ぶっき Library... 季節の記憶 (保坂和志)

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季節の記憶 (保坂和志)

フリーの編集者=主人公=語り手の日常と思索が淡々と綴られています。体系だった思索ではなくて、日々の出来事に交えてエッセイ風に語られます。

この小説では何も起こらなくて、散歩してお話して食べてるだけ。ドラマとしての求心力は無い代わりに、主人公ののどかな日常とか息子や友人たちとの交流はなかなか快適です。緩やかな時間の流れが文体から伝わってきます。
でもマッタリ心地良いだけではなくて、作者の人間観察の鋭さが感じられるし、それが一切トンガラないでナチュラルに織り込まれているのは巧いと思いました。
ときめく要素は乏しいけれど、心地良く確かな手ごたえ。

でもねぇ、何も起こらないのは良いとしても、登場人物の口を借りてのエッセイ風の展開は興醒めでした。表面上の演出はナチュラル志向なのだけど、登場人物たちが意見を交し合うあたりは作り物めいていて白々しい。せめて、小説内の出来事を通して読み手が実感できるような仕掛けが欲しいところ。

主人公の思索は正体不明な自己肯定に立脚していて、つまり自分を相対化していなくて、一方的な前提に基づいていたり独善的な論理の飛躍・決めつけと感じられる部分が多々あった。わたし的には知的な面白さも説得力も感じられなかったし、ちょっとイライラしました。
せめて、小説内の出来事を通して読み手が実感できるような仕掛けがあれば、考え方に賛同できなくてもフィクションとして楽しめたと思うのですが・・・

というわけで、人間の描き方とか独特の雰囲気・気分には魅力を感じたけれど、読後感はイマイチでした。

じゃ、そういうことで。
kisetuxkioku.jpg
  1. 2006-05-02 01:01:50
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