ぶっき Library... 保坂和志

ぶっき Library...
読んだものの感想を自由に。



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. -------- --:--:--
  2.  スポンサー広告
  3.  |
  4.   Top ▲ Home

カンバセイション・ピース (保坂和志)

この本は、言ってみればオカルト純文学です。見る角度によっては“とんでも本”ですが、作者は至ってまじめだし、オカルト臭は文学の香りにほぼ押さえ込まれています。
“知覚とか認識というような精神作用は、(一般的に考えられているような)個々人の内部での完結したあるいは閉じた働きではなくて、個人の枠を超えてシェアされる知覚とか認識があるのではないか?”みたい考え方が、純文学的な表現力と哲学的思索を交えて高尚に仕立てられています。

とてもユニークな構造になっていて、読者を誘導するのはストーリーではなくて、主人公=語り手の思索の流れ。ストーリーに軸足を置いて読んでしまうと平板な世界ですが、主人公=語り手の思索の流れに同調できればなかなかドラマティックで、わたしは軽い興奮を伴って読み終えました。

と言っても、かなり技巧的であって、かつ思索が系統だって展開されているわけではないから(論文ではなく小説だから、ある程度は仕方が無いですが)、それ相応に頭を働かせてかつ粘り強く読まないと、思索の足取りを見失ってしまいます。なかなか難解というか鬱陶しい作品だと思います。

また、思索の流れを追いかけきれたところで、オカルト的発想に対して自然体で同調できる読者はごく一握りのような気がします(たぶんもともと近い考え方・感じ方をしている読者)。科学的に検証されているわけではなくて、主人公=語り手の認識とか感覚が無条件に前提にされています。
この作家のことだから、作中で触れていないだけで、理論武装出来ていることでしょうが・・・

もっとも、この作品の真骨頂は、思索の中味ではなくて、心の働きに対する作者の目線と、その描写なのかもしれません。
日常生活の中で、ちょっとひっかかるのだけど、それに意識を向ける寸前にフッと通り過ぎてしまうような、淡い感覚。そんな感覚が、さながら時間のルールから解き放たれた異空間の中で、鮮やかに再現されていきます。何やら神経が研ぎ澄まされて、普段ならやり過ごしてしまう微妙な知覚の一つ一つを味わい尽くしているような、ちょっと不思議だけど、言いようの無い心地良さに浸ることが出来ます。
これは、小説における日常描写のひとつの究極ではないでしょうか。もちろんすべての小説を読んだわけではないけど・・・これ以上のものがそうそうあるとは思えません。
kanbasationpieace.jpg
スポンサーサイト
  1. 2006-05-02 01:02:23
  2.  保坂和志
  3.  |
  4.  Trackback(1)
  5.  Comment(2)
  6.   Top ▲ Home

季節の記憶 (保坂和志)

フリーの編集者=主人公=語り手の日常と思索が淡々と綴られています。体系だった思索ではなくて、日々の出来事に交えてエッセイ風に語られます。

この小説では何も起こらなくて、散歩してお話して食べてるだけ。ドラマとしての求心力は無い代わりに、主人公ののどかな日常とか息子や友人たちとの交流はなかなか快適です。緩やかな時間の流れが文体から伝わってきます。
でもマッタリ心地良いだけではなくて、作者の人間観察の鋭さが感じられるし、それが一切トンガラないでナチュラルに織り込まれているのは巧いと思いました。
ときめく要素は乏しいけれど、心地良く確かな手ごたえ。

でもねぇ、何も起こらないのは良いとしても、登場人物の口を借りてのエッセイ風の展開は興醒めでした。表面上の演出はナチュラル志向なのだけど、登場人物たちが意見を交し合うあたりは作り物めいていて白々しい。せめて、小説内の出来事を通して読み手が実感できるような仕掛けが欲しいところ。

主人公の思索は正体不明な自己肯定に立脚していて、つまり自分を相対化していなくて、一方的な前提に基づいていたり独善的な論理の飛躍・決めつけと感じられる部分が多々あった。わたし的には知的な面白さも説得力も感じられなかったし、ちょっとイライラしました。
せめて、小説内の出来事を通して読み手が実感できるような仕掛けがあれば、考え方に賛同できなくてもフィクションとして楽しめたと思うのですが・・・

というわけで、人間の描き方とか独特の雰囲気・気分には魅力を感じたけれど、読後感はイマイチでした。

じゃ、そういうことで。
kisetuxkioku.jpg
  1. 2006-05-02 01:01:50
  2.  保坂和志
  3.  |
  4.  Trackback(0)
  5.  Comment(0)
  6.   Top ▲ Home

最新の記事

カテゴリー NAVI

全体(HOME)

読書系
あ行
浅倉卓弥 (3)
浅田次郎 (5)
我孫子武丸 (2)
阿部和重 (7)
綾辻行人 (4)
有栖川有栖 (5)
伊坂幸太郎 (9)
いしいしんじ (3)
石田衣良 (2)
市川拓司 (4)
伊藤たかみ (2)
絲山秋子 (5)
歌野晶午 (7)
冲方丁 (2)
浦賀和宏 (3)
大江健三郎 (2)
大崎善生 (2)
小川洋子 (2)
荻原浩 (7)
奧泉光 (3)
奥田英朗 (3)
恩田陸 (2)

か行
垣根涼介 (4)
角田光代 (2)
金原ひとみ (3)
川上弘美 (2)
貴志祐介 (5)
京極夏彦 (2)
桐野夏生 (2)
栗田有起 (4)

さ行
重松清 (2)
島本理生 (3)
殊能将之 (4)
白石一文 (4)
瀬尾まいこ (3)

た行
多島斗志之 (3)
戸梶圭太 (2)

な行
中村航 (2)
二階堂黎人 (2)
西尾維新 (3)

は行
東野圭吾 (5)
樋口有介 (3)
古川日出男 (5)
保坂和志 (2)
堀江敏幸 (2)
本多孝好 (2)

ま行
舞城王太郎 (8)
松尾スズキ (2)
町田康 (3)
松岡圭祐 (3)
麻耶雄嵩 (5)
三浦しをん (2)
三崎亜記 (2)
水野良 (5)
宮部みゆき (5)
村上春樹 (15)
村上龍 (3)
森絵都 (3)
森博嗣 (7)

や行
横山秀夫 (2)
吉田修一 (3)
吉村萬壱 (3)
米澤穂信 (3)

わ行
綿矢りさ (2)


その他の作家 (44)


海外の作品 (9)



雑談系

このブログについて

最近のコメント

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

最近のトラックバック

※ ポインターをあわせるとタイトル表示

リンク



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ検索

運営者

ひねもじら 乃太朗

40代の中年男子です。コメント、トラックバック大歓迎です。でも、変なのは消しちゃいます!

メールを送る
管理者ページ





Powered By FC2ブログ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。