ぶっき Library... 亡国のイージス (福井晴敏)

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亡国のイージス (福井晴敏)

魅力的な人物設定と描写、壮大で二転三転しながらも破綻を見せないストーリー展開、痛烈で迫力のあるメッセージ性と、読み応えのある力作です。コンセプトとかストーリーは使い古されたものですが、時事性と、丹念な人物描写と、詳細な軍事設備・機器の描写のおかげで、鮮烈な印象を受けました。

小説にせよ映画にせよ、日本人の手になるアクション巨編には、感傷的な描き方に辟易することが多いです。日本人のメンタリティを盛り込もうとする意図は分かりますが、厳然とストーリーを展開させてこそ感傷が活きるわけで、作り手自身が感傷に身を任せてしまうと、作品全体が嘘っぽく安っぽくなってしまいます。
そういう見方をするならば、この作品はけっこう危ない橋を渡っていて、何と言っても乗っ取りの主犯宮津艦長の人物造形が危なっかしいです。どうせ日本の防衛上の矛盾点を題材にするならば、宮津艦長のキャラに一本芯を通して怨恨ではなく信念で行動させることで、テーマに内在する矛盾点・対立点を鮮やかにして欲しかったです。作者は敢えて日本人の脆弱なメンタリティを描きたかったのかもしれませんが・・・
でも、北朝鮮の工作員のキャラのおかげで全体が引き締まっていますから、危ない橋を無難に渡りきっていると思います。

作法上気になったのは、全体的に冗長な描写。
軍事設備・機器をいくら詳細かつ丁寧に描写しても、そうした分野に関心が乏しい読者にはイメージが湧きません。その種の描写を読み重ねるに連れて徒労感が募るし、スピード感・緊迫感に水を差されます。作者の知識の裏付けと十分な準備に感心しましたが、原稿に落とす段階では斟酌して欲しいものです。文字による情報伝達には限界ないしは得手不得手があります。そのことをどの程度作者が知悉しているのか疑問に感じました。
人物描写も同様です。ストーリー展開の中途に各人物のプロフィールやエピソードがしばしば挿入されます。この丹念な人物描写は確実に作品全体に深みと説得力をもたらしています。しかし、過ぎたるは及ばざるが如しと感じました。その都度ストーリーの流れが滞るし、あってもなくても面白さや感銘に影響しないプロフィールやエピソードがかなりあると思います。
後ろの四分の一は重厚かつ迫力のある筆致に翻弄されてしまいましたが、そこに至るまでの重たい足取りには辟易させられました。

非常な力作であり、二転三転する壮大な物語をまとめ上げた作者の手腕は半端でなく凄いと感じましたが、冗長な描写からくる読み辛さは残念でした。
boukokuxejis.jpg
  1. 2006-05-02 00:55:32
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