ぶっき Library... 家守綺譚 (梨木香歩)

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家守綺譚 (梨木香歩)

一昔前(いわゆる近代)の日本を舞台に、現実半分、幻想半分くらいの一種のファンタジー小説です。長編としては短くて、28の章から構成されており、各章は時系列的につながっているけれど、主要な登場人物と大まかな流れさえ押さえていたら、ランダムに読んでも楽しめそうな、緩やかなつながりです。

貧乏生活を悠々自適におくる物書き(ライター)が語り手で、ファンタジー色抜きでも浮世離れした雰囲気ですが、そんな主人公が日常生活で行き会う、とらえどころのないような、それでいて懐かしいような不思議な出来事が各章ごとに語られていきます。怪異が身近にありふれた出来事としてさりげなく語られているのがポイントで、ほどよくボケた主人公が作品世界と読者の橋渡し役として効果的に機能しています。巧いかも。
さらに各章ごとにお題としてさまざまな植物が絡められていて、雰囲気は満点。
文体も中身に相応しくて、平明でよどみなく流れる文章には静謐感があります。読み始めるや否や独特の空気に押し包まれます。
こじんまりとしているけれど、独自の世界があって、それが高い洗練度で演出されています。

蜃気楼みたいな作品世界なので、本を閉じると同時に作品世界もフッと消えてしまうようにはかなくて、先へ先へと駆り立てられるような推進力は無いし、仮に半分の14章構成だったとしても印象にさしたる違いはなかったであろう、という意味では、手ごたえを求めて読むよりは、癒しを求めてしばしノスタルジックな幻想に浸るための本かな。
yamorikitan.jpg
  1. 2006-05-02 00:37:25
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コメント

ウノチヨ。さん、はじめまして!
TB&コメントありがとうございます。
記事を拝見しました。確かに新潮文庫の装丁とフィットしますね(笑)
今後ともよろしくお願いします。
  1. ひねもじら 乃太朗  
  2.  
  3. 2006-10-03 17:06:59 
  4. #mQop/nM. 
  5. [ 編集]
ひねもじら 乃太朗さん、はじめまして。

>本を閉じると同時に作品世界もフッと消えてしまうようにはかなくて

この感覚、分かります!
でもそれがまた悪くないんですよね。
文庫版家守綺譚の購入を機に感想をあげてみました。
TBさせてください。他の書評も今から読ませてもらいますね!
  1. ウノチヨ。  
  2.  
  3. 2006-10-02 21:49:12 
  4. #PTKUgxVw 
  5. [ 編集]

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家守綺譚
家守綺譚 梨木香歩著これはもう大好きです。著者の本は『西の魔女が死んだ』を読んだ事があったはずで、それもおもしろく読んだ覚えがあるのだけれど、こちらの方が数段好みだ...
  1. slow match    
  2. 2007-10-12 02:00:11  
梨木香歩【家守綺譚】
江戸時代と明治時代の境目で、人々はどうやって気持ちを切り替えたんだろう?私がその時代に生きてたら、「皆さん、今日から明治時代です! 洋服を着ましょう!」と言われても、意地になって着物を着つづけるかも。周
  1. ぱんどら日記    
  2. 2006-10-12 16:10:06  
家守綺譚 文庫
単行本『家守綺譚』の装丁が素敵だったので文庫本にも期待していました。神坂雪佳の雪中竹。うん、及第点。でも表紙を剥ぎ取ったその佇まいもまた、良い。期せずして新潮文庫の葡萄のロゴが、意味深に見えます。
  1. フウミゼッカ。    
  2. 2006-10-02 21:50:06  

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