ぶっき Library... ABC戦争 - plus 2 stories (阿部和重)

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

ABC戦争 - plus 2 stories (阿部和重)

初期の作品集ということで、『ABC戦争』『公爵夫人邸の午後のパーティー』『ヴェロニカ・ハートの幻影』の3篇が収録されています。単行本としては別個に出版されていたようです。

この作家の作品集を読むのは別掲の『無情の世界』に続いて2編目です。エンターテイメントとしては『無情の世界』がずっと洗練されていますが、この作家のスタンスが如実に現れているのはこちらの作品集です。全体としては面白いというよりも刺激的でした。

小説を書くことはミュージシャンの即興演奏とは根本的に異なるはずですが、想像とか思考のために膨大なエネルギーが傾注されるはず。阿部氏の関心はこのダイナミックなエネルギーを作品に映し込んでいくことにあるようです。こういうアプローチは阿部氏のオリジナルではありませんが、露骨さとあざとさの点では際立っているかもしれません。わざとプロットを破綻させてエネルギー感を強調する程度のことは日常茶飯事。でも、この露骨さとあざとさはこだわりとも言えるわけで、こうした言葉やそれを使った表現行為へのこだわり方は純文学的なのかも。

【ABC戦争】
筋立てとしては高校生たちが繰り広げるドタバタ劇が描かれていますが、実はこれは見せネタで、作者の狙いは言葉と言葉を使った表現行為に対するスタンスを表明し、かつ実践して見せることにあるようです。

冒頭の一割ほどが総論で(といっても章分けはされているわけではない)、作者のスタンスが激しい言葉遊びを交えて分かりにくく(?)提示されます。前述のように理路整然とした静的な説明は作者の好むところではありませんから。
次いで、総論で述べた理屈に基づいて5年前に高校生が記した手記が読み解かれていきます。そして最後にオチがあります。つまり、語り手による語り(=この作品)自体も言葉を使った表現行為に過ぎないことが示されます。

肝心の総論の内容に触れていないので、未読の方には意味不明ですよね。一見おふざけ調でありながら、その実シリアスに作者のよって立つところが表明されています。そこのところは実際に作品を読んで確かめていただくしかありません。
テーマが抽象的である上に、言葉遊びが激しすぎて悩ましいです。言ってみれば文芸オタク色が濃厚なので、そういうのを受け付けない人は読解力を云々する以前に読解しようとする気力が萎えてしまいそうです。
斯く言うわたし自身ブログのために出血サービスで作者の意図を解釈してみましたが、ぶっちゃけウザかったです。

たとえ見せネタであるとしても、高校生たちのドタバタ劇はなかなか楽しめました。電車の車両内で罵声と、関節を鳴らす音と、靴を鳴らす音が入り乱れる場面や、バビブベボの暗号話法のバカバカしさには思わず笑ってしまいました。青春小説っぽい爽やかさも切なさもありませんが、あの年代特有の中味の伴わない気負いみたいな感覚が面白おかしく描かれています。

【公爵夫人邸の午後のパーティー】
2つの物語が関連性をぼかされたままに進行し、最後で1つにつながります。理屈っぽい『ABC戦争』とは対照的に、バイオレンスありアクションありの娯楽系。ワンセンテンスが引き伸ばされた粘っこい文体は独特ですが、全体としては普通に楽しめました。パワーとエネルギーを感じさせつつオチも奇麗に決まっていますが、他の2作品と比較して平凡に感じられるのは皮肉かも。

【ヴェロニカ・ハートの幻影】
この作品は無理矢理こじつけでもしない限り辻褄が合いません。作者自身もそのように発言しています。かと言って、冒頭で述べたようなエネルギーの圧力は、弱くはないとしてもセールスポイントにはなりえていないと感じます。結果としてイタズラに読者を混乱させるだけのお騒がせな作品に終わっています。よきにつけ悪しきにつけ・・・
abcwar.jpg
  1. 2006-04-30 00:36:25
  2.  阿部和重
  3.  |
  4.  Trackback(1)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

   

コメント

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://notaro.blog64.fc2.com/tb.php/12-f9b9fbd2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

ABC戦争 plus 2 stories
ABC戦争 plus 2 stories 阿部和重著plus 2 storiesというくらいなので、単行本の『ABC戦争』と『公爵夫人邸の午後のパーティー 』に収録されている2作をひとつにした、3作からなる著者の初期短編集。2冊の単行本より、
  1. slow match    
  2. 2007-05-12 15:04:42  

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。