ぶっき Library... 愛と死 (武者小路実篤)

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愛と死 (武者小路実篤)

世は純愛ブームだそうで。わたしも乗り遅れまいと純愛小説を手にとってみましたが、この本を選んだ時点でどうしようもなく乗り遅れていそう・・・

わたしにとって純愛小説といえば武者小路実篤氏の『愛と死』。記憶が曖昧だけど、小学校の高学年か中学生の頃に読んで異様に感銘を受けました。で、その感銘を壊したくなくて、ずっと読み返していませんでした。あまりにも単純な小説なので、読み返すことで風化するように思えたのですね。

純愛ブームの落とし子的作品を読んでみても何ら心が動かなかったので、心が錆び付いてしまったように感じられて、一抹の寂しさなんぞを感じたりして、ウン十年ぶりに『愛と死』を手に取ってみました。

やっぱり良かった。

読み返して驚いたのがぶっきらぼうな文章。下手とか上手いじゃなくてぶっきらぼう。「しかし」で始まる文の4連チャンがあったり、「死ぬということは実によくない」みたいなのけぞりそうな表現が目白押し。文章そのものは引き締まっていますが、話し言葉っぽい率直さ、平明さ、型にとらわれない伸びやかさが特徴的。部分で読むとぶっきらぼうなんですが、全体としては読みやすくて透明感があるのが独特。
執筆されたのが昭和の十年代で、しかも二十一年前の出来事の回想として書かれているので、男女とか恋愛とか結婚に対する考え方は古臭いです。そういうことを分かっていないと、ところどころで違和感を覚えるはず。

独特の文体とか時代性に抵抗を覚えてしまい、「昔ほどの感銘は無さそうだな・・・」などと考えながら読んでいましたが、いつの間にか持っていかれてました。
中盤からの主人公とその恋人(夏子)との会話とか手紙の文面がノリノリなんですね。当時五十代前半の大家の筆が、他愛の無いイチャイチャしたやりとりにノリまくっています。恋人と会話したり文通することのうれしさがあふれ出しています。この作家なりに若き日々への思いをはじけさせているんじゃないかなぁ。
それと、当初は素っ気無さ過ぎるぐらいに感じられた率直な文体が効いています。歯の浮くような会話や文面の連続なのに甘ったるくも安っぽくもならないんですね。

それにしても、主人公の一人称語りを通して描かれる古風なお転婆娘、夏子の何と魅力的なこと!読み進むうちにいつの間にか夏子に恋心を抱いていました。だからこそ急転直下の結末に萌えてしまいました。というか、そうなれないとこの小説全然面白くないでしょうね。

この作品は、たとえば市川拓司の『いま、会いにゆきます』なんかと同じ妄想小説だと思います。どっぷり妄想にはまっています。ただ、武者小路実篤の妄想には現実逃避の臭いがしない。いわば健康的な妄想です(笑)
aisi.jpg
  1. 2006-05-03 00:35:52
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友情 武者小路実篤
ひねもじらさんのサイトに直リン記事があるのもし、内容が不適切なら削除しますので教えてください。TBさせて頂きますね。
  1. ほんのうみ    
  2. 2006-07-28 09:23:17  

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