ぶっき Library... 三崎亜記

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読んだものの感想を自由に。



バスジャック (三崎亜記)

7編収録の短篇集です。

そこそこ楽しませてもらいましたが、こうして感想を文章にすると、微妙なニュアンスになりそう。

話題になった前作『となり町戦争』と同じく、現実社会から少しずつずれた感じの架空の世界を舞台とした、シュール(非日常的・超現実的)でリリカル(抒情的)な物語たち。

キャッチフレーズ(?)はシュール&リリカルですが、メインはシュール。7編ともシュールな設定で、うち4編(『しあわせな光』『二人の記憶』『雨降る夜に』『送りの夏』)は、程度の差はありますが、作品の味わいのかなりの部分を抒情味が負っています。

シュールな設定・展開については、到底精緻とは言えなくて、よく言えばライト感覚、悪く言えばゆるい。
たとえばトップバッターの『二階扉をつけてください』では、「二階扉」って何?という謎で物語を引っ張っていきますが、ナビゲーター役の主人公=語り手が能動的に突き止めようとしないから謎っぽいだけで(結末以前にそれを確認する機会がいくらでもあるのに・・・)、つまり設定の甘さをご都合主義の展開が支える、という造りになっています。ちなみに前作『となり町戦争』もまったく同じパターン。

というように、作品ごとにゆるさの種類・程度は異なりますが、総じてゆるめ。気合入れて読むとすかされます。
ただし、着想はなかなか気が利いているし、語り口には臨場感があって、(仕掛けのゆるさに)拘泥しなければ、それなりには楽しめます。

リリカルな表現は魅力的。やや甘口な文章ですが、端正な言い回しのせいか、節度があります。
もっとも、現時点で文体を武器にできるレベルにあるとは思えなくて、前述の2つの掌編『しあわせな光』『雨降る夜に』は実質的にリリカルな表現力の一発勝負ですが、もうちょっと濃やかで彫の深い表現・演出が欲しいところ。
でも、『動物園』のラストや『送りの夏』あたりではなかなかいい味を出していて、今後に期待します。

というわけで、7編ひっくるめて、わたしが感じた長所短所を並べてみました。
あいにくと、いいところばかりが集約された作品は見当たらなくて、だから個々の作品の評価は読み手の好みに大きく左右されそう。

結局、シュールな面も、リリカルな面も、なかなか魅力的ではあるけれど、今のところそのどちらにも突き抜けたものを感じられません。ただし、前作『となり町戦争』と比較すると、自分の持ち味を自覚した作品造りに向かっているような気がします。
このままシュール路線で行くなら、次回あたり、脳みそ絞り切るくらいにして造り込まれた本格的な長編を切に期待します。

ところで、心なしか偉そうなコメントになってしまうのは、作者が新人だからか?年下だからか?そういう意識は無いつもりですが・・・
busjack.jpg
  1. 2006-07-01 23:06:26
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となり町戦争 (三崎亜記)

話題のデビュー作、ようやく読みました。
現実世界に近いと思われる異世界が舞台で、となり町との戦争がシュールに描かれています。

完成度はともかくとして、作家としての魅力を少なくとも2つは強くアピールできていると思います。プロの作家にはこれが大事だろうから、デビュー作としては成功していると思います。
2つの魅力というのは、着想の面白さと、村上春樹風というよりも春樹チルドレン風(?)な文体。そう言えば、伊坂幸太郎のデビュー作『オーデュボンの祈り』もこの組み合わせでした(さらに伏線の妙があったけど)。

戦争がテーマになっていて、それなりに掘り下げられてはいるけれど、あくまでもネタで、突き詰められているわけではなくて、マジに読み込もうとすると、穴だらけのプロットにすかされてしまいます。
戦争に奇妙な悲恋が絡められていて、春樹チルドレン風(?)の文体はなかなか口当たりがいいものの、恋愛当事者の造形が弱すぎて、感情移入は到底無理。
異世界の作り込みや人物造形をひっくるめた全般が舌足らずで、筆力不足なのか、そういう持ち味なのか...いずれにしても軽い読み口の娯楽作品。

個人的には、発想の面白さは好みだけど、こういう突き詰めないスタンスだと、結局は欲求不満になってしまいます。好ましい方向に進んでくれる可能性がゼロとは言えないので、あまり期待しないで、何作か追いかけてみようかなぁ、というところです。
tonarimatisensou.jpg
  1. 2006-05-03 00:31:34
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