古川日出男とは相性が悪そうなので、『アビシニアン』で読むのを止めようと思っていたのですが、やけに評判がいいので、魔がさして本書を手に取ってしまいました。が、結果は案の定でした。
犬たちが主要な役割を果たすリアル系(ファンタジーや戯画的な風刺小説では無い、という意味で)の物語となると、彼らの実体感をどう表現するのか!?に注目してしまいます。
ところが、この作品は安直に犬に人間流の思考をさせていて、しかも思考内容は、子供時代に少年漫画誌で読んだことがあるようなベタな擬人化。極端に人間臭くなっているわけじゃないけど、文学的創意みたいなものは感じられなくて、肩透かしでした。
もっとも、ここまでの作品で示された筆力から考えると、客観描写だけで動物の実体感を生み出すのは難しそうだから、この作家にとっては妥当な選択なのかも。
勢いのある独特の文体は個性を放っているけれど、たとえば《老人だった。年老いた男だった。》みたいな安直な言いかえとか反復が目白押し。話し言葉なら(芝居のセリフみたいな)ともかく、書き言葉である小説の言い回しとしては安っぽく感じられます。
これはひとつの例で、個性的な文体の使い手だけにこだわりがありそうだけど、言葉に対するセンスは好きになれません。
もともと精密な設定とかリアルな描写で勝負するつもりはなさそうだから、その意味で自分の批判が的外れであることは承知しているつもりだけど、それでも否定的になってしまうのは、(わたしから見て)失われたモノを補うだけのプラス要素が感じられないから。これは相性なのか?似たような小説が氾濫する中、強い表現意欲を持った魅力的な作家だとは思うんですけどね・・・

- 2006-05-02 01:00:57
- 古川日出男
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