ぶっき Library... 東野圭吾

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天空の蜂 (東野圭吾)

デビューから10年目、1995年に発表された大作。大型社会派サスペンスとでも申しましょうか。この人の作品の中では異色と思われますが、3年がかりで書き上げられた渾身の作であり、東野作品の中で最も好きな作品の1つです。
そりゃあ、この作家らしさを追求するなら『白夜行』でしょう。『天空の蜂』は、編み目の揃ったディテールは“いかにも”な仕上げの良さだけど、東野圭吾らしさという意味での純度は落ちます。でも、個人的に、読んでいてテンションが上がるのはこっち。

かなり分厚い作品で、原子力発電所に自衛隊の大型ヘリを落下させることをネタに日本政府が脅迫される、という大掛かりな設定です。作品の中で経過する時間は10時間ほどで、これを一気に読まされてしまいます。密度の濃い緊迫感が味わえます。

この作家らしく、冒険とかスペクタクルよりは、犯人探しや駆け引きの面白さに軸足が置かれていて、その方向で読み応えがあります。理知的で抑制されたタッチゆえに、大掛かりなわりにパワー感は控え目。スペクタクルなシーンは少ないし、ド派手な演出ではありませんが、見世物っぽいケレン味が乏しいぶん(というか、それに頼っていないぶん)、リアリティは高いです。男のドラマとしての味付けもあって、ぶっちぎりのヒーローはいませんが、みんな何気にかっこよくて、手ごたえに不足はありません。

原子力発電に正面から深く切り込んでいて、社会派臭が強いです。それ抜きでも楽しめますけど。ところどころ記述が専門的に過ぎるのは欠点ですが、ウザければ流して読んでも問題ないし、とりあえず作者の勉強量に感心します。
テーマについての受け止め方は人それぞれでしょうけど、通り一遍に扱っていないのはこの人らしいです。いいとか悪いとか言う前に、まず我がこととしてちゃんと考えようぜ、というところでしょうか。


ところで、この作品に取り組んでいた時期を、東野圭吾はこんな風に振り返っています。
「焦ったときには遅かった。私の名前は読者にとっても評論家にとっても新鮮なものではなくなっていた。自分では力作を書いたつもりでも、はじめから注目されていないのだから、話題になりようがない。『天空の蜂』という作品を3年がかりで書いたときには、ペンネームを変えることさえ本気で考えた。
思えば作家になって一番辛い時期だったかもしれない。辞めたいとは思わなかったが、どうしていいかわからなかったのは事実だ。」

この作品の“らしくない”ところに迷いが表れているのかもしれないけれど、心に期するものが伝わってくる力作ではあります。
tenkuxhati.jpg
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  1. 2006-07-13 00:18:04
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白夜行 (東野圭吾)

作者と読者の駆け引きは小説の面白さの基本的な要素。そして、東野圭吾は、この駆け引きの面白さを追求し、巧みに使いこなす名手。
『白夜行』は、そんな名手東野圭吾が、腕によりをかけた逸品。

この作品は、一組の男女の生き様を描いたミステリー小説風大河ドラマで、主役二人の直接的な心理描写が無いし、二人が接触するシーンに限らず決定的な場面が意図的にスルーされているし、出来事の因果関係はしばしば明示されません。作者は、第三者的な視点からの断片的なエピソードを累々と積み重ねることで、一組の男女の生き様や心理や触れ合いを感じ取らせる、という究極的な駆け引きの妙に果敢に挑戦しています。
いつ二人が接触し、どんな真情を吐露し合うのか、という期待がページをめくらせる原動力にもなっていて、技巧的な挑戦がドライブ感につながる、という巧妙な仕掛け。

エピソードが連なる中で、表面的な出来事の奥に別のドラマが次第に浮かび上がってきますし、終盤には二人の主役の存在感が強く感じられますから、このアクロバティックな挑戦は成功と言えそう。これを実現させた構成力と安定した筆致には目を見晴ります。
それでいて、東野作品のセールスポイントである読みやすさは損なわれておらず、分厚いにもかかわらず、一気に読めます。

しかし、ミステリー小説的な駆け引きは諸刃の剣。なぜなら、真相をカモフラージュするために、容疑者である主役二人を克明に描写できなくて、読者の感情移入を妨げてしまいます。
『白夜行』では、多くのエピソードを丹念に積み重ね、時代的背景を織り込み、刑事役を使い回すことで、目覚しくリカバーされていますが、やはり限界はあって、最後まで主役二人との距離感は縮まってきません。この作品を人間ドラマとして読もうとすると、ミステリー的な駆け引きのゲーム性が、感動を薄めていると感じられます。

容疑者を直接的に描かないミステリーとして有名な宮部みゆきの『火車』では、追跡者=調査者が語り手に据えられて、語り手の思い入れを介在させることで容疑者に確固とした存在感が与えられています。
情感を排した三人称語りの『白夜行』の方がある意味果敢で潔いのですが、感情移入の足がかりの乏しさは否めません。
これだけで両作品の優劣を決めることは出来ませんが。

というわけで、作者の強烈な意欲と(作家としての)美学を感じるし、読み応えはあるし、何だったら傑作と呼んでもいいくらいですが、個人的には不完全燃焼。
byakuyako.jpg
  1. 2006-05-24 12:31:49
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手紙 (東野圭吾)

ちょっと手を抜いているような感じがあって、文学作品としてはあんまり肯定できないのだけれど、感動し考えさせられました。したたかです。

身寄りの無い兄弟の兄が強盗殺人を犯して受刑。主役は一人娑婆に残された弟。弟の生き様を通して“罪と罰”が描破されています。

どのあたりが手抜きっぽいかというと、全体の75%くらいは段取りに沿った平板な展開なんです。一人っきりになった弟はさまざまな苦難にあいますが、そのあたりのエピソードがこれに相当します。この作家なら、その気になればこの何倍も濃やかに演出できるはずなのに・・・

このまま予定調和的に終わるのかな・・・と苦々しく思いつつも、読みやすさにつられて終盤に差し掛かったところでガーンと衝撃。そうか、すべてはこれをやりたいがためのネタ振りだったのか!ネタ振りだから段取り臭くなってしまったのね・・・と納得。まあ不満は残るけれど。
社会的な視点でこの落ちをどう解釈するかは微妙だけど、世の中の実相を捉えているとは思うし、物語の落とし方として説得力を感じました。そのしたたかさに舌を巻き、ラストに胸打たれ、おまけに考えさせられてしまいました。

ツボを知りぬいた職人東野圭吾。でもひたむきさも忘れないでね!
tegami.jpg
  1. 2006-05-02 00:52:56
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片想い (東野圭吾)

肉体的ないしは精神的に男女の境界線上にいる人たちを巡るミステリーで、タッチは社会派風。

肉体的ないしは精神的に男女の境界線上にいる、という感情移入が難しい登場人物が何人も出てきて、実際感情移入し切れませんでしたが、友情、愛情、性の境界で揺れる人々の苦難、事件の謎解きなどの糸を巧みに繰りながら一気に読ませてくれます。いつもながらの丁寧な演出。

主人公の大学時代の友人の中にそっち系の関係者が複数人いる、という設定上の出来すぎた偶然には抵抗があるし、感情移入できなかったせいで感動には至らなかったけれど、難しい設定を愛憎の綾を駆使して読ませてしまう手堅い手腕に感心。
kataomoi.jpg
  1. 2006-05-02 00:52:10
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秘密 (東野圭吾)

映画は随分前に観たんですけど原作は初めてです。この作家の作品は一時期けっこう読んだんですけど。

事故で母親の魂が娘の身体に乗り移って・・・というお話なんだけど、筋書きに気づいた時点で難しさを予感し、わたしに関してはこの予感的中でした。
コメディだったら多少は笑えるかもしれないけどシリアスなドラマの設定としてはどうなのかな?難しくないですか?この設定だと夫婦愛と親子愛が競合関係に陥ってしまうわけで、作者は夫婦愛を優先していますが、当然の帰結として親子愛がないがしろになってます。こういう設定にしたらどっちかが犠牲になっていずれにしても居心地が悪くなるんですよね。いろんな要素が打ち消しあって「どう感情移入すりゃあいいの?」って状況になってるんですよ。

しかし、構造的に無理のある設定を採りながら、とにもかくにも弛緩することなく読者を牽引していく筆力はさすがと言うべきでしょうか。モヤモヤしたものを感じつつも心が逸れることはありませんでしたし、妻の思惑が明らかになるラストには心底感心しました。絶妙な最後の一ひねり!まあでも、感動というよりは感心に近いかも・・・
himitu.jpg
  1. 2006-05-02 00:51:55
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