ぶっき Library... シンセミア (阿部和重)

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シンセミア (阿部和重)

《作品のポジション》
この作家の作品中ではブッチギリの大作です(単行本で2冊)。
限られた場所での比較的短期間の出来事が濃密に描かれています。
特定の人物に視点を置かず、不特定多数の人物が描き分けられています。いわゆる群像劇。

別掲の『ABC戦争-plus 2 stories』『インディヴィジュアル・プロジェクション』では表現することへのこだわりを色濃く作品ににじませていた阿部氏ですが、『シンセミア』のアプローチは至極オーソドックス。技巧的な冒険抜きで、古典文学のような足取りで人物や出来事の丹念な描写が連なっていきます。人物を造形し物語を構築する、という基本的な部分での実力や持ち味が素直に表れた作品と言えそうです。

《個性的なタッチ》
わたしが個性として最も強く感じたのは、観察記録か何かのような人間を突き放し切った目線と、それがもたらす乾いた、というか金属のような硬質で無機質的なタッチ。この方向で高度に洗練されています。情緒的な演出は一切排除されていて、読者が感傷に浸ることを許しません。その一方で、頻出するエロや暴力シーンは一段と殺伐として感じられますし、人間の綺麗ごとではない生命力が印象的に描かれています。

《群像劇として》
こういうタッチは嫌いではない、と言うよりわりと好きなのですが、オーソドックスな群像劇との相性は良くないと感じました。
というのは、同時並行で多数の登場人物に感情移入しながら、最終的に作者が考えるところの人生観とか世界観とかをズシ~ンと受けとめるところに群像劇の醍醐味があって、シリアスあり、笑いあり、涙ありの硬軟併せ持った演出が不可欠。確かに場面としてはいろいろ用意されているのですが、一貫して硬質なタッチが演出意図を裏切って(特に親子や夫婦の情愛)、単調さに堕しています。

《というわけで・・・》
この作家の非凡な筆力は遺憾なく発揮されていて、注目作ではありますが、技術的チャレンジのスリルは無いし、群像劇の面白さもいまひとつで、正味のところ、そんなに面白くも、楽しくもありませんでした。
sinsemia.jpg
  1. 2006-04-30 00:37:09
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