ぶっき Library... 山ん中の獅見朋成雄 (舞城王太郎)

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山ん中の獅見朋成雄 (舞城王太郎)

『群像』に掲載された純文学らしい。ということは別掲の『阿修羅ガール』と同じ路線ということか。

読みやすかったし、特に主人公が異世界(天関堂)に入ってからはグイグイと引き込まれた。読ませる力はここでも健在。でも、読み終わったときは「あらら!?」って感じ。オチがついてない。気を取り直してストーリーを反芻してみた。人間のアイデンティティーを扱った作品ぽいのだけどこれは好意的な解釈で、見方によっては単なる出来損ないのファンタジー小説。読者に“好意的な解釈”を要求するというのは、小説としては失敗してるんだろうなぁ。

ツッコミどころはいくつかあるけど、何よりも物足りなかったのはこの作家らしいパワーが感じられなかったこと。
現時点でのこの作家の価値は、完成度や上手さよりも、自由奔放に解き放たれた強烈な表現意欲が生み出すナマモノ感にあると思う。いろいろ引っかかるところがあっても、ツッコミ入れる気持ちを吹き飛ばされてしまう。
しかるに、この作品では整えようという作者の意図が感じられて、パワーとかドライブ感はトーンダウン。かと言って、完成度や上手さがそれを補うほどではない。ひょっとして純文学系の関係者に日和ったか?

そんな中で収穫だったのは、これまでの作品では動的な描写ばかりが目立ったけど、ここでは静的な描写も光ってる点。もともと浸透力のある文章を書く作家だけど、この作品では全般的にすっきりとして落ち着いた文体が効果的で、特に異世界(天関堂)での生活の描写は印象的。他の長編作品と一味違う。新境地かも。
yamannakaxsimitpmonaruo.jpg
  1. 2006-05-02 09:30:50
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