ぶっき Library... 仮往生伝試文 (古井由吉)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

仮往生伝試文 (古井由吉)

この作家は芥川賞、谷崎賞を初めとした主だった純文学系文学賞を総なめし、先年まで芥川賞の選考委員を務めていた重鎮的存在です。玄人筋での評価は極めて高いようですが、絶版率が高く、この作品も最近復刻されました。
『作家の値うち』(福田和也著)が最高評価を与えたことが一部で話題になったとかならなかったとか…

山っ気もサービス精神もなく、死(往生=肉体の死ではないのだけれど)に対する思索が13の切り口で自由かつ等身大に綴られています。往生伝の絵解きあり、日記あり、エッセイあり、短篇小説(ないしはその断片)ありとさまざまな形式を気儘に行き来しており、一見バラエティーに富んでいて楽しそうですが、取りとめがつかみにくく、難解さにつながっています。
文章も同様で、練達の文であることは歴然としていますが、読者に歩み寄ろうという気配は微塵もなくて、言い回しが自分の中で完結していて、説明不足だったり、古語を無造作に交えたりと超マイペース。幸い日本語は表意文字なので意味は何とか汲み取れますが、鬱陶しいことこの上ありません。そのうえに歯切れが悪くてシンネリした調子。簡単にいうと、異形の日本語。

どこまでもマイペースな作品ですが、こちらから歩み寄ることが出来るなら、表向き淡々として静かでありながら、狂気や恐怖がそこはかとなく漂う、奥行きのある精神世界にどっぷりと浸れます。往生に取り付かれた人間の狂気が作中で何度も語られていますが、それを語るこの作品そのものが作者の静かな狂気を表していて、それを自覚しながら耽っているような趣があって、おそらくここが味読のポイント。だからこその無造作なスタイルなのでしょう(と言っても、計算というよりは、意図的にあるがまま垂れ流している感じ)。
読了後も複数の場面が脳裏から離れないのは、ヒタヒタと迫ってくるような異様な息遣いゆえと考えます。

作品としては歪で不恰好で晦渋なわけで、作品世界にどこまでシンクロ出来るか、多様で融通無碍な怪物的表現力に魅力を感じられるか、に尽きそうです。
凄いとは思いますが、通り一遍な傑作というのではないし、この作家の作品は他に4つ読んでいますが、『仮往生伝試文』は古井作品としても特異な存在と思われます。

たぶん死をまったく意識していない年代の人には響きにくいだろうし、それを意識する年代でも(今となっては)独特の死生観ゆえに作品世界に入り込める人は限られるだろうし、かと言って無造作すぎてフィクションとして(あるいはノンフィクションとして)突き放して読み切るのはきつそう。ということはかなりターゲットが狭いわけで、絶版は当然の帰結でしょうか?
わたし自身、初読の時はまったく受け付けなくて(数ヶ月前)、ふと思いついて再度手に取ってみたらやけにスイスイと読めてしまって(楽しんだとは言えないけれど・・・)、我ながら驚いています。
karioujodensibun.jpg
  1. 2006-05-02 00:57:47
  2.  その他の作家
  3.  |
  4.  Trackback(0)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/151-59021571
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。