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FINE DAYS (本多孝好)

『FINE DAYS』『イエスタデイズ』『眠りのための暖かな場所』『シェード』の4つの短編が収録されていて、オカルト的な味付けが若干入ってます。

《傾向と対策》
別掲の『MOMENT』とこの短編集を読んで、何となくこの作家の“傾向と対策”がつかめた気がします。といっても、2002年頃までの傾向と対策ですけど。2冊だけなので当たってたらお慰み、ということで(笑)

結論から言うと、情緒とか雰囲気の演出に特筆すべき上手さと個性があるけど、人物のリアリティは甘いしプロットの精度は緩め、というところでしょうか。ということは、「癖の無いフツーのキャラ」+「シンプルなストーリー展開」の組み合わせで真価を発揮するタイプだと思います。短編に向いているかも。

- 情緒とか雰囲気の演出
情緒とか雰囲気の演出に関しては、描かれている状況とか会話・セリフそのものはベタなんだけど、濁りの無いシンプルでスリムな文体と制動の利いた語り口のおかげで、濃やかで芳醇な上に透明感とか軽やかさがあります(お酒の話みたいですが・・・)。口当たりが良くて洗練されたいい雰囲気。これはなかなか強力で、病み付きになっちゃう人がいても不思議ではありません。

- 人物
情緒とか雰囲気に溶け込ませるように人物を描くので、匿名性の高いキャラは無問題ですが、アクセントになるような特徴的なキャラの造形は甘さに流れがち。この短編集の中だと、『FINE DAYS』『眠りのための暖かな場所』に出てくる超常的な能力の持ち主の悲哀とか不気味さや同じく『眠りのための暖かな場所』の語り手の心の闇の部分が、作品にたちこめる透明な空気感の中に拡散しちゃってます。
ただし短編ということもあって大きな瑕にはなっていません。というか、個性で片付けてしまえる範囲なのかも。揚げ足取るつもりは無いんですけどね・・・

それと、『眠りのための暖かな場所』は語り手=主人公が女性になっていますけど、生硬い印象です。設定上の性別というだけで、女性のメンタリティの演出がダメダメに感じられました。男性作家が描く女性の悪例みたいな感じで。もっともこれを指摘しているわたしも男なので、女性の読者にご意見を伺いたいところです。

- プロット
プロットに関してはオリジナリティとかこだわりはほとんど感じられません。この作家の主眼は情緒とか雰囲気の演出にあって、プロットはそのための入れ物に過ぎないのではないか、と勘ぐりたくなるほど。既製品(ありがちな筋立て)をコーディネイトして無難に着こなしているだけという感じ。『FINE DAYS』『イエスタデイズ』『眠りのための暖かな場所』あたりはもっとプロットで読ませる的に作り込めるはずだけど、本多氏はそういうことに関心が乏しそう。
まあ、短編だからサラッとまとめたのかもしれませんけど。

《個別の感想》
以上の観点から個別に見ていくと・・・

【FINE DAYS】
後半のあまりにもお仕着せな展開が興醒めだったけど、わたしの見方は多少辛口かもしれなくて、そこが気にならなければ佳作だと思います。

【イエスタデイズ】
文句無くお勧め。この作家の魅力が端的に表れています。ストーリーは月並みですけど。

【眠りのための暖かな場所】
前述のように主人公である女性の語りがひっかかったし、こういう筋立てだとプロットの緩さが欠点になっていると感じました。締めるべきところは締めないと・・・

【シェード】
「癖の無いフツーのキャラ」+「シンプルなストーリー展開」の必勝パターンだけど、フツーとかシンプルを通り越して淡白すぎるかも。でもこの作家の持ち味はよく出ています。
finedays.jpg
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  1. 2006-05-02 01:04:24
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Moment (本多孝好)

病院を舞台にした人間ドラマ。一応長編小説ということになっていますが、ほぼ連作短編集です。

強い個性は感じられないけど、今風の軽やかで斜めに構えたような気分が特徴か。センスは感じるものの、大人しくてこじんまりとしています。

文章は読みやすくてリズムが快適です。文体はスリムかつ簡潔で、場の雰囲気がしっかり演出されています。かなり上手いと思います。能書や解説的な記述がほとんど無くて、状況の描写や会話で進行するので、とにかくスムーズに読めます。

気になったのは、雰囲気優先になっていて、全体に段取りっぽくて、特に主人公はキャラと言動が調和してないと感じられました。自分自身と折り合えないというキャラらしいのですが、ただの設定に終わっているような気がします。
第1話『FACE』はご都合主義的展開なので安っぽく感じました。最終話『MOMENT』では、第1話からのツケ(主要キャラたちの弱さ)が一気に回ってきています。

気持ちよく読めたのは第2話『WISH』と第3話『FIREFLY』。この主人公は若い女性が相手だとキャラが変わってしまいますが(少々初々しくなる)、この方が親しみやすいかも。各話のヒロインの心情も掘り下げられていて、気持ちを入れて読むことが出来ました。
個人的には『WISH』のヒロインが主人公の軽々しい慰めをはねつける場面がすごく印象的でした。

文章の魅力とか演出の上手さは感じるけど、コンサバで大人しい印象です。「これが本多孝好だ!」みたいな強烈なものは感じなかった。
moment.jpg
  1. 2006-05-02 01:03:58
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