ぶっき Library... 2007年03月

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



漢方小説 (中島たい子)

31歳の未婚女性の屈託と目覚めが軽やかに描かれている。

原因不明の不調で救急車のお世話になった主人公は、病院をはしごするうちに漢方に出会う。漢方を知るにつれて、主人公は、変化を恐れ、その恐れを克服しようとしていた自分に気づき、変化を受け容れる生き方に目覚める。
目新しさは無いものの、なかなかいいお話。

物語の軸である主人公とイケメン漢方医(?)との絡め方が淡いとか、全体に人物の存在感が薄いとか、ドラマとしての密度・濃度は乏しい。ただ、この薄さ・軽さはプラスともマイナスともとりうる。判定は読者のポジションに左右されそう。
というのは、この手の小説(とある属性の人物を等身大に描くタイプの小説)では、主人公に近い境遇の読者はもともと作品世界に同調しやすいから、重苦しいテイストだともたれてしまいかねなくて、むしろ『漢方小説』の軽さは好ましいかもしれない。
おそらく、そんな読者を念頭に置いた作品だろうから、だとしたら、的を射た出来栄えと言えそう。

小説の中身によっては軽さ・薄さが弱点になりうる気がするし、個人的にはこの作品でもちょっと気になったけれど、総合的には、日常の中での何気の無い出会いと心の変化が、簡潔かつ軽やかに描かれた快作、といえそう。
kanpousyosetu.jpg
オンライン書店ビーケーワン

  1. 2007-03-26 18:53:44
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ドライブイン蒲生 (伊藤たかみ)

久々の読書は、2006年下期に芥川賞を受賞した伊藤たかみの短編集。『ドライブイン蒲生』『無花果カレーライス』『ジャトーミン』の3篇収録。

この作家の本は、以前に『指輪をはめたい』を読んでいて、読了したものの、気が乗らなくて(?)感想をアップしなかった。その作家が芥川賞受賞と聞いて、純文学系の作品を読んでみたくなった。

3篇とも家族のつながりが題材。一人称自分語りで、現在の出来事と、主人公=語り手が育った(破綻には至らないが円満とは言いがたい)家族の追憶が交錯して、最終的に家族のつながりを確認して終了、という流れ。
目新しさは無いと思うけど、感情移入の乏しい淡々とした語り口が特徴的、と言えなくも無い。

伊藤たかみが一角の純文学作家であることは分かった。が、とりたてて印象的とは言いにくい作品群。
素直に仕立てられているから読みやすいけれど、こちらが歩み寄って耳をそばだててやらないと伝わってこない面倒臭さがある。

たぶん作者にとって思い入れのあるテーマなのだろうけれど、読者がみなそのことに同じくらいの強度で関心を持っているわけではなくて、だからこそ読者を作品世界に引きずり込む臨場感とか訴求力が期待されると思うのだけれど、その種の力強さは感じられない。主人公=語り手の心境が、頭で理解できても、心に染みてこない。
スタイルとしての簡潔さ、淡白さは理解できるけれど、それとこれとはたぶん別の話。

というわけで、いやな感じはないけれど、ちょっと物足りない。
さて、芥川賞受賞作はどんなだろ?

本の感想は久しぶりなせいか、うまく書けない・・・

driveinngamou.jpg
オンライン書店ビーケーワン

  1. 2007-03-22 21:57:50
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