ぶっき Library... 森絵都

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読んだものの感想を自由に。



いつかパラソルの下で (森絵都)

作者の森絵都は、ヒロインに問題を背負わせて、ありがちなトラウマ的原因(子供時代の家庭環境)をほのめかし、彼女のルーツ(父親)を探す冒険に読者を誘うのだけど、ここからが本番!というところであっさりとすかしてしまう。自分を哀れんで過去や他者に原因を求めても、何も変わらないよ、という意味のどんでん返しで、そこには現実的かつ肯定的なメッセージが込められていて、個人的にはとても共感できるし、コミカルなすかし方は上手いと思う。

また、どのキャラも立っていて、なおかつ心理描写が細やかで、自然と引き込まれてしまうし、独特の居心地の良さがある。

ひっかかるとすればヒロインの設定。彼女はいろいろと問題を抱えているけれど、基本的にはお気楽キャラで、ある部分では問題に対処できているし、なにより恋人に恵まれている。たぶん現実離れさせないために、森絵都は意図的に深刻さの程度を軽くしているようだけど、加減がつかみにくくて、彼女が背負っているものの重さに上手く同調できなかった。
たとえば序盤のセックス描写は、ヒロインの性的な悩みを浮き彫りにすることが狙い、というのは頭で理解できるけど、コンプレックスを克服するためのヒロインのテクニック(?)を読むうちに「この作家もこういう描写をやるのか~」みたいな感慨が先に立って、感情移入の妨げになった。
絲山秋子のヒロインみたいな路線を狙っているとしたら、もうちょっと危なっかしさとか乾いた感じが欲しいかも。

ベタだけど、ヒロインの妹(堅物キャラ)を主人公にした方が、キャラがくっきりするし、笑えるし、メッセージが際立ったかも。もっとも、ベタ過ぎるから、敢えて避けたのかも?
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  1. 2006-08-27 01:54:13
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DIVE!! (森絵都)

4巻物ですが、一続きの物語なのでまとめます。

飛び込み競技に懸ける中高生たちを描いたスポ根小説で、爽やかな感動が味わえます。たぶん10代を読者ターゲットにした作品だろうからかストーリー展開はコミックスor青春ドラマ風なんですが、チャチな感じがなくて、大人が読んでも十分に楽しめるはず。

スポ根といっても暑苦しさはありません。水の競技だから汗臭くないし、採点競技ということもあってか競技シーンより登場人物たちの人物とか心理の描写にウェイトが置かれています。とにかく登場人物たちの描き方がとっても上手くて、部分的には心憎さすら感じました。読み始めたら一気に持っていかれます。

成り行きで巻を重ねた作品ではないようで、4巻通して1つの物語として綺麗にまとまっているし、各巻の質が揃っています。敢えて言えば最後を飾る第4巻はもう少し緊迫感とかテンポの良さが欲しかったけれど、採点型の競技であることを考えると、むしろそのハンディ(?)を乗越えてここまで面白く読ませる演出力を称えるべきなんでしょう。でも、もうちょっと手に汗握る感じが欲しかったかな・・・

今から読むのであれば4冊手元に揃えて一気読みすることをお勧めします。最低でも第3巻と第4巻は立て続けに読めるようにしておかないと、ストレスがたまります。
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  1. 2006-05-03 00:48:12
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永遠の出口 (森絵都)

主人公=語り手の小学生~高校生までが回想のノリで描かれています。9つの章+エピローグという構成。

突っ込みたいポイントはいくつかありますが、それをひっくるめてもなかなか好印象な作品でした。同じ60年代生まれとしての世代的共感もあるのでしょうけど。

気になった主なポイントを先に挙げておきます。
9つの章のうち、小学生時代を描いた3つの章とそれ以降でトーンが不揃いであること。小学生の無邪気さを演出するためにわざとトーンを変えているのかもしれませんが、そうだとしても、コントラストが鮮やかというよりは不揃いという感触。
各章で描かれている9つのエピソードはそれぞれ面白かったけど、全体を通してみると、長編小説としての統一感とかまとまりが緩く感じられました。連作短編集として読んだ方が違和感は少ないかも。

にもかかわらず楽しめたのは、各章で描き出される主人公=語り手の気持ちが浸透してくるから。出来事自体は実話で無いとしても(?)、作者本人が潜り抜けてきたものが飾らない言葉で語られているような感触で、心理描写にはホンモノの手ごたえがあります。

淡々とした軽味のある語り口で、時にユーモアが交えられます。女流らしいソフトなタッチで読みやすいです。心理描写の細やかさや場の空気の変化を捉える鋭敏さは特筆したい点です。

この作品だけでは物語をでっち上げる力量は測りかねますが、気持ち良く読み通せました。
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  1. 2006-05-03 00:47:45
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