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こころ (夏目漱石)

『こころ』は、人間のエゴを巡る悲劇、という仕立てになっていますが、悲劇の主人公である「先生」の言動を追う限り、人間的に幼稚で自己本位に感じられます。
そもそも人間なんて葛藤の権化で、心の中には相容れないいろんな衝動やら感情やらが渦巻いていて、思い悩みながらそれらに折り合いをつけていくのが生きるってことじゃないですか。
そういう当たり前を弁えない生き様・死に様を悲劇として描かれてもですねぇ・・・
また、妻に対しての、愛情と幼児的な依存とが履き違えられています。時代の風潮から抜け出せていないだけなのか、作者固有の理由があるのかは判断しかねますが。
近代日本文学の代表格の1つ、と期待して手に取っただけに、この人間観・人生観には失望を覚えました。「この程度だったの・・・」みたいな。

新聞連載という経緯が関係あるのかどうかは分かりませんが、構成にも不満を感じます。第3部に当たる「先生」の手記は読み応えがありますが、それに先立つ部分は、描写としては優れていても、構成上は冗漫です。

内容・構成ともに不満足ですが、素晴らしいのは文章。平明で滑らか文体はスンナリと入ってきますし、雰囲気豊か。地の文と会話のコンビネーションが絶妙だし、「先生」の手記の後半は淡々としていながらかなりのドライブ感。この文章は後世に多大な影響を与えているのでしょうね。これだけでも、この作品を読む価値はあると思います。

この作品、その一部分を高校の教科書で読んだ記憶がありますが、現在でも収録されているようでビックリ。日本文学を代表する作品という扱いなのでしょう・・・


《念のための補足》

上で、「先生」が人間的に幼稚で自己本位だと決め付けましたが、念のために、その心を以下に。

「先生」は親友を出し抜いて恋人を手に入れるものの、その親友に自殺されてしまいます。「先生」の行動は、誉められないとしても、ありがちと言えばありがちで、この程度で死んでしまう親友の方に問題があるでしょう。結局、「先生」は自分の行いよりもはるかに大きな罪悪感をしょいこんでしまいます。

ここまでは同情の余地がありますが、問題はその後の生活。

「先生」は件の恋人と結婚しますが、罪悪感ゆえに、定職にはつかない、酒に溺れる、散々奥さんを心配させた挙句に、明治天皇崩御を口実に自殺してしまう。甘え過ぎでしょう。
しかも、遺書には、これまで妻のために生きてきた、妻のために自殺の理由は伏せておきたい、などと自己本位な御託。本当に愛情を持って妻の幸せを考えれば、こんな言葉は出てこないはず。散々不幸な目にあわせながら・・・
kokoro.jpg
  1. 2006-05-02 00:38:55
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コメント

こんばんわ。
少し前に『こころ』を読みました。
乃太朗さんの書評を発見したのでTBさせていただきました。が、中々に正反対の感想で/笑。
確かに『先生』は自己中心的でありますよね。周りの心痛に思い至らない部分があるというか…。

私は悲劇のあたりを、倫理的に生まれ、倫理的に育ち、それでも倫理的に暗かったという所に感じました。
完全自己中の傍若無人にもなれず、かといって染み付いた倫理的要素を使いこなせない、そのアンバランス。

こういった感想の違いなんかを見つけられるのも楽しいことだなあと思いました。
  1. romi  
  2.  
  3. 2008-08-24 01:36:10 
  4. #sZpm1ECI 
  5. [ 編集]

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