長大な作品で、奇想が充満していて、饒舌かつ勢いのある文章は読む者を圧倒します。天性の作家と思わせるパワーが伝わってきます。
でも素晴らしいのはここまで。
各エピソードは、着想は新奇で面白いのだけれど、話が膨らんでいかない。文章は活き活きとしているけれど、その中身はいたって説明的で、読み手の感性に浸透してこない。
たとえばヒロインの羊子のダンスは見る者に強烈に作用するという設定なのだけれど、伝染・増殖していく過程がエピソードとして時系列的にダラダラ語られているだけで、ダンスの魔力もそれが引き起こしたうねりも文面からはまったく伝わってこない。
そしてキャラクターも設定の面白さで終わっている。キャラそのものは立っていないし、主役の二人がちゃんと絡まないから、ドラマとして今ひとつ盛り上がってこない。
文体はとても面白いけれど、言葉の選択がかなり雑で、個人的には好きになれませんでした。
結局、耐えられなくなって、後半は斜め読みになってしまいました。
もしこの作家が、マシンガンのような饒舌さを抑えて、描写力と構成力を主体に勝負したらどうなるのでしょう?

- 2006-05-02 00:59:59
- 古川日出男
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