ぶっき Library... 樋口有介

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読んだものの感想を自由に。



誰もわたしを愛さない (樋口有介)

柚木草平シリーズ第4弾。
このシリーズは現在5作品で、このブログでは第1弾『彼女はたぶん魔法を使う』、第2弾『初恋よ、さよならのキスをしよう』が既出。順番通りだと第3弾『探偵は今夜も憂鬱』に行くはずですが、これは中篇集で、長編好きのわたしとしては、あっさりとスルーさせていただきました。
ちなみに、第1弾、第2弾とも絶版だそうで、巷では不人気シリーズのようです。世間はこの作家に冷たすぎるような・・・

奇しくも援交ネタで、女子高校生の援交がらみの事件に柚木草平が挑みます。
前回アップした『ラブ&ポップ』(村上龍)の発刊が1996年で、本書は1997年。1996年の流行語大賞に「援助交際」がトップテン入賞しており(他に「ルーズソックス」「チョベリバ、チョベリグ」「アムラー」も入賞)、そういう時代背景が多少は影響しているのか(現在ではありふれた題材ですが・・・)?

モテるけど女に弱い柚木草平が主役のライト感覚ハードボイルド、という既定の路線に乗っかっています。ここでも、念入りな女性の描写、ハードボイルド調のリズミカルな会話が目を惹きます。

ただし、全体から受ける印象は過去に読んだ2作品と比較して、濃くなっている感じ。主人公による一人称語りは渋味や鬱の度合いを増しています。また、会話のリズムは軽妙だけど気持ちしつこくて、柚木草平のハードボイルド口調は、過去の2作品では笑える滑稽さの範囲内ですが、この作品では軽く灰汁が出ています。
樋口有介らしさ、という意味では純度が上がっているのかもしれないけれど、第1弾『彼女はたぶん魔法を使う』あたりのバランスの良さ、軽やかさ、爽やかさが後退して、読者を選ぶ傾向が強まっているかも。

柚木草平が惚れる女性より、彼の相棒役の女性の方が活き活きと魅力的に描かれていて(露出が多いせいもあるけれど)、その点では感情移入しにくかったです。

一応ミステリー仕立てですが、このシリーズでは犯人探しが主眼ではありません。今回も、事件としてはしょぼいし、犯人は早い段階で想像できてしまうけれど、事件解明プロセスを骨格として、キャラクターやストーリーテリングの面白さを楽しめます。
darexwatasixaisanai.jpg
  1. 2006-06-21 16:35:45
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初恋よ、さよならのキスをしよう (樋口有介)

柚木草平シリーズの第二弾です。

別掲のシリーズ第一弾『彼女はたぶん魔法を使う』と同じパターンなので、あんまり書くことはありません(笑)。幸いにして、第一弾の魅力はそのままに引き継がれています。

主人公柚木草平が学生時代に憧れていた女性を巡る事件が描かれています。学生時代の回想に交えて、柚木草平のハードボイルド(?)な生き方に影響を与えたあるショッキングな出来事が紹介されていて、単なるコメディに終わらせていません。相変わらずバランス感覚が冴えています。

容疑者が数人の元同級生たちということで、心理ドラマっぽい仕立てのミステリーになっています。動機中心なので謎解きというよりも心理的な駆け引きの面白さです。読者に対するちょっとした引っ掛けもあったりして、それなりに読ませてくれます。

例によってラブコメはありますが、今回はメインの事件がちょっと切ない味付けだけに、それに合わせて抑え気味。

ちょっと残念だったのは、初恋の女性の実相が明らかになっていくプロセスでの盛り上がりの乏しさ。もっと回想シーンを挿むなりして彼女の美化されたイメージを印象付けて欲しかったです。そうすることによって切なさがいっそう盛り上がったはず。
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  1. 2006-05-02 00:54:41
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彼女はたぶん魔法を使う (樋口有介)

柚木草平シリーズの第一弾です。

この作品はまごうかたなき“中年男にとって都合が良すぎる願望充足ファンタジー”です。元刑事でフリーライター兼私立探偵の主人公の柚木草平がハードボイルドに事件を解決しつつ、美女に惑うというお話。

この主人公はかなり女性にもてるのですが、ぜんぜん嫌味じゃありません。というのも、これってどう見てもモテる男を描いた小説ではなくて、作者がモテたい願望を主人公に託した作品だから。しかも、アダルトにもてたいというよりも、中学生の恋愛みたく美女にチャラチャラとときめきたいみたいな、青臭くて罪の無い願望が託されています。次々と魅力的な女性が登場し、彼女たちからなつかれたりなびかれたりしてワクワク、ドキドキ、フラフラ。
主人公の38歳という年齢設定が執筆時の作者と同じくらい、というのもお恥ずかしい限り(言い過ぎ?)。

作者が妄想を楽しんでいるだけだったらどうしようもないけど、青臭いトキメキを憧憬する中年男性読者ならもれなく(?)楽しめる仕立てになっています。主人公の一人称語りになっていて、言動は気障なハードボイルド風ですが、中味は女性を好きな普通のおっさんなのでなんなく感情移入できるでしょう。

まあしかし、酸いも甘いも噛み分けてきた(?)中年男性読者、ラブコメに易々と浸れるほど無邪気ではありません。心置きなく浸るには、それなりの説得力が欲しいところ。ここからが樋口氏の腕の見せ所です。
まず、主人公の柚木草平は基本は臭いセリフを連発するおちゃらけたキャラですが、ハードボイルドの主人公らしい痩せ我慢的こだわりを垣間見せてくれます。ちょっぴり人間の幅を感じさせる演出のおかげで、案外安っぽくなっていません。
女性の描き方がなかなか丁寧です。ゲームの美少女キャラみたいな人工臭はなくて、生身の存在感を感じさせてくれます。これなら妄想を託せるかも・・・
死人が出るとは言っても事件はさして複雑ではないし、聞き込み中心の捜査はスリリングではありません。でも、捜査のプロセスはけっこうリアルに描かれていて説得力がありました。二転三転と変化もつけられていて、ミステリー的な謎解きの面白さではありませんが、最後まで読み気を逸らしません。ラブコメ抜きでもちゃんと読めます。

文章はところどころこなれていない感じがしましたが、読みやすいです。

本格的なミステリー小説ないしはハードボイルド小説として読むと多少は不満が出てきそうですが、冒頭の通り“中年男にとって都合が良すぎる願望充足ファンタジー”として読むとなかなか楽しめると思います。
というか、個人的にはバリバリのハードボイルド小説は苦手だしミステリー小説に本格的な謎解きが無くとも気にならないので、これで十分なんですけど。
kanojoxtabunmahouxtukau.jpg
  1. 2006-05-02 00:54:00
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