ぶっき Library... 米澤穂信

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読んだものの感想を自由に。



秋期限定栗きんとん事件 (米澤穂信)

小市民シリーズの第3弾は、上下の2分冊。

このシリーズは、青春小説として人間模様を描く面と、ライトだけどそこそこ本格的なミステリーの面があると思う。

これの両立は難しいと思う。
というのは、ミステリー色を強めていくと、読者との駆け引き故に、登場人物の描写は抑制的になってしまうから。人間模様の描かれ方としては薄くなってしまいがち。
『秋期限定栗きんとん事件』は、わりと地で行っているかも。

事件の解決が、小鳩と小佐内の和解とか、「小市民」的でない自分たちを受け入れるとかにつながる展開はよく考えられていると思う。前作と同じパターンではあるけれど。
しかし、人間模様を楽しむには描かれ方が薄いので、読んでいて入り込めない。

上に書いた理由がなくても、そもそも人間描写が弱いのかもしれない。小鳩と小佐内がそれぞれ別の異性と交際するあたり、単に型どおり進行していくだけ。紋切り調で味気ない。
少なくとも小鳩の交際の方は、ミステリーの展開に関わっていないから、小説的にもっとおもしろくできるはずだと思うのだけど。

また、このシリーズにおける「小市民」の定義があいまいになりつつあるように感じる。クラスという集団に埋没することが「小市民」的であるというのは分かるけれど、たとえばクラスメートの顔と名前を覚えないことが「小市民」的なのだろうか?

もともと、二人が「小市民」でありたいと望む動機の描かれ方は弱かった。そのうえに、「小市民」の定義がグダグダになってきた感じ。





  1. 2012-12-30 20:06:11
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夏期限定トロピカルパフェ事件 (米澤穂信)

小市民シリーズの2作目。

これ単体で読むと、おもしろさも納得感もそれなりにある。

しかし、シリーズものとしてはどうなのだろう。「読者との駆け引き」と言ってしまえばそれまでだけど、それにしてもヒロイン?小佐内嬢のキャラの継続性に疑問を感じる。
シリーズ1作目を読んだ者にとっては驚きの展開になっているし、主役の二人の駆け引きはスリリングだけど、その代償に彼女のキャラが便利に使いまわされている感じで、ちょっとマイナス。

シリーズ物の魅力の中には、キャラの魅力の割合が大きいと思う。こういうことをやられると、次回作への期待感が微妙に揺らいでしまう。

まあでも、細かいところに目をつぶると、この作家のサービス精神は楽しい。
事件の真相解明が、そのまま小市民として生きようとする二人の暗雲につながっていく、という仕掛けはうまいと思う。



  1. 2012-12-14 02:06:12
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ふたりの距離の概算 (米澤穂信)

古典部シリーズの5冊目。

4冊目の『遠まわりする雛』はまだ採り上げていない。『遠まわりする雛』は短編集ですね。短編集は、個人的に読むのが面倒くさいし、感想の記事をまとめるのはもっと面倒くさい。だからスルーしました。いずれ記事にするかもしれませんが・・・

5冊目は、主人公たちが高校2年になっている。で、古典部に新入生を迎えるのだけどトラブル発生、というようなお話。

主人公が学校行事のマラソン中に真相究明を試みる、という仕掛けはトリッキーでおもしろい。まあ、主人公が解明できることは分かっているのだけど、「どうやって」という興味は湧く。
しかも、ヒロイン千反田がからむ人間関係のもつれということで、彼女のキャラを知るシリーズの読者としては、先行きが気になってしまう。
そこに、1学年進級した古典部の面々の人間模様みたいなものが散りばめられている。
さらに主人公の成長と言うか心境の変化が、シリーズの通奏低音のひとつになっている。

このシリーズ、ライトノベル感覚で読んできたけれど、造り込みはライトノベルを超えているかも。一作一作ていねいに作られている感じが伝わってくる。

ただ、「部分最適、全体不適」のまだるっこしさもシリーズに共通している。
とりあえず、トラブルの軸になる新入生のキャラが、思い込みが強くて面倒くさい。だから、彼女の側の真相が分かっても、どうでもいい感じ。そんな彼女がストーリーのエンジン役になっているので、読んでいて勢いがつかない。
キャラの感じ方は人それぞれだけど、シリーズの過去作でも、(話をおもしろくするための)ご都合主義の産物的な変なキャラが気になった。

もうひとつ。マラソン大会という舞台設定だから、ある程度はやむを得ないのかもしれないけれど、マラソン関連の描写は退屈で読み飛ばしてしまった。
思い出してみると、シリーズ3冊目『クドリャフカの順番』では、舞台設定の文化祭がしっかりストーリーに組み込まれていたから、読み飛ばすことはなかった。
それと比べてしまうと、本作でのマラソン大会という舞台の使い方は、通り一遍ということになるのかも。

古典部シリーズは、良いところも物足りないところも安定していて、トータルとしては楽しめる。主要な登場人物たちの今後もちょっと気になる。



  1. 2012-10-13 14:21:29
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クドリャフカの順番 (米澤穂信)

古典部シリーズ第三弾。舞台は文化祭。

最大の新味は、前二作が主人公による語りで一貫していたのに対し、本作では古典部員4人の語りが連動して読み手を導いていくこと。読み手の立場からすると、お馴染みのキャラたちに、これまでとは違う視点で付き合うことになる。
主人公折木以外の3人のうち、キャラの濃い千反田の語りに注目したのだけど、案外と普通で残念。こちらの勝手な期待だけど。

ここでもライトなミステリが繰り広げられている。今回もミステリとしては微妙。なにより、犯人の動機と犯行手段の整合性が怪しい。謎解きの楽しみに動機が不可欠というわけではないけれど、最後に明かされる動機に説得力がないと不完全燃焼。
それと、タイミングよく解決の糸口を提供する折木・姉の使い方はご都合主義でひっかかる。前作でも、違う意味でご都合主義を覚えた。

一方、青春小説として読むと、これはなかなかの好印象。「才能」を扱っているのだけど、持たざる者サイドの里志と摩耶花の語りが小説の奥行きを生み出している。実は、事件の動機も同じような感情に根ざしていて、からめ方は上手いと感じた。

特に摩耶花の持つある種の息苦しさ、自分に多くを望んであがく息苦しさはリアルに感じられた。キャラの見せ方の上手な作家と思うけれど、そういうのとは別の意味で、ここでの摩耶花に存在感を覚えた。



  1. 2012-09-25 10:59:46
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インシテミル (米澤穂信)

事前知識なしで読んでみたら、バリバリの本格ミステリだった。古典部シリーズのよう軽い読み口を期待していたので、当てが外れたわけだけど、いいペースで読み切った。

この作家さんのイメージは、スムーズで読みやすい文章と人懐っこい語り口に、ゆるくて我田引水なプロットと展開といったところ。読みやすいのだけど、「それはちょっと・・・」というひっかかりが残りがち。読んだ作品数は少ないけれど。
そのあたりを覚悟しながら読み進めたのだけれど、本格ミステリだからなのかかっちり作り込まれていて、ほとんどひっかからなかった。ほとんど・・・ということは、気になるポイントがあるにはあったのだけど、全体としては入念さへの感心が大きく上回る。なので、気になるポイントは書かないでおく。

中盤を過ぎたあたりからミステリー的にマニアックな空気がプンプンしはじめる。ミステリ展開的には、メモをとりながら読み進めないと出来事を把握できないくらいに錯綜してくる。もちろんメモなどはとらないで読み進めたから、ミステリ的な破綻があっても気がついていないはず。結局犯人はだれ?という一心で読んでたので。
そんな浅い読み方であっても、最後の最後に「ほほぅ!」と思えるくらいには楽しませてくれた。

本格ミステリとなると、仕掛けに意外性があっても筋道に縛られて進行される。また、読者に提供される視座もミステリとしての都合に制限されてしまう。そのぶん、古典部シリーズのような語り口の心地よさは後退していると感じた。そっち方面を期待して手に取るといくらか肩透かしかも。もちろん、なるべくしてそうなっているだけで、この作品の欠点ではないのだけど。

楽しませてもらったのだけど、最近、本格ミステリを読むのが面倒になってきた・・・



  1. 2012-09-07 01:10:19
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春期限定いちごタルト事件 (米沢穂信)

小市民シリーズの第一作に当たるらしい。

既アップの古典部シリーズの2作品『氷菓』『愚者のエンドロール』と同じく、ミステリー風青春小説というノリ。

短編集的というか、時系列で複数のエピソードが連なっている。その一つ一つは、良く言えばさりげない、悪く言えば起伏の弱い展開。
古典部シリーズの二作では、ストーリーテラーとして弱さを感じたのたけど、本書『春期限定いちごタルト事件』は個々のエピソードが軽い分、弱さをさして感じなかった。満足感が大きい、ということでもないけれど。



まあでも、弱みが気にならないということは、そのぶん作者の魅力に浸りやすいということになる。
能天気に明るい作風ではなくて、暗かったり重かったりの要素も入っているけれど、全体の味付けは軽くて口当たりがいい。嫌な感じの刺激が無くて、楽に読める。こういう文体は他にもあるけれど、中でも米澤穂信の語り口はしっくりとくる。

この年齢になると、リアルな高校生活や中学生活に感情移入するのは難しい。あるいは、やろうと思えばできるけれど、やけに面倒くさく感じる。あんまりリアルでない方がとっつきやすい。でも、リアリティが乏しすぎると嘘臭くなる。作り物であることを承知の上で、束の間登場人物たちに入り込むことを楽しみたい。米澤穂信の語り口とか、人物や事物との距離のとり方は好ましく感じられる。


  1. 2007-12-31 18:52:30
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愚者のエンドロール (米澤穂信)

先日記事をアップした『氷菓』に続くシリーズ第2弾。

微妙な読後感。
この作家の魅力が、キャラの立たせ方と明快で親しみやすい語り口にあると考えれば、期待は裏切られない。
ただ、『愚者のエンドロール』は前作『氷菓』に比べて推理小説としての色が強く出されているけれど、(ミステリーとしての)論理面での弱さゆえに、かえって消化不良に感じられる。

特に引っかかったのは、一連の出来事の仕掛け人「女帝」の行動に説得力が無いこと。「女帝」は映画のクォリティ=論理的な完成度と考えて行動しているけれど、その発想は変な気がする。そして、折木の推理によって修正されたオチが映画的におもしろいのか微妙。

また、千反田が最終段階で持ち出した「本郷はなぜ・・・」という着眼は、ふつう最初の段階で考えることではないだろうか。少なくともわたしはそうだったので、どんでん返しのネタとして使われていることに苦笑させられた。

まだシリーズ2作目だからキャラの鮮度は色あせておらず、相変わらず楽しい。ウイスキーボンボンで酔っ払う千反田とか。ただし、酔った彼女をストーリー展開にからめてくるのかと思いきや、キャラ萌え描写に終始していた。もうちょっとヒネって欲しいかも。

単調に陥るのを救っているのが終盤のどんでん返しで、ミステリー的な興奮は乏しいものの、主人公を含めた4人組のやりとりは微笑ましくも楽しい。こういうところに、作家のセンスの良さを感じる。

割り切って読んでいるから、この作家の持ち味を楽しんだけれど、評を書くとなれば辛口にならざるを得ない作品。



  1. 2007-09-06 22:58:42
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