ぶっき Library... 宮部みゆき

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クロスファイア (宮部みゆき)

超能力を持ったヒロインのお話なんだけど、戦闘シーンこそそこそこ迫力あったけれど、トータルとしてはこういう分野への作者の適性を疑いたくなる出来栄え。
興味を持った題材にドンドン踏み込めて、スタイルに無頓着に書き進めてしまえるのはこの人の強みなのかもしれない。でも、社会派ミステリーの語り口を不用意に持ち込んで欲しくなかった。

犯罪者のステロタイプな心理分析とか人物紹介とかがダラダラ続くかと思えば、特定の出来事が無造作になぞられる。おかげでスピード感は皆無だし緊迫感は寸断。この作家の社会派ミステリーではお馴染みの語り口だけど、『クロスファイア』みたいな作品では鬱陶しいだけ。個人的には社会派ミステリーにおいてもウザク感じてしまうのだけれど・・・

しかもやるべきことが出来てない。
この作品でやらなきゃならないのは次の4点(たぶん)。
①超能力を活かした見せ場を作る。
②超能力者に生まれたヒロインの孤独を読者に実感させる。
③ヒロイン、自警団的組織、警察の三つ巴戦で盛り上げる。
④正義とは何か、という問題意識を残す。
これはわたしが勝手に決めたことではなくて、どれも作者自身が作中でネタフリをしていること(のはず)。でもネタフリだけでどれも回収しきれていない。

宮部さんってこんなに腕が悪かったかしら???
crossfire.jpg
  1. 2006-05-03 00:35:00
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R.P.G. (宮部みゆき)

宮部作品の中でのこの作品の位置づけはよく分かりませんが、『理由』『模倣犯』に比べてはるかに楽しめる作品でした。野球の投手じゃないけれど、力んだ全力投球よりも、力を抜き気味にしてスムーズに投げた方が球に威力が出るみたい。この作家の代表作と言えるような作品ではありませんが、エンターテイメントとしての洗練度では『理由』『模倣犯』より上と感じました。

限定された空間の中での数人の駆け引きが集中的に描かれていきます。叙述トリックになっていて、古典的な手法だしことさらに鮮やかということはありませんが、細やかな描写がすごく効果的。その場に立ち会っているかのような臨場感があって、一気に読めてしまいます。地力を感じます。

不満が無いわけではありません。
主役の刑事は別の刑事の代役として取調べに当たっていますが、この代役という設定は心理ドラマの盛り上げという点ではマイナスだと思います。メリットは感じられませんでした。
それと、大詰めのところで被疑者の心理が羽虫(蝶?)に見立てて描写されるくだりがありますが、主人公であるオヤジ刑事の視点からの描写としては乙女チックに過ぎます(乙女チックなオヤジなのだ、と言われたらそれまでですが・・・)。宮部氏が描く男性キャラに違和感を覚えることが多いのですが、この場面でも甘さを感じました。

心理ドラマなので心理描写は念入りですが、特に感心したのは・・・(以下ネタバレ)
主人公の刑事が少女を追い詰めて自白を引き出す場面で、ついに心をつかんだと思った瞬間にすれ違っていく描写。社会派ミステリーの巨匠(?)らしくリアリティを追求する姿勢と、心の機微を捉える細やかさが見事に噛み合っています。おかげで後味は若干よろしくありませんが、「うまいな~」と唸ってしまいました。
こういうお手並みを見せられると、他で気に入らない点があったとしても敬服してしまいます。
rpg.jpg
  1. 2006-05-03 00:34:18
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理由 (宮部みゆき)

取材記録の形式で殺人事件の真相が浮き彫りにされます。社会派ミステリーです。

この作家は、社会派小説の人物造形において、事件に関連するほぼすべての登場人物たちの社会的背景(生育歴、家庭環境、交友関係、社会環境・・・)を徹底的に詳述しないと満足できないようです。しかも、ただ丹念に掘り下げるだけでなく、複数の視点(たとえば被害者の立場と加害者の立場)から描き分けています。そうすることで、犯罪を生み出した社会的背景の実相を浮き彫りにしていきます。
登場人物の社会的背景の描写は相当なボリュームでストーリーの流れがかすんでしまうほどですが、無節操にダラダラと描写されているわけではなくて、この作品では現代の家族のあり方という視点が全体を貫いています。読み進むうちに自然と“家族”について考えさせるように演出されていて、作品のコンセプトとしては理解できます。

しかし、こうした社会的背景の描写がストーリー展開上伏線として機能することは無くて、単にストーリーの流れへの肉付けとして累々と積み上げられていきます。一途というか愚直と言いたくなるくらい粘り強く積み上げられていきます。伏線として機能しない背景描写は、つまるところ補足的な説明に過ぎません。補足説明が肥大化してしまった小説には、テンポもスピード感も緩急の変化も期待できません。この小説はその典型と感じました。読んでいる最中に何度も中断したし、中ほどまで達した頃には本格的にウンザリしていました。
なるべくしてこうなったと考えますが、宮部氏はそれを分かった上でこのアプローチを採ったのでしょうか?

作品全体から受ける印象は、下手というのではありませんが、泥臭いと言うか洗練されていません。でも、ベストセラー作家だし直木賞受賞作でもあるので、わたしの感じ方は一般的ではないのかな?

別掲の『火車』『模倣犯』でもアプローチに共通するものを感じましたが、『火車』はせいぜい人物造形が丁寧と感じられる程度で許容範囲内でした。『理由』は上述の通りですが、『模倣犯』ではさらに宮部流が推し進められていると感じました。
いろいろなタイプの作品を書いている作家なので、これがすべてではないでしょうが・・・
riyu.jpg
  1. 2006-05-03 00:33:46
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火車 (宮部みゆき)

一時期この作家の長編をまとめて読んでいましたが、しばらく遠ざかっていました。読みやすくて面白いのですが、宮部氏が描く男性キャラに違和感があったり(妙におめでたかったりお人よしだったり・・・)、人物描写に散見される価値観の押し付けが鼻についたり、宮部氏が描くところの「優しさ」がしばしば「ぬるさ」「緩さ」と感じられたりと、次第に距離を置くようになっていました。
過去に読んだ作品の中ではもっとも感銘深かった『火車』も例外ではありません。しかし、この作品に関しては感銘の深さと強さがそれらを上回ります。

ローン地獄を描いた社会派ミステリーです。犯罪者が同時にクレジット/ローン社会の犠牲者でもあるという、ありがちだけど難しい「罪を憎んで人を憎まず」パターンです。人物を描いて、憎しみとも哀れみともつかない切なくも割り切れない心持に読者を誘うのは至難の業。それを模範的とも言える見事さで成し遂げているのが『火車』だと思います。
白眉と感じたのが・・・(以下ネタバレ)
犯人の女性が官報から血眼になって父親の死亡記事を探す場面。ギリギリまで追い詰められた人間の浅ましさと悲劇が最高のテンションで表現されています。ここだけでわたしの中に渦巻いていた諸々の不満が吹き飛んでしまいました。わたしはこの場面を読めただけでも満足です(笑)。
犯人の女性の足跡を追う刑事が、善悪の価値判断を超えたところで彼女に感情移入していくプロセスの描写も上手いと感じました。ラストシーンでの「なんと小さく、華奢なのだろう」「君にあったら、君の話を聞いてみたいと思っていたのだった」といった言葉たちが深い余韻を湛えていました。

わたしにとって欠点と感じられる要素が含まれているものの、宮部氏の魅力の輝きに心惹かれ、心打たれる作品です。
kasha.jpg
  1. 2006-05-03 00:32:51
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模倣犯 (宮部みゆき)

とても分厚い大作ですが、全体的な印象は“過ぎたるは及ばざるが如し”。社会派ミステリー作家として、ひとつの犯罪を足がかりにして、社会のありようを細大漏らさず描き切ろう、という気合とかこだわりには敬意を表しますし、それをやり遂げた筆力は凄まじいと思います。
しかし、物語の本筋から隔たっている人物や些細に出来事について延々と描写されても、話のテンポは停滞するし、説明的で散漫な印象になります。
焦点を当てる人物が変わるたびに、同じ出来事が反復描写されることにも閉口しました。視点は変わりますが、新鮮味無く、概ね反復されるだけ。読むことの徒労感はかなりのもの。

また、この作家の人物の描き方には良く言えば優しさ悪く言えば甘さがあって、これが宮部ワールドと言われたらそれまでですが、入念な描写のわりにインパクトとか手ごたえは薄いです。
それに、いくら社会派ミステリー作家とはいえ、〇〇な環境にあれば〇〇な人間になる、みたいな単純な人間観は浅薄に感じられます。

膨大な分量のわりに物語はシンプルだし、さしてドラマティックでもありません。登場人物の掘り下げに力点が置かれているせいか、刺激的な展開よりも現実味や堅実さが重視されているようです。しかし、要所要所では巧みな演出。
mohohan.jpg
  1. 2006-05-03 00:32:13
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