ぶっき Library... 煙か土か食い物 (舞城王太郎)

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煙か土か食い物 (舞城王太郎)

『世界は密室でできている。』『九十九十九』を先に読んでいたので、語り口や過激な描写には驚きませんでしたが、それでも強烈に引き込まれ、一気に読みました。

作品中で主人公が作家の兄に対して「・・・人の心本当に掴もうと思うたら自分のことリアルに書くんや。自分の大事なもん惜しげもなく切り売りしてしまうんや。・・・」と意見をぶつける場面がありました。これこそ舞城氏がやろうとしていることなのでしょう。こういうタイプの作家は執筆時期ごとの魅力がとりわけ大きくなります。『煙か土か食い物』には、若い作家が若者を描いたとき特有の直線的な勢いとか鮮烈さが感じられます。

謎解きは直感と連想主体で進められるので、読者が謎解きを楽しむタイプのミステリーではありません。作品の構成としては、伝統的なミステリー小説の構造を流用しながら、本筋としては主人公の家族に向ける心情の変化を描いた作品ということになりそうです。そうであるなら、謎解きの部分に凝らないで、暴行致死事件を軸とした人間ドラマとして描いた方がスッキリとしてバランスよくまとまったと思います。主人公による謎解きがあろうとなかろうと、ドラマとしての感銘に大差なかったはず。でも、図入りで犯行やトリックを説明するくらい作者は謎解きにも入れ込んでいます。
ミステリーと人間ドラマの“融合”はこれまでも多くの作家が試みてきましたが、この作品では敢えて“融合”させないで“混在”くらいにとどめている感じで、それでいて強烈な主人公の一人語りによってそれなりの統一感を生み出しているところがユニークです。他の人が真似しても、この作家並に語る力が無いと失敗してしまいそう。

主人公の家族をめぐる人間ドラマはシンプルだけど勢いと説得力があって、一部に物足りなさは残ったけれど、ラストは感動的ですらありました。家族の葛藤なんて明治時代から使い古されてきたテーマですが、過激でユニークなキャラ設定と借り物でない自分の言葉による熱い語りで、新鮮に感じられました。
ちょっとした会話やエピソードで登場人物のキャラを引き立たせる描写は適確で手際がいいです。また、勢いに任せて書かれているようでありながら、物語がすんなりと読者の頭に入るように整理されています。

ミステリーの部分に関しては賛否ありそうですが、独自のスタイルがあるので、出来不出来より好き嫌いが大きいと思います。物語は実質的な続編である『暗闇の中で子供』に引き継がれるので、この作品単独だとエンディングが部分的に弱く感じられるのは止むを得ないところでしょう。
kemurixtutixkuimono.jpg
  1. 2006-05-02 09:29:40
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