ぶっき Library... 町田康

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告白 (町田康)

《渾身の作品》
これは渾身の作品なんでしょうね。主人公の熊太郎がかなりデフォルメされているとしても、ここまで踏み込んで描けるのは、町田康自身がいろんな意味で熊太郎と被っているからだろうし、落語風の笑える語り口に紛らわされているけれど、熊太郎の心を容赦なく切り刻む作者の手元から執念が臭い立ってくるようで、本質的には自虐的なまでに己を追い詰めた果ての作品と感じます。
斯く言うわたし自身、多分に熊太郎的特質を持ち合わせていて、後半はさすがにそのアホッぷりに呆れたけれど、確かに個々のエピソードはお馬鹿だけれど、そこで描き出される心理はリアルに実感できました。
この作品は、作り話として突き放して読んでも楽しめると思うけど(ただし、しつこく感じるかも)、内面的に追体験しながら読める読者と、そうでない読者では、感じることが違うような気がします。
3作目にして僭越かもしれないけれど、この本を読んで、町田康が実感できたと言うか、少なくとも、この人を表現に駆り立てるうねりを生々しく感じ取れました。

《古典的でシンプル》
俗に町田節と称されるユーモラスな語り口とシュールな味付けは独特だけど、仕立てとしては、一人の男の精神の彷徨が描かれた、古典的でシンプルな文学作品。このノリとしつこさに親和できるか否かは別にして、至って分かりやすい作品。

《テーマに関わるブレ》
分かりやすいのだけれど、テーマに関わる部分に若干のブレを感じました。熊太郎が思弁的である(=考えが言葉にならない)のは、手持ちの言葉(=明治期の河内の百姓言葉)では表現できないこみいったことを考えているから、と説明されているけれど、数々のエピソードは必ずしもこれに即していない。エピソードを追う限りでは、熊太郎がストレートに振舞えない原因は、言葉の貧弱さとは別のところにあって、それのために人との関わりに障りが生じているみたい。熊太郎が獅子頭の内側で認識した闇≒虚無は百姓言葉の貧弱さではないだろうし、最後の最後に己の心の底を探ったとき、言葉だけでなく思いすらも見つからなかったわけで...
気になったというか、紛らわしく感じたから指摘したけど(実際、某評論家は作者の誘導に沿って「近代的な自意識のドラマ」「日本近代文学史の陰画」と評している)、この作品の感銘を損なうものではない、と思います。

《葛木兄弟の謎》
たぶん読んだ人の多くが、葛木モヘア&ドール兄弟の扱いにひっかかったと思います。町田康はなぜこうしたのか?真意は分からないけど、わたしは肯定的に捉えています。というのは、この兄弟を実在させてしまうと、安直にトラウマ小説として読まれてしまう危険があるから。原因が分からないから闇≒虚無なのであって、つまり分からないことに意味がある、と読めました。

《文体》
『浄土』の記事と被るので文体には触れませんが、絶好調、と感じました。終盤にかけての語り口調の変化も見所。
kokuhaku.jpg
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  1. 2006-05-02 09:34:41
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浄土 (町田康)

『パンク侍、斬られて候』に続いて2つ目の町田作品。短編集(7編収録)。
壮大でシュールな新喜劇(?)のようだった『パンク侍、斬られて候』は面白かったけど、この作家の息遣いを生々しく感じ取れた、という意味ではこちら、というか、作品集としての出来栄え云々より、この作家は類稀な短篇~中篇の書き手かも。

たいていの作家はキャラとプロットの力で読者を牽引していく。「この二人はどうなってしまうんだろう!」「この対立の結末は如何に!?」みたいに。文章が上手いとか文体が魅力的な作家はたくさんいるけれど、キャラとプロットの魅力抜きで、文章自体の力で読者を牽引できる人は限られていて、町田康はその一人だと思う。

『浄土』には、はっきり白黒つくわけではないけれど、瞬発的な発想力+文体で読ませる作品と、キャラ+プロットの面白さで読ませる作品が混在していて、大雑把に言うと、収録順が後ろの作品ほど後者の色合いが濃くなる。どちらも個性的で面白いけど、非凡なのは前者のタイプ。瞬発力のある発想と自由闊達な語り口でぐいぐいと引っ張っていく。しかも、声に出して読んでみれば分かるけど、よく練られている。
後ろの3作品は、文章のテンションは下がるけど、そのぶん気楽に読めるし、珍妙なプロットは面白い。

収録の7編はいずれもシュール系で(程度の差はかなりあるけど)、言葉も発想もバネのように強靭。情緒とかウィットとか優しいユーモアはありません。

ちなみに、タイトル『浄土』は意味不明、でした。
jodo.jpg
  1. 2006-05-02 09:33:41
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パンク侍、斬られて候 (町田康)

これは良く出来たエンターテイメントです。漢字アレルギーでさえなければ(後述)、誰でも楽しめそう。
時代小説の体裁だけど、時代考証無視、ハチャメチャでナンセンスでちょっぴりシュール。でも訳が分からなくなるほどにはハメをはずしていないし、物語としての筋道は一貫して保たれています。万人向けのつくりになっている・・・と思います。

抜群に面白いのが人物造形と彼らの間で交わされる会話。
話し言葉に現代の口語調を交えたり、時代考証を無視して現代的な組織の構図を持ち込んだりとやり口はベタなんですけど、会話のセンスがいいし、鋭い人間観察に立脚しているせいか笑いが安っぽくありません。新鮮で楽しめましたし、実際に笑えました。
頻出する息の長い饒舌な語り口は独特ですが、関西芸人にありがちなくどくてしつこいトークを様式化して洗練させたような味わいで(意味分かりますか?)、圧迫感とか粘っこさは感じませんでした。すごく練られた文体だと思います。

読みが難解な漢字がルビ無しで頻出します。たぶん標準的な漢字力の持ち主では対処しきれないと思いますが、何か意図があるのでしょうか?意味は分かるので、辞書を参照しなくとも問題なく読み進めましたけど・・・

キャラとか演出面では思いっきりハメをはずしていますが、ストーリーの基本線はオーソドックスな展開。前半のユーモラスでのどかな雰囲気から、後半はグッと盛り上げていきます。奇想天外な発想とスケールの広がりとスピード感は素晴らしいのですが、仕掛けが若干手薄に感じられてテンションが上がり切りませんでした。
僭越ながら私見では・・・
(以下ネタバレ)
解体された新興宗教団体を復活させるくだりがあっさりしすぎで、クライマックスに向けてのタメが効いていなかったと思います。
現状では新興宗教団体の旧メンバーたちによる布教活動を主人公たちは傍観しているだけなのですが、主人公たちも布教活動に参加させれば、その場面を描くことで新たな笑いが生まれただろうし、布教の成り行き次第で読者をハラハラさせられるし、その後の爆発的な布教の広がりと信者たちの暴走ぶりに臨場感が出ただろうし、何よりも新興宗教団体の元幹部(茶山)の思想とメンタリティ(狂気?)をつぶさに浮き彫りにすることでエンディングの手ごたえが増したであろうと思います。
言い換えるなら、これらの点がすんなり流れすぎているように感じました。

また、暴走する信者たちは「馬鹿」「あほ」「きちがい」で片付けられていますが、前半部分での鋭い人間観察に比べてあまりにも安直に感じられました。暴走の規模が大きくなればなるほど、暴徒を生み出した社会的背景としての藩の悪政や、身分制度の下位にあるがゆえの鬱屈とか、そういう仕込みがあると一層破壊力が出たと思います。

今のままでも傑出した作品です。個人的にここまでやってくれたら完璧だったな、という趣旨で指摘してみました。
panksamuraikiraretesouro.jpg
  1. 2006-05-02 09:33:17
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