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別掲の『スカイ・クロラ』の続編です。
『スカイ・クロラ』の味わいが引き継がれていますし、「状況が曖昧に提示される」→「エピソードが積み重なるにつれて鮮明になる」というパターンも踏襲されています。
そもそも前作『スカイ・クロラ』とのつながりが曖昧な状態で始まり、エピソードが積み重なるにつれていろいろな要素がピタッと噛み合っていきます。難解なパズルではないので大抵の人は途中で答えに行き着くと思いますが、それでも作り込みが丁寧なので楽しめました。ジグソーパズルに喩えるならば、ピースを嵌め込んでいくプロセスよりも、出来上がりの絵柄の美しさを楽しむ感じでしょうか。
良いところも悪いところも『スカイ・クロラ』と共通します。言い換えれば『ナ・バ・テア』によって新たに加わった魅力はほとんど見当たりませんし、それだけに『スカイ・クロラ』と出会ったときのような新鮮さはありません。
というわけで、『スカイ・クロラ』に共鳴できて、もっとその世界にひたりたいと感じた人向けの作品です。
- 2006-05-03 00:52:11
- 森博嗣
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ストーリーには触れていませんがネタバレに近いです。
「面白かったか?」と問われれば「ぼちぼち」というところでしょうか。
しかし、文章の浸透力の高さは意外でした。多作な森氏のごく一部しか読んでいないわけで(S&Mシリーズ全部とVシリーズを一冊)、勝手に誤ったイメージを抱いていただけかもしれませんが・・・
S&Mシリーズあたりでは人生観めいたシリアスさとラブコメのチャラチャラした要素と本格ミステリーらしい乾いた論理が雑然と混在していてまとまりがありませんでしたが、この作品では主人公の語り、キャラの設定、会話、ストーリー展開などがキレイに噛み合って、作品世界が一つのトーンで統一されています。
戦闘機乗りたちの物語が淡々と展開されます。設定とか背景とか属性が曖昧にされたままで、主人公による一人称語りにより、どこか浮世離れした戦闘機乗りたちの日常とつかみ所のない人生観やら死生観やらが語り進められます。虚無的というか諦観めいたというか独特の雰囲気があって、その雰囲気が隅々まで行き渡っています。
ストーリー自体にはあんまり意味が無くて、エピソードが積み重なるにつれて曖昧だった像がだんだん焦点を結んでくるという構成です。
それだけに全体的にまったりとしていて、メカとか空中戦の描写ややたらと改行するスタイルは好き嫌いが分かれそう。
「どう締めくくるのかな?」と思っていたら、結局ミステリーとSFを足して2で割ったようなオチが用意されていました。オチに至るまでの雰囲気が良かっただけにベタな感じがしました。
それはそれとして、オチを知った上で再読すると、森氏の周到な演出が理解できて二度楽しめます。というか、この本を手に取るなら二回は読んだ方がいいと思います。再読するとつかみ所無く感じられた部分の説明がつきます。設定とか背景とか属性のみならず、人生観とか死生観にまで及んでいるところがミソ。
まったりした展開は評価が分かれそうですが、この作家の美学みたいなものはよくでていると感じました。

- 2006-05-03 00:51:49
- 森博嗣
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全文ネタバレです。
シリーズ最終作です。
人気シリーズの最後を飾る力作ですが、構想に筆力か追いつかない感じで、パッとしません。
この作品のクライマックスはトリックの解明ではなく、真賀田四季との対決です。どういうわけか、展開される事件と真賀田四季との対決が密接に関連付けられていません。本作の事件のクライマックスとシリーズ全体のクライマックスをシンクロさせて最高潮に盛り上げて欲しいところですが、効果が拡散して盛り上がりが中途半端。事件の方が宙に浮いている印象です。事件自体も影が薄いし。
そもそも犀川と真賀田四季の対決もクライマックスになり切れていないと感じました。理屈だけでなく感情の面でも納得させて欲しい。前述の事件とのリンクの弱さも理由の1つだけど、ああいう〆かたをするなら、シリーズ全体としての伏線を周到かつ効果的に張り巡らせておかないと。
真賀田四季との対決の場面での犀川の心理描写は作者の思い入れを感じさせますが、とってつけたような感じがしました。過去のシリーズ作品の中でところどころ犀川の考え方をにじませてはいましたが、こういうエンディングへの伏線と呼べる水準には到底達していなかったと思います。
萌絵の許婚が登場しますがこの設定が活きていません。彼は真賀田四季登場までの場つなぎで登場したのでしょうか・・・
学生たちによる軽妙な会話があちこちに見られます。学生らしさの演出というには冗漫に感じられました。前作『数奇にして模型』にもその萌芽は見られましたが、本作ではいっそう顕著。おそらく作者は自分の作品の魅力と看做しているのでしょうが、退屈でした。
思いつくままにあげてみましたが、要するに突っ込みどころ満載。シリーズ随一の力作ですが、あまり楽しめませんでした。

- 2006-05-03 00:51:05
- 森博嗣
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シリーズ第9弾です。
このタイトルもあんまりセンスを感じないです。新鮮な感じはOKなんですが・・・
歳の差カップルのラブコメを楽しんでいるわたしですが、さすがにここまでぐずぐず引っ張られると、「いつまでやってんだ」って気持ちになってきます。
萌絵のキャラに関して賛否両論あるようで、確かに実物が身近に存在して、なおかつ自分以外の男に入れあげてたらウザイかもしれないけど、小説内のキャラとしてはアリだと思ってます。というか、昔からよくあるキャラだと思うし。
むしろ鬱陶しいのは犀川の方です。本作では、友人たちが犀川のメンタリティについていろいろフォローしていますが、わたしのようなひねくれ者は現実でも小説でも言葉ではなく行動で人間を判断します。いい大人が無責任にぐずぐず態度を保留しているようにしか見えません。犀川が萌絵と同じ二十歳前後というのならともかく、いいおっさんな訳で、不甲斐なく感じます。よって、この作品あたりでの犀川のイメージは、頭はいいけど、人間的には自己愛と幼児性の人。シリーズ序盤は深みのあるキャラに思えたのですが・・・
もっとも、こんな風にアレコレ考えてしまう時点で作者の術中に落ちているわけですね(笑)
題材自体がオタクっぽいこともあって、濃いキャラが登場してます。本作ではその存在をそれなりに楽しめましたが、これ以降の作品で顕著になってくる冗漫なキャラ遊びの萌芽かもしれません。
トリックどうこうと言うよりも、首なし死体とか花火(?)のシーンとか行き詰るラストとか、派手な場面が適当に配置されていて楽しめました。エンターテイメントとしては、シリーズの中でも好印象です。

- 2006-05-03 00:50:38
- 森博嗣
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シリーズ第5弾です。
このタイトルは、そんなにベタではないけど、単なるダジャレ。もっとセンスのあるタイトルにならなかったのでしょうか・・・
『すべてがFになる』のところで書きましたが、このシリーズは、わたしの中ではユニークな歳の差カップルのラブコメ。そういう観点からは、シリーズ最大の盛り上がりを見せてくれます。2人の距離がさらに縮まったところで終わりかと思ったら、何だかんだで事実上の婚約まで行ってしまいました。次作以降は夫婦探偵シリーズか?と思わせる急展開。もっとも、次作以降のグズグズした展開で肩透かしでしたけど・・・
もちろんミステリーの謎解きも並行して進められます。これがメインですから(笑)。
今回は犯人側に〇〇〇博士のような並外れた頭脳の持ち主が登場しないので、対決の構図が浮かび上がらず地味でまったりとした展開です。ラブコメ部分に押され気味。しかし、そのぶん堅実に展開されて、種明かしの場面まで予断を許されませんでした。古典的な小道具や密室の謎など、使い古されたネタが効果的でした。というか、この作家が一味違うトリックを使うことは前作までで分かっているだけに、使い古されたネタだからこそどう料理してくれるのか興味を掻き立てられました。ただし、密室の謎は、理屈は理解できるしアイディアとしては面白いけど、ちょっと無理があると思いました。

- 2006-05-03 00:50:16
- 森博嗣
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シリーズ第3弾です。
このシリーズは、隠れ館シリーズと呼びたくなるくらい特殊な建築物・施設がトリックに使われます。この作品はその例の1つです。
主役の2人は、『すべてがFになる』でほぼ固まったキャラに即して描かれていますが、超高性能な頭脳の持ち主としてのエキセントリックな雰囲気は和らいでいます。
タイトルにもなっている数学者は特異なキャラですが『すべてがFになる』の真賀田博士より毒気は薄いし、事件や関係者の設定はオーソドックスでありがち。事件の描かれ方はシリアスなドラマというより知恵比べの推理ゲームという軽いタッチ。
全体的に『すべてがFになる』より地味で穏健な印象ですが、主要人物のキャラの魅力を主体とした軽めのエンターテイメントというこのシリーズの性格が鮮明になっていて、素直に楽しめました。この作家の場合、なまじ突っ込んだ人間描写をするより(かえって薄っぺらく感じるので)、このくらい突き放してくれた方が読みやすいです。
シリーズ5作目の『封印再度』まではラブコメとして盛り上げやすい段階にあるので、主役の2人のチャラチャラとしたやり取りはかなり楽しめました。調子に乗り気味なところも含めて、作者が楽しみながら書いていることが伝わってくるようです。
(以下ネタバレ)
以下は、書評というより雑感です。
『すべてがFになる』の真賀田博士といい、この作品の天王寺博士といい、並外れた頭脳の持ち主がご大層な仕掛けを用いて(殺人事件といいつつも)ちまちました事件を起こすというパターンです。どうせならそういう人物でなければ企まないような奇想天外な事件を仕立てて欲しかったです。そうすれば小説の世界が大きく広がったと思います。並外れた頭脳を持つ犯罪者と犀川との知恵比べが主眼だから、大事件である必要は無いということでしょう。
そういう意味では、伝統的な推理ゲームの枠内に留まっている印象です。理系ミステリーという目新しいキャッチフレーズはありますが(もっとも『笑わない数学者』の事件はとりたてて理系的ということはありません)、小説作法としてはむしろ保守的だと思います。
作家にはそれぞれスタイルがあるので、外野がとやかく言うことではありませんが・・・

- 2006-05-03 00:49:25
- 森博嗣
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人気シリーズの第一作であり、森氏の出世作でもあります。
このシリーズは数年前に全巻読みました。記憶が薄くなっているのでここにアップするに当たって再読しました。この手の娯楽小説は、余程のことが無い限り再読すると色褪せて感じられます。このシリーズも例に漏れません。ちょっと突き放したようなコメントになりそうですが、シリーズ物を全巻読むことは少ないので、初読のときに面白く感じたことは間違いありません。
一言で言って、売れることを狙って吟味された戦略的作品です。初読のときはそんなことは考えませんでしたが、再読して実感しました。
まず、主要キャラの打ち出しが明解で効果的。ミステリーの探偵役は、常人以上の頭脳と観察力の持ち主であることが多いのですが、『すべてがFになる』では天才的頭脳の持ち主としてぶちかましてきます。その一方で、主役の2人のやり取りは軽妙であるばかりか、ラブコメの要素があります。このメリハリの利いた演出は効果的。あっというまに主役の2人が身近になりました。後述の通り人物描写自体が優れているとは思いませんが、キャラ作りは上手いと感じます。
森氏のキャッチフレーズは理系ミステリーでした。シリーズ通しての印象としては、トリックや会話の内容が理系寄りではあるものの、必ずしも専門性が高い訳ではありません。専門的でありすぎると、読者の間口が狭まってしまいます。理系っぽい雰囲気を持ちながら、文系の読者でも楽しめるように作るのがミソ。森氏はこのあたりをうまくやっています。『すべてがFになる』はシリーズの中では相対的に専門性が高くなっていますが、第一作目としてのイメージ作りは上々。
真賀田博士と主役の2人との会話を通して、作品独自の世界観とか主役のキャラの深みを感じさせる演出も巧みです。中味を伴っているかどうかはその後の作品で明らかになっていきますが、シリーズ一作目の仕込みとしては効果的。
いい意味でよく計算された作品と感じました。そして、計算通りの効果を発揮するのは簡単ではないと思いますが、この作品は成功させています。
事件とかトリックの印象は薄いです。読了後頭に残ったのは、ウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体のイメージくらい。
森氏は、キャラ作りは達者だけど、人物造形はかなり表面的・類型的です。そのために事件が人間のドラマとして展開されていません。ふっちゃけると、初読のときは話の展開への興味で読み進めましたが、再読にはまるで耐えられませんでした。
ミステリーというよりもユニークな歳の差カップルのラブコメという路線が、第一作目にしてわたしの中で確定してしまいました。個人的にはそういう読み方の方が入り込みやすいです。

- 2006-05-03 00:48:47
- 森博嗣
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