ぶっき Library... 2006年07月

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



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平成マシンガンズ (三並夏)

史上最年少15歳で文藝賞を受賞した作品。もっとも、青田買い路線を推進する文藝賞における史上最年少にどのくらいの価値があるのか?

15歳にしてはよく出来ている(ような気がする)けど、それを考慮からはずしてしまうと物足りない、なんて月並みな感想、読まなくても言えてしまいそうな感想を書くのは美意識(?)に反するのだけれど、結論はそんなところ。

「やるな!」と感じたのは、主人公の疎外感と疎外されていくプロセスで、臨場感がある。いや~な感覚がこっちにも届いた。15歳でこれが出来るというのは、随分達者だと思う。

キャラ造形とかストーリーテリングは、プロの作家の作品としては弱点になるのだろうけど、作者の意志は伝わってくるし、破綻は感じない。

一味違うのは、この小説に描かれている主人公の内面の変化は、一般的な見方をすれば成長なのだけれど、主人公も作者もその変化を肯定的に捉えていない、という点。大人の作家なら“成長に伴う甘酸っぱさ”的な化粧を施しそうだけど、執筆時点で中学生であった三並夏は、苦痛を伴う戦いとして息苦しく描いている。
そのことは、マシンガンという喩えともども、作者の幼さ(過渡的な精神状況)を表しているから、突っ込みどころになりうるけれど、わたし自身は等身大(作者-主人公)の感覚を好ましく感じた。変に背伸びされるよりよっぽど良い。
かつて森田公一が歌ったように「青春時代が夢なんて、後からほのぼの思うもの、青春時代の真ん中は、胸に刺射すことばかり♪」なわけで、なっちゃん(?)は今まさに青春の真ん真ん中!

物足りないのを承知の上で(他のプロフェッショナルな作家さんたちと比べて)、ミーハー的な興味から手に取った。そういう本にこまごまと突っ込んでいたら心がすさんでくるので(笑)、いいと思った点を重点的に記述したけど、結論は冒頭の通り。
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  1. 2006-07-30 19:16:38
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砂の女 (安部公房)

「恋愛は素晴らしい」とか「友情はかけがえが無い」みたいなシンプルなテーマなら、物語に落とし込むのは相対的に容易なはず。
これが、「恋愛は素晴らしい」→「しかし度を越えると〇〇になる」→「なぜなら恋愛とは〇〇だから」→「よって、われわれは〇〇な恋愛をすべきではないか?」みたいに、複数ステップを擁するテーマになってくると、それなりに工夫が必要になるはずで、作家の腕の見せ所だし、どんな種類の知性と感性の持ち主なのか、なんてことが作品に表れる。


ミステリーとかファンタジーとかSFのようなジャンル色の強い範疇では、地の文やセリフの中でベタに語られてしまいがち。個人的には芸が無いと感じることもしばしばだけど、それぞれのジャンル固有のミッション(謎解きの楽しみとか、空想の楽しみとか)があって、それが最優先だから仕方が無い。


純文学系の作家たちにとってこの分野は主戦場のひとつで、物語のプロセスにおいて地の文なりセリフでテーマを説明する、みたいなベタなことはしないで、工夫を凝らし技を尽くす(例外はあるだろうけど)。
このブログで採り上げた中では、村上春樹のメタファーとか、保坂和志の思索主導の展開なんかは典型的で、彼らの域にまでくると、技巧への意識がテーマ性を凌駕していると思えるほど。

技巧の複雑さが一定レベルを超えるとパズルっぽくなって、繰り返して読まないと、またはメモをとりながら読まないとテーマにたどり着けない、なんてことになって、ちょっとウザくなる。物語の楽しみとは別種の、知的なパズルを解く楽しみに近づく。たとえば、村上春樹の『海辺のカフカ』『アフターダーク』あたりは、この種のゲーム性に大きく傾斜している。良し悪しは別にして。

個人的には、知的パズルとしての側面を持ちつつも、それは巧妙に物語の流れに織り込まれていて、物語の展開につれて自然にテーマに誘導されていくようなタイプが、一番気持ちよく読める。
一通り読んだところでテーマの大半が汲み取れて、ポイントを確認がてらの再読でほぼ斟酌できる、くらいが、インパクトが直接的で、脳ミソがいい感じに刺激される。

丁度いいころあい、というのは人それぞれなのだろうけれど、わたしがすんなりとはまれるのは、遠藤周作の『沈黙』とか安部公房の『砂の女』あたり。


砂丘に穴を掘って生活する貧村に囚われた男の物語。

非現実的かつ異様な状況が、徹底してリアルに描かれている。臨場感タップリで、難なく主人公の立場に身をおくことが出来る。
序盤から中盤は主人公の言動に身を任せていたけれど、終盤に至って考えさせられた。
安部公房が突きつけてくるのは、われわれ現代の日本人が心の拠り所と看做しているものに対する疑い、問い。それはいささかシニカルな口調で発問されているから、こちらは不安を覚えるけれど、純粋な問いかけであり、答えは読者一人一人に委ねられている、と思う。


わたしにとって『砂の女』は“シュールな状況設定+リアルな描写”型小説の一大基準です。
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  1. 2006-07-26 22:36:49
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クワイエットルームにようこそ (松尾スズキ)

第134回芥川賞候補作。なので純文学かと思ったけど微妙。饒舌な語りは純文学風と言えなくはないけど、人物の描き方とかストーリーは完全にエンタメ。『文學界』に掲載されたということで芥川賞ノミネートなのかも。
もちろん純文学でなくてもまったく問題なくて、実際楽しませてもらった。

主人公はフリーライターの女性で、(本人にとっては)ひょんなことから精神病院の閉鎖病棟に強制入院させられてしまう。

彼女の語りは饒舌で、語られる内容には精神科的な意味でのグロさがあるけれど、そのわりに語り口に狂気が感じられなくて、むしろ読み手に対するサービス精神が旺盛。良くも悪くも、作者のエンターティナーとしての資質が前に出ている。
当人に自覚が無いとは言え、薬物の過剰摂取は事実だから、狂気の片鱗か、あるいはそれに対する恐怖感、なんてものを語り口ににじませてくれると嬉しかった。

それ以外の点では満足。舞台や映画を手がけているから話し言葉で物語を構築するのはお手の物だろうし、エンターテイメントの最前線で活躍している人らしいツボを押さえた演出が楽しい。
個性的で面白いキャラクターが続々登場するし、ひとり語りや会話の面白さもバッチリ。あちらこちらで笑えて、程好く毒があって、心温まる展開もあって。とてもよく出来た娯楽作。

でも、冒頭のゲロのシーンは気持ち悪い。こんなシーンばっかりだったらどうしよう!?と不安に駆られたが、幸いにして杞憂だった。
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  1. 2006-07-21 08:36:24
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遮断 (古処誠二)

第135回直木賞ノミネート作品(受賞は逃しました)。評価が高いようなのと、ノミネート作品中これだけが図書館の予約待ち不要だったのとで(ということは不人気作家か???)、さっそく借り出しました。さっそく、といっても、既に直木賞の授賞は発表されましたが・・・


特別養護老人ホームで孤独に死を迎えんとする男が、一通の手紙を手に、昭和20年、第二次大戦末期、沖縄防衛戦での極限状況を回想します。

手紙の一文一文とエピソードを交互に読ませるとか、ストーリーが二重に捻られているとか、なかなか演出巧者ですが、文体のタッチのせいか、ぶっきらぼうな印象を受けます。無造作というのではなくて、飾らず、煽らず、無駄口を叩かない。それが、作品の中味とぴったり調和しています。


今、こんな風にリアルに戦渦の人間が描かれた小説をどう読めばいいのだろう? 自分は現実の戦争を経験していないが、両親は幼少の頃にそれを体験している。そして今、北朝鮮がミサイルを飛ばし、国の偉い人たちは「敵基地攻撃論」を口にしている。戦争とは、遠いような、近いような、距離を測りにくい対象。だから、この本に対して、訳知り顔に戦争の怖さに同意することも、小説の状況設定と割り切ることも出来ない。

でも、この小説にあるような極限状況は、意外と身近にあるのかもしれない。学業の振るわない息子に父親が拳で制裁を加え、その息子は家族を焼殺して逃亡する。この小説に描かれている出来事にとても近い。

遠い過去の出来事として、あるいは起こるかもしれない未来として、ではなく、現実として、現実に引き寄せて読んでしまいました。そのように読むことは可能だし、だから戦争に興味が無い人にも読む価値はある、と思います。たぶん作者にもそういう意識はあって、富士山のたとえ話なんかは、今を生きる日本の読者に対するメッセージとも読めます。


ぶっきらぼうな文体は、あるいはとっつきにくい雰囲気を出しているのかもしれない。ストーリーは捻られているけれど、渋くて地味な展開。単なる娯楽として読むには、ちと重いかも・・・でも長編としては薄いし、キビキビと進行するので、もたれる重さではありません。
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  1. 2006-07-19 17:39:25
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天空の蜂 (東野圭吾)

デビューから10年目、1995年に発表された大作。大型社会派サスペンスとでも申しましょうか。この人の作品の中では異色と思われますが、3年がかりで書き上げられた渾身の作であり、東野作品の中で最も好きな作品の1つです。
そりゃあ、この作家らしさを追求するなら『白夜行』でしょう。『天空の蜂』は、編み目の揃ったディテールは“いかにも”な仕上げの良さだけど、東野圭吾らしさという意味での純度は落ちます。でも、個人的に、読んでいてテンションが上がるのはこっち。

かなり分厚い作品で、原子力発電所に自衛隊の大型ヘリを落下させることをネタに日本政府が脅迫される、という大掛かりな設定です。作品の中で経過する時間は10時間ほどで、これを一気に読まされてしまいます。密度の濃い緊迫感が味わえます。

この作家らしく、冒険とかスペクタクルよりは、犯人探しや駆け引きの面白さに軸足が置かれていて、その方向で読み応えがあります。理知的で抑制されたタッチゆえに、大掛かりなわりにパワー感は控え目。スペクタクルなシーンは少ないし、ド派手な演出ではありませんが、見世物っぽいケレン味が乏しいぶん(というか、それに頼っていないぶん)、リアリティは高いです。男のドラマとしての味付けもあって、ぶっちぎりのヒーローはいませんが、みんな何気にかっこよくて、手ごたえに不足はありません。

原子力発電に正面から深く切り込んでいて、社会派臭が強いです。それ抜きでも楽しめますけど。ところどころ記述が専門的に過ぎるのは欠点ですが、ウザければ流して読んでも問題ないし、とりあえず作者の勉強量に感心します。
テーマについての受け止め方は人それぞれでしょうけど、通り一遍に扱っていないのはこの人らしいです。いいとか悪いとか言う前に、まず我がこととしてちゃんと考えようぜ、というところでしょうか。


ところで、この作品に取り組んでいた時期を、東野圭吾はこんな風に振り返っています。
「焦ったときには遅かった。私の名前は読者にとっても評論家にとっても新鮮なものではなくなっていた。自分では力作を書いたつもりでも、はじめから注目されていないのだから、話題になりようがない。『天空の蜂』という作品を3年がかりで書いたときには、ペンネームを変えることさえ本気で考えた。
思えば作家になって一番辛い時期だったかもしれない。辞めたいとは思わなかったが、どうしていいかわからなかったのは事実だ。」

この作品の“らしくない”ところに迷いが表れているのかもしれないけれど、心に期するものが伝わってくる力作ではあります。
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  1. 2006-07-13 00:18:04
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『ある編集者の生と死-安原顯氏のこと』(後編)

前編はこちら

(村上春樹本人を美化しているファンはこの記事を読まない方がいいかも・・・)

というわけで件の寄稿の中味だけど、たかだか二段組16ページの短い文章なので、何かを断定するには心もとない情報量ながら、感情的にドロドロしたものが伝わってくる。

はっきり言ってこの文章は曲者。
二人の関わりや安原顯の人となりが、小説の匠の熟練した手さばきで、才能溢れる作家と型破りな編集者の愛憎のドラマ、として描き上げられている。
一読くらいだと、巧みな語り口に乗せられてすんなりと受け容れてしまいそう。でも、何だかもやもやした感触が残る。

文章から書き手の本音を探るなら、表現(言い回し)より論理に注目すべき。特にこの書き手は日本を代表する小説家。言葉巧みなことは、芸達者な美人女優の如し。言葉のニュアンスを変幻自在に操れるはず。でも、論理は論理として提示するしかない。

この寄稿は、故人(安原顯)を悼みながら、遺憾の念を静かに噛みしめるがごとき佇まいだけど、そういう装いを振り払って論理を追いかけると、なんだか不穏。


《不穏 その1》
この寄稿は、安原顯が悪意を持って原稿を流出させたと強く推断している。漫然と読んでしまうとそんな気にさせられるけど、悪意については根拠が薄弱。
確認できている事実は、本来中央公論社が保管しているはずの原稿が高値で取引されていて、それがかつて村上春樹が安原顯に託した原稿である、ということくらい。だから、安原顯が流出させたことは間違い無いとして、悪意を裏付ける事実は無いし、この寄稿から異なる仮説を導き出すことが出来るはずだけど(過失ないしは未必の故意の線で)、一顧だにされていない。
まことしやかに故人の悪意を語り、それを嘆いてみせるのは、フェアではないと思うのだけれど・・・


《不穏 その2》
文章のあちこちに安原顯をフォローする言葉が入っていて、パッと見一方的な糾弾には見えないのだけれど、実質的には人格も仕事もほとんど否定している(誉めているのは、陰口を叩かない、ということくらいかな)。しかも、仕事に関しては、日本の編集者すべてをこき下ろすオマケつき。
被害者として感情的になるのは仕方がないとしても、何ゆえこれほどまでに攻撃的なのか?


《不穏 その3》
その2と一部重複するけれど、安原顯との交流を振り返る過程で、執拗に文壇や業界関係者を否定・攻撃している。嫌いなものは嫌いで仕方が無い。でも、日本で本を出版しているからには、意識しようとしまいとそれらから何らかの恩恵を被っているはずで、なぜこんな風ににべ無く踏みにじる必要があるのだろう?
しかも、わたしは文壇が村上春樹を冷遇しているものと考えていたけれど、この寄稿から察するに、デビュー前から彼は文壇や業界関係者を嫌っていたようで、つまり喧嘩を仕掛けたのは村上春樹の側なのかも(無意識としても)。
確かに、谷崎賞や読売文学賞の受賞作家が業界から冷遇されているとは考えにくいし、授賞されていない芥川賞にしても、デビュー1,2作が続けさまにノミネートされ、3作目以降は芥川賞の選考基準に適合しないから、村上春樹の方が芥川賞を見限ったと言えなくもない。


というわけで、論理の流れを追っていくと、この文章はドロドロとした敵意の塊で、おそらく、あちこちに挿まれている安原顯へのフォローはポーズでしかなくて、完膚なきまでに打ちのめしている。巧みに思慮深さを装っているから、第三者(わたしもそうだけど)はすんなりと流してしまうだろうけど、故人にゆかりのある人たちや業界に携わる人々の胸には刃がぐっさり、という文章だと思う。
そういう意味で巧み。屈折した巧みさだけど。
象徴的なのが「結果的に励ましてくれた」の章で、建前として感謝しながら実質あれやこれやをこき下ろしていて、読んでて気分が悪くなる。


このブログをみていただければ分かるように、わたしは村上春樹のファンで、それはこの寄稿読了後も変わらない。むしろ実像に一歩近づけたようで満足。小説とは一味違う人間臭さを垣間見たような気がする。この人が公正さとか潔さにこだわるのは、内に荒々しい妄執や瞋恚を抱えている反動かなぁ?なんて妄想を膨らませてしまう。
ちなみに、優れた芸術家が高潔だとか人格者だなんてこれっぽっちも思ってない。むしろ、旺盛な創作力のエネルギー源として、渦巻く感情の動力炉があるのは自然なこと。 上で否定的な言い回しを使ったけれど、それは本心からだけど、いただけない部分もひっくるめて楽しめればOK。
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  1. 2006-07-04 08:09:51
  2.  村上春樹
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バスジャック (三崎亜記)

7編収録の短篇集です。

そこそこ楽しませてもらいましたが、こうして感想を文章にすると、微妙なニュアンスになりそう。

話題になった前作『となり町戦争』と同じく、現実社会から少しずつずれた感じの架空の世界を舞台とした、シュール(非日常的・超現実的)でリリカル(抒情的)な物語たち。

キャッチフレーズ(?)はシュール&リリカルですが、メインはシュール。7編ともシュールな設定で、うち4編(『しあわせな光』『二人の記憶』『雨降る夜に』『送りの夏』)は、程度の差はありますが、作品の味わいのかなりの部分を抒情味が負っています。

シュールな設定・展開については、到底精緻とは言えなくて、よく言えばライト感覚、悪く言えばゆるい。
たとえばトップバッターの『二階扉をつけてください』では、「二階扉」って何?という謎で物語を引っ張っていきますが、ナビゲーター役の主人公=語り手が能動的に突き止めようとしないから謎っぽいだけで(結末以前にそれを確認する機会がいくらでもあるのに・・・)、つまり設定の甘さをご都合主義の展開が支える、という造りになっています。ちなみに前作『となり町戦争』もまったく同じパターン。

というように、作品ごとにゆるさの種類・程度は異なりますが、総じてゆるめ。気合入れて読むとすかされます。
ただし、着想はなかなか気が利いているし、語り口には臨場感があって、(仕掛けのゆるさに)拘泥しなければ、それなりには楽しめます。

リリカルな表現は魅力的。やや甘口な文章ですが、端正な言い回しのせいか、節度があります。
もっとも、現時点で文体を武器にできるレベルにあるとは思えなくて、前述の2つの掌編『しあわせな光』『雨降る夜に』は実質的にリリカルな表現力の一発勝負ですが、もうちょっと濃やかで彫の深い表現・演出が欲しいところ。
でも、『動物園』のラストや『送りの夏』あたりではなかなかいい味を出していて、今後に期待します。

というわけで、7編ひっくるめて、わたしが感じた長所短所を並べてみました。
あいにくと、いいところばかりが集約された作品は見当たらなくて、だから個々の作品の評価は読み手の好みに大きく左右されそう。

結局、シュールな面も、リリカルな面も、なかなか魅力的ではあるけれど、今のところそのどちらにも突き抜けたものを感じられません。ただし、前作『となり町戦争』と比較すると、自分の持ち味を自覚した作品造りに向かっているような気がします。
このままシュール路線で行くなら、次回あたり、脳みそ絞り切るくらいにして造り込まれた本格的な長編を切に期待します。

ところで、心なしか偉そうなコメントになってしまうのは、作者が新人だからか?年下だからか?そういう意識は無いつもりですが・・・
busjack.jpg
  1. 2006-07-01 23:06:26
  2.  三崎亜記
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