスはありません。『羊をめぐる冒険』にもカタルシスはありませんでしたが、エンディングで一区切りついていたので閉塞感は紛らわされていました。しかし、ここではもうそれから目が逸らすことも、先送りすることもできなくなっています。
物語は一応の解決を迎え、「僕」はとりあえずの“つながり”を見つけますが、別の事件が起きるかもしれないし、とれあえずの“つながり”は失われるかもしれない。それでもやっぱり踊り続けるしかない。そういう終り方だったと解釈しています。

気分とか雰囲気中心に村上春樹を読んでいる読者には、後味がよろしくない作品かもしれません。まあしかし、そういう自身の虚無感みたいなものから目を逸らさない姿勢に手ごたえを感じました。


《ごく個人的な追記》

わたしとこの作家の関わり(あくまでも著者対読者としての)において『ダンス・ダンス・ダンス』は決定的な存在です。

『ダンス・ダンス・ダンス』の冒頭部分は直喩・暗喩満載なのでつかみ所無く感じられるかもしれませんが、極めて具体的な精神状況が語られている、と思います。というか、三度目にこの作品を読んだときに(数年前です)自分の心が強く揺さぶられたことに驚き、そのように思い至りました。ああそうか、この文章は今の自分のような心境を具体的に表しているのか、と。

そして、この作家は言葉遊びを楽しんでいるだけではなくて、端的に表現できないけれども具体的・現実的な“感じ”、を出来るだけ忠実に表現するために、自分の言葉やイメージを最大限駆使しているのだ、ということを強く認識しました。

そのときの共感があまりにも深くて、まるでそのくだりが(当時の)自分のために書かれているかのように感じられて、それ以来この作家は特別な存在になりましたし、言葉の裏にある具体的な何かを探りながら村上作品を読むようになりました。

というわけで『ダンス・ダンス・ダンス』がMy Personal Bestだったりします。
dancedancedance.jpg
  1. 2006-05-03 00:37:13
  2.  村上春樹
  3.  |
  4.  Trackback(2)
  5.  Comment(2)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

yoriさん、こんにちは!
そう言っていただけると光栄です。
この記事の後半は、わたしにしては珍しく思い入れを書いてみました。
  1. ひねもじら 乃太朗  
  2.  
  3. 2006-07-21 00:10:56 
  4. #- 
  5. [ 編集]
引っ越し記念!!
引っ越し記念TB、ありがとうございました 笑 こちらの記事を読んだら、無性にこの小説、読み返したくなりました!! 出来ることなら、「風の歌」からまとめて再読したいものですね 苦笑
  1. yori  
  2.  
  3. 2006-07-20 20:02:51 
  4. #OpjOh/wQ 
  5. [ 編集]

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/191-a9e80ebf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

『ダンス・ダンス・ダンス』 村上春樹著 講談社 上下巻 1991
ナニゲに自分のまわりには村上春樹ファンが多いと気づいた、まろまろです。 さて、そ...
  1. まろまろ記    
  2. 2007-06-05 21:46:10  
混迷の後先
ベストセラーを生み出すことは、作家にとって大きな夢だと思う。そんな夢が叶った時、作家の心中を通り抜ける風の色は果たして如何なものなのだろうか。多分、いわゆる普通のベストセラーならば、風の軌道もさほどには変わらないような気もする。しかしそ....
  1. 活字の砂漠で溺れたい    
  2. 2006-07-20 19:59:08  

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。